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第4回 ハイブリッド・クラウドに向けたネットワーク技術の将来

ハイブリッド・クラウドの前提条件

前回までに、仮想サーバー/クラウド環境で求められるネットワーク・スイッチの機能を、Brocade DVXのVirtual Cluster Switching(VCS)技術を引き合いに説明してきた。サーバー仮想化のメリットを高めるためには、データセンターの高スループット化や、仮想化とネットワークを連動させた運用が重要になる。

前提として、ここまでの連載では、単一のデータセンターを想定してきた。ところが、実際には、パブリック・クラウドとプライベート・クラウドを連携させたハイブリッド・クラウドもあり得る。最終回となる今回は、こうしたハイブリッド・クラウドで必要になる機能について解説する。

クラウドの本質は、ビジネス・ロジックとビジネス・データを結合させつつ、ハードウエア・プラットフォームと切り離してネットワーク経由でサービス提供する、ということである。サーバー仮想化というビジネス・ロジックのプラットフォームだけでなく、データ・プラットフォームとしてのストレージやネットワークとの連携が必要になる。

プライベート・クラウド側にある仮想マシンをプライベート・クラウド側に移動する場合、単に仮想マシンのメモリー・イメージを転送するだけでは足りない。当然、ストレージ・イメージも合わせて転送する必要がある。また、フラットなL2ネットワークになっていなければならないため、VPNやVLAN IDなども考慮する必要がある。

このように、サーバー、ストレージ、ネットワーク技術のすべてが連携する必要がある。サーバー仮想化技術だけに着目していても、ネットワークだけに着目していても、どちらにせよ問題を解消することはできない。

図1: ハイブリッド・クラウドでの考慮点

図1: ハイブリッド・クラウドでの考慮点(クリックで拡大)

ハイブリッド・クラウドのための連携技術〜フラットL2ネットワーク

ハイブリッド・クラウドでは、自営のデータセンターとパブリックなデータセンターとの間でサービスを連携させる必要がある。このための仕組みが必須となる。特に、IaaS(Infrastructure as a Service)では、仮想マシンの移動がともなう場合があるため、注意が必要である。

ハイブリッド・クラウドは、ネットワーク技術の観点では、敷居は高くない。データセンター間でフラットなL2ネットワークを構築するだけでよいからだ。これは、L2 VPN技術で実現可能である。

L2 VPN技術には多くの種類がある。今日よく使われるのは、L2 over IPまたはL2 over MPLSである。前者のイメージは、Generic Routing Encapsulation(GRE)であり、後者のイメージはVirtual Private LAN Service(VPLS)である。これらは既に確立されたものであり、必要に応じて最適なものを選んで使うことができる。

図2: L2VPN技術: VPLS、MPLS over GRE

図2: L2VPN技術: VPLS、MPLS over GRE(クリックで拡大)

一般に、L2VPNでは、MAC学習やブロードキャスト・トラフィックなどの最適化が課題となる。Brocade VCSで実装されているようなリッチなL2機能は、このような課題に対しても答えを提供する。

VCSでは、MACアドレスの学習はローカルのスイッチで行われ、ファブリック・サービスによって、最適な形でファブリック・ワイドに伝搬する。同様に、ポート・プロファイルなどもファブリック・ワイドの属性となるため、その一貫性の管理は、最適なプロトコルで行われる。

ただし、VCS Extenderは、現在ではまだ開発中であるため、以下では、類似技術としてFC(Fibre Channel)のextender技術を説明する。FC extenderは、機能的には2つの部分で構成されている。FC Routingと、FC over IP技術である。

TRILLベースのVCSにおいても、FCにおいても、ファブリック内ではスイッチ固有のIDが重要になる。このIDをベースに、ルーティングや管理などを行うためである。ところが、遠隔地にあるスイッチのIDがローカルのものとかぶらないようにするのは、事実上困難である。パブリック・クラウドでは、そもそもスイッチIDの固有性を担保することは不可能である。

FC Routing技術は、この問題を解決する。Domain IDに対して、アドレス変換を実現することで固有性を保証する。ファブリックのサイズは収束時間にも影響するため、FC Routingのようにファブリック全体を任意の仮想スイッチに射影する技術は、広域接続では重要になる。

FCIPは、L3で接続されたファブリック間で、ロスレスを担保しながら通信する技術である。もちろん、L3なので、フラットなL2上で動作させることも可能である。

図3: FC Routing

図3: FC Routing(クリックで拡大)

この記事の著者

小宮 崇博

ブロケードコミュニケーションズシステムズ
UNIXサーバメーカや運用管理ソフトウェアメーカでSEを勤め、2001年からブロケードに所属。主にFC-SANスイッチのプリセールスに携わり、2008年からは新技術、新製品の開発などの日本での技術サポートを行なう。現在は、ソリューション・マーケティングとして、FC-SANだけではなく、LAN/WANやI/O仮想化なども含めた広範なネットワークソリューションの提供に向け活動をしている。個人的にもストレージエリアネットワーク啓蒙のためのメーリングリストを主催している。
http://groups.yahoo.co.jp/group/san-tech/

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