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東京レッドハット会議 基調講演レポート「オープンソース・ソフトウェア開発の現場から」

Linux基調講演イベント

2007/4/18 17:00

オープンソースソフトウェアを取り巻くエコシステムが重要

レッドハットが4月18日に六本木アカデミーヒルズ49にて行った「東京レッドハット会議」から、基調講演「オープンソース・ソフトウェア開発の現場から」の内容をお伝えする。

この基調講演を行った東京工業大学 准教授の千葉 滋氏は、Javaバイトコード変換エンジン「Javassist」の開発者として知られるとともに、JBossコミュニティのコミッタの1人でもある。同氏はオープンソースソフトウェア開発者としての立場から、オープンソース開発の課題について語った。

東京工業大学 准教授 千葉 滋氏

東京工業大学 准教授 千葉 滋氏

千葉氏の開発スタイルはソフトウェア開発そのものではなく、研究に際して生まれたアイデアを実現し、論文を書いて発表することを目的としているとのことだ。開発したソフトウェアを使い続けるためには、機能拡張や保守を継続する必要があり、それによって実用的なソフトウェアができあがっていくという。

このスタイルによって開発が行われた「Javassist」を目にとめたJBossのチーフエンジニアのBill Burke氏から、2003年2月に「我々の傘下にはいらないか」との勧誘を受け、コミュニティに参加したとのこと。しかしコミュニティ参加後も、本業の合間に自宅で作業を行うという開発環境に大きな変化はなかったという。

これについて千葉氏は「企業がオープンソースによる基幹部品を自己の傘下とすることは、開発の安定化をはかる目的があると考えられます。例えば開発者が不慮の事故にあった場合などでも安定・持続的に開発を進めていくためには非常に重要なポイントです」と語る。

ここで改めてオープンソースソフトウェアの意味について述べ、その中で「オープンソースソフトウェアはボランティア開発のソフトウェアではない」と強調した。しかし現状では多くの技術者が専任ではなく、あくまで本業の余暇として開発に携わっている状態であり、その開発時間は夜中や休日に行われることから限界を感じることが多いという。

品質向上や保守・サポート、ドキュメントの整備などは、ボランティアベースで行うにはモチベーションのあがらない作業である。また個人で行っている以上、普及活動を行いたいと思っても費用はかけられないといったジレンマもあるという。

そこで重要になるのが、開発者を育てるオープンソースソフトウェア開発企業の存在であるという。千葉氏は「イノベーションは独立した個人から生まれるもので、企画会議からは生まれない。コミュニティ(個人)とオープンソースソフトウェア開発企業の連携によって、開発のエコシステム創出が必要だ」と述べる。

さらに千葉氏は「実際にオープンソースソフトウェアの開発が進むにつれ、プロプライエタリなソフトウェアを開発している企業の収益ベースが成り立たなくなり、広告費が減り、最終的に専門誌がなくなるといったことも考えられる。企業が純粋な企業活動のためにオープンソースソフトウェアを使っていくことを考えれば考えるほど、業界全体が縮小してしまう可能性もある」と続けた。

最後に千葉氏は「望ましいのは、個人・コミュニティがイノベーションを提供し、企業・産業界がそれを受け取り、品質/安定性/収益を個人・コミュニティに還元する、オープンソースのエコシステムを作りだすことだ」と締めくくった。

問い合わせ先

レッドハット株式会社

TEL:03-6406-9920

URL:http://www.jp.redhat.com/

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(ThinkIT編集局  神保 暢雄)