ゲーム理論を用いたプロジェクト管理

2008年10月8日(水)
坂田 祐司

業務を公平に割り振り、モチベーションを維持するには?

 今回はプロジェクトメンバーのモチベーションの維持に関する課題です。プロジェクトは長期間続くものです。プロジェクトチームを構成するメンバーのモチベーションも常に高いというものではありません。一般的にメンバーのモチベーションはプロジェクトの開始と終了直前は高いのですが、途中は低くなる場合が多いといわれます。ですので、プロジェクトマネジャーは、メンバーのモチベーションを維持するためにはどうすればいいか考えなければなりません。

 例えば、メンバーのモチべーションが下がる1つの例として以下のケースを考えてみます。

 あなたはプロジェクトマネジャーです。通常プロジェクトでは、多くの共通的業務があります。開発用サーバ管理であったり、会議体の設営であったり、事務用品の購入であったりです。

 これら共通的業務はプロジェクトのメンバーにとって必要ですが、できるならばやりたくないし、時間をかけたくないのが実情でしょう。この共通的業務が、理由もなく特定のメンバーに押し付けられていたり、ある特定のメンバーは全くやらなかったりした場合、必ずプロジェクト内に不満が出るものです。

 そこであなたはメンバーに共通的業務を公平に割り振ることとしました。ここで問題になる点が、公平さをどう決めるかです。単純作業量を割ってもよいのですが、メンバーの主業務によって共通的業務の価値は異なります。

 そこで、メンバーの受ける価値によって作業量を割り振ろうと考え、メンバーにどの程度共通的業務が役に立っているか聞くことにしました。しかし、メンバーは役に立っているというと作業が割り振られてしまうので、低めにいうと考えられます。

 この場合、全体として正直にいうメンバーが多くの業務を請け負ってしまうことになります。さてどのように聞けばメンバーの納得が得られるでしょうか?

ゲーム理論とは?

 このケースを解決する1つのアプローチが「ゲーム理論」によって導き出せます。ゲーム理論とは複数の人間が関与する活動において、各人の合理的な選択・行動はどのようなものかを考える理論です。

 ゲーム理論は、1944年、数学者のフォン・ノイマンと経済学者のモルゲンシュタインの共著「ゲーム理論と経済行動」によって世の中に知られるようになりました。その後、ナッシュなどが今日のゲーム理論の基礎を築き、その後1980年に入り、経済学の分野でこの理論が注目され、現在は経済学、数学、哲学、政治学、社会学、生物学などに応用されています。

 代表的なゲーム理論の問題として、「囚人のジレンマ」があります。「囚人のジレンマ」は有名なので、皆さんもよくご存じでしょう。次はこの「囚人のジレンマ」をソフトウエア開発でとらえると、どのような問題になるのか、具体的に提示してみましょう。

SI企業の研究所においてソフトウエア工学の研究に従事。試験やプログラムの解析技術に興味を持ち研究に従事。研究の一方、ソフトウエアのライフサイクル全般を考慮した開発方法のあるべき姿を探っている。http://d.hatena.ne.jp/ysakata

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