仮想化によるバックアップ統合とBCP

2009年12月28日(月)
関 信彦

事例にみる仮想化環境上のCDP - 課題の解決

B社では、内部統制におけるデータ管理の視点に立って、ストレージやアーカイブといった手法的な面だけでなく、データやサービスの可用性や管理運用性の向上に取り組もうとしていました。特に、サーバーごとに独立したバックアップ・システムを統合することが重要度の高いテーマとなっていました。

B社は、本社と研究所(遠隔拠点)の間を専用線で結んでいて、この回線と研究所のIT環境を災害時の復旧に生かしてコストを抑制させる考えを進めていました。データをリモートへ転送する方法も重要な要素となり、ファルコンストア・ジャパンのCDPを選びました。ブロック単位での転送によって、日常の業務に使っているネットワーク・インフラの帯域を圧迫せずに遠隔地への転送が可能だったことが、CDP選択の理由の1つとなりました(図3)。

プロダクト選定のポイントとしては、データを単に遠隔地へ転送するだけではなく、災害復旧時のことを考慮し、正確な世代管理によるバックアップ/リカバリが可能であることも必要な条件となっていました。

B社では、課題が多かったテープによる災害復旧と比べ、CDPではスナップショット機能によって1時間単位で遠隔地に即時転送していることにより、ビジネスの継続性が飛躍的に向上したと評価しています。

バックアップの運用を統合したことで、従来であれば各サーバーごとに別個の作業プロセスをこなしていた情報システム部も、単一の画面でバックアップやデータ転送の状況をモニターするだけになり、運用をシンプルにできました。

仮想化技術を全システムに展開しようとしているB社は、ビジネス環境の変化に応じて迅速に対応できる柔軟性や拡張性をシステムに求めています。B社の事例を見ることで、仮想化環境におけるCDPの柔軟性や拡張性を垣間見ることができます。

まとめ - 仮想化時代の事業継続計画

本連載では、仮想化時代の事業継続というテーマで、事業継続のITにおける考え方、危機対策としてのデータ/システムの復旧について取り上げてきました。リカバリ(復旧)を主目的に考えられたデータ/システム保護と復旧技術であるCDPの有用性について、従来の保護技術との対比を行いながら探り、仮想化環境での適用方法と応用についても話を進めました。特に、米VMwareの仮想化技術との親和性やリカバリ技術であるCDPについて事例を交えて確認することで、すぐに効果が出るリカバリ基盤をイメージしていただけたと思います。

現在のようにデータが大容量化する以前では、災害復旧について問うと、「毎日バックアップをしている」、「テープにデータをバックアップしている」という答えが帰ってきて、それで安心感を持っていたものです。「バックアップ」という言葉の意味の通り、これが保険としてイメージできるので、有事の際はバックアップしたテープやメディアがあれば何とかなるだろうとイメージします。

ところが、復旧を必ず成功裏に終わらせることができるのか、どれくらいの時間を使えば復旧させることができるのか、といった問いをした場合は、不安があるのも事実です。バックアップしても、リストアして復旧させることができることを事前に確認するのは容易ではありません。

ここで、本連載で解説したように、仮想化基盤とCDPのような技術を使えば、日常のバックアップ負荷をかけることなくミラー・ディスクを作り、なおかつ有事の際には分単位の簡易な作業時間でサービスを再開できます。また、本番のサービスに影響を与えずに復旧作業のテストも実施できるようになります。

仮想化時代の事業継続とは、「ITの危機対策」、つまりは有事の際の復旧についての備えをあらかじめ確立しておくことである。このことを、あらためて提起して、本連載を締めくくりたいと思います。

ファルコンストア・ジャパン
外資サーバベンダーとソフトベンダーにてシステムアナリスト、プロダクトマネージャ、プロダクトマーケティングという職域で日本のITビジネスに長年携わる。2009年9月より現職。現在、BCPをはじめとした昨今のニーズに合った新しいデータ保護(バックアップ&リカバリ)の市場開拓、マーケティング業務に携わる。
http://www.falconstor.co.jp/

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