第5回 W3Cの歴史と仕組みとは

W3Cの歴史

 世の中のWebの標準的な技術(HTML、SVG、DOMなど)は、W3Cが技術を策定し標準化へと導いていています。そもそも、W3Cはなぜ存在しているのでしょうか。今回はW3Cの歴史と仕組み、ゴールについて紹介します。技術はコンセプトなしでは正しく利用することはできませんので、W3Cのコンセプトを理解することは技術利用の判断力をアップさせる基本となります。

 1990年にWWWがスイスの欧州原子核研究機構(CERN)で開発され、その後、1993年のmosaicブラウザの開発と供にWebは世界中に広がっていきます。W3CはWWWの開発から4年後の1994年10月1日にMIT(マサチューセッツ工科大学)が中心になり設立されました。ですので今年の10月で設立15年を迎えることになります。

 設立当初は北米、ヨーロッパ、アジアとそれぞれの地域においてホストがいたわけではなく、地域ごとにホストを設置するようになったのは翌年のINRIA(フランス国立情報学自動制御研究所)の設立からになります。また、慶応大学がW3Cのアジア圏のホストであることは知られていますが、実は設立当初の1994年からではなく1996年からW3Cのホストを務めています。

W3Cの仕組みとゴール

 W3Cは現在、ヨーロッパのホストであるERCIM、北米のホストであるMIT、アジア圏のホストである慶応大学によって運営されています。そのほかの国のW3Cの拠点は「オフィス」と呼び、世界各国に散らばっています。W3Cのスタッフについてですが、W3Cではフルタイムで働くスタッフと、W3Cへ参加している企業がWebの技術に関して日々、時差を乗り越え世界中で議論をかわして策定をしています。

 このように1つの技術の策定をするグループのことを「ワーキンググループ」と呼び、略して「WG」と記述されます。筆者の知人である慶応大学のHTML 5ワーキンググループメンバーの1人から、「米国時間での打ち合わせがあると寝られない日々が続く…」という話をされていました。また、WGには、ほかにもInvited Expertとして、その分野において優れた人物をW3C外部から登用することがあります。

 意外に知られてない仕組みとしてW3Cには「リエゾン」があります。ある技術を策定する際、一部の国のみで技術が進んでしまうと場合があります。それは国や地域の文化の違いでそのような問題が起こりますが、「リエゾン」が窓口となり、文化の差異をなくすために広く意見を聞き入れます。日本には、2008年の10月までKarl Dubostという非常にユニークで優秀なフランス人の「リエゾン」が在籍していました。彼はW3CのWebサイトのQ&Aのページなどの更新などもしていた人物です。

 また、CSSの以前バリデータはFujiと呼ばれていましたが、それはCSSのバリデータが日本の慶応に在籍していたオリベイラというW3Cのメンバーによって開発されていたからです。Webサイト上にも富士山が描かれています(http://www.w3.org/QA/2006/12/the_fuji_css_validator_release.html)。そしてこのようなW3Cスタッフを、1994年のW3C設立からまとめているのが、ティム・バーナーズ=リーなのです。

 そもそも、W3Cの目指すゴールとは何でしょうか。それは、W3CのWebサイトの「About W3C: Goals(http://www.w3.org/Consortium/mission)」に詳しく書かれていますが、W3Cのゴールとして本文の冒頭で以下のようにと記述してあります。

「Webの公的な価値としてW3Cの目的はすべての人へ、いかなるデバイス、ソフトウエア、ネットワーク環境、言語、文化、地域、身体、精神の差異なくコミュニケーション、商業、知識の共有ができることを目指す」

 これを元にWeb標準の考え方がはじまり、CSSなどの技術が普及していきました。現在、書籍や雑誌、WebサイトなどでCSSに限らず、技術は非常に多く目にすることができます。ただ何か自分で技術を利用するときには、W3Cのゴールと照らし合わせて、その技術の利用個所などを判断することが大切です。

【参考文献】

「About W3C」(http://www.w3.org/Consortium/)(アクセス:2009/1)

「About W3C: Goals」(http://www.w3.org/Consortium/mission)(アクセス:2009/1)

「About W3C: History」(http://www.w3.org/Consortium/history)(アクセス:2009/1)

「W3Cの歴史年表」(http://www.w3.org/2005/01/timelines/timeline-2500x998.png)(アクセス:2009/1)

著者について

菊池 崇

菊池 崇

ActLink株式会社(http://www.actlink.co.jp/)にてプロデューサー、allWebクリエイター塾(http://all-web.org/modules/tinyd5/)では、XHTML+CSS、Microformatsの講師。

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