必見!アプリ作りの発想法教えます

2012年3月26日(月)
PROJECT KySS

3本のアプリを作る発想法(3)感情からの発想

自分の喜怒哀楽を眺めてみる

これまでの2つの段階をクリアしたら、いよいよ、1からの企画を考えてみましょう。1からの企画では、企画を実現するために、使ったことのない技術を調べたり、実装方法に頭を悩ませたりしなければならないことも少なからずありますから、スキルアップにもなります。

1から考えるなど無理、アイデアがわかない、と思われるでしょうか?それは違います。ネタがないわけではありません、あることに気付いていないだけです。次のような発想法を試してみてください。本稿のために筆者が考えた、名付けて「喜怒哀楽発想法」です。

「喜」あなたの大切な人を喜ばせるには?

まず、家族でも友人でも同僚でもいいので、身近な人を思い浮かべてください。どのようなことをすれば、相手は喜びますか?その中に、アプリで実現できることはありませんか。分からなければ、直接、その人たちに実機を見せて、どのようなアプリがあればうれしいか尋ねてみましょう。

例えば、日光過敏の人がいたら、日の出日の入りを表示してくれるアプリがあればうれしいと言うでしょう。それらの時刻を参考にして行動を決めているからです。

「怒」あなたの怒りを解決するには?

最近あなたは腹を立てたことがありませんか。個人的なことでも、社会的なできごとでもかまいません。「どうしてこんな理不尽なことが許されるんだ」といったことを、アプリで解決できませんか。心の振幅の大きいネガティブな感情の方が、心の一箇所にとどまって、考え続けるエネルギーになりやすいものです。

実はこれ、コラムニストが疲労困憊(こんぱい)の時に使う方法です。

あえて自分とは違う考えを持つ人のコラムを読むと、自分の意見を訴えたくなるわけです。もちろん、その反論をそのまま文章にするわけではありません。「それは違うんじゃないか」という感情を、考え始めるためのエンジンとして利用するのです。

例えば、もし、相手からのメッセージに対して怒っているなら、その方法を改善してみてはいかがでしょう。次のように、いわゆる「おばかアプリ」を作って、笑いに転換してしまうのです。

アプリケーションのタイトルは「の」。タイルのイメージは、図1のとおりです。

腹の立つメッセージを受け取った時、それに気をとられて時間がたつと、非効率的です。意識を切り替えるために、メッセージのテキストをコピーし、さらにその中の、ひらがなの「の」を、「あんこ」に置換して、TextBox内に表示するというアプリです。図1のタイルはどう見てもタルトですが、「あんこ」に置換するのは、「タルト」という言葉は商標に抵触する恐れがあるためです。なぜ「の」かといえば、日本語の文章には「の」が含まれている可能性が高いからです。

図1:こんな「おばかアプリ」も作れば1本。

「哀」困っている人を助けるには?

社会の中の哀しみに対して、開発者として何かできることはないかを考えてみましょう。

msnニュースの、「ニュース」や「ライフ」のトピックを、1件ずつ眺めてみてください。あなたが哀しみを感じ、その渦中の人が、もし事前に情報を持っていたり、あるいは意思や感情をソーシャルメディアなどで交換できてさえいれば防げたかもしれない出来事はありませんか。また、既に起こってしまった哀しみを、アプリで軽減することはできませんか。ITに何ができるか、思いめぐらしてみてください。

「楽」もっと人生を楽しむには?

あなたは何をしている時が楽しいですか?

その楽しい時間に、こんなものがあったらさらに楽しいと思うツールはありませんか。「喜」が、「開発者として誰かに喜んでもらえる」アプリなら、「楽」は、あなたが「ユーザーとして自分で使って楽しい」アプリです。

表5:「感情」に端を発する発想

感情 問題点 解決方法
あなたの友人や家族や同僚を喜ばせるには? 問題点を列記する。 実装可能性は考慮せず、こんなことができれば、という希望を書く。
自分の個人的な怒りを解決するには?
社会の理不尽をなくすには?
友人や家族を助けるには?
気の毒な状況にある人や動物を支援するには?
自分が楽しむには?

感情から起こる問題の解決策を考える

では、表5を参考に、自分自身のリアルな経験の中で起こった感情に基づいて考えてみてください。そして、表6のように、感情と問題点と、考えられる解決策を書き出してみましょう。

この作業をするときは、未経験のシチュエーションから呼び覚まされるであろう感情を推察し、その感情に基づいてアイデアを考えることは避けておきましょう。プランニングやディレクションのプロでもない限り、的外れになる恐れがあるからです。

表6:表5の発想法によるアイデアの例

感情 問題点 解決策
家族に地誌的な困難があり、カーナビも利用しにくい。車以外で外出するときどうするか。 進行方向に関わらず地図では上が北なので方角が分からなくなる。目標の建物を憶えていない。 自分が分かりやすいように、bingMapsを回転させる。bingMapsの上にInkPresenterを重ねてメモを書きこんだり、TextBoxを重ねてコメントを入力。
写真を撮って貼れないか。
センサーと組み合わせられないか。
家族に物忘れが増えて、モノの名前が思い出せなくなりつつある。 モノのイメージは把握できているが、それに紐づいたテキストを脳内から呼び出せない。 モノにPhoneをかざすと品名を表示するアプリ。
カメラを利用?バーコードを利用できないか?
液状化現象で傾いている家の映像を見て、とても気の毒。自分も地盤沈下に悩んだ経験がある。 パチンコ玉はどこの家庭にでもあるわけではない。転がした後の回収と掃除が大変そう。傾斜計は使い慣れていなければ分かりにくそう。 加速度センサーを使って、計器盤を見慣れていない主婦にも使いやすい、オシャレなアプリを作る。
※本連載で解説する「Sound Clinometer」
介護認定に関する調査は、チェックリストが大半であるにもかかわらず、手書き。聞き取り入力項目は多くはない。IT化すればいいのに。 調査票を持ち帰って再入力していると思われる。手間とミスが生じるのではないか。 フォームから入力してXML保存。PCで吸い上げれば、Access、InfoPath、利用方法はいくつでも考えられる。※予算は度外視しています。
保健所でのメタボ指導のための、3日間の食事記録が手書きで面倒。 手書きでは読みづらい文字もあったりするだろうから、入力してのデータベース化は難しいのではないか。データ化されていなければ、保健指導を受けた人全員の情報や、指導内容や結果の有効活用ができないのでは。 Phoneアプリなら、外食時にも、入力できる。フォームから入力してXML保存。PCで吸い上げれば、利用方法はいくつもある。
料理は楽しい!シャトルシェフは便利だ! 作る分量やキッチンの室温によって保温時間を考える必要がある。 料理と分量と室温を入力すれば時間が計算表示される。短時間ならタイマー機能も。一度入力したデータは保存され、次回から選択ボックスに表示される。
楽器演奏は楽しい! ギターやピアノのアプリはあるようだが、マンドリンやその他の弦楽器はないかも。 例えばマンドリンなら、ホールドでトレモロ再生など。実装は難しいかもしれないが。

どうでしょう、何かアイデアがわいてきたでしょうか?

他にもある開発ネタの見つけ方

以上3つの発想法について述べてきましたが、これらの方法がすべてではありません。アプリのネタを見つけるには、他にもいろいろな方法があります。

Windows Phone のメリットから考える

まず、Windows Phone 実機の特長を書き出してみてください。

携帯できる、一人一台(ユーザーを識別できる)、軽量、かさばらない、防水、比較的どこでもネットに接続できる、電話がかけられる、ソーシャルメディアと連携できる、友だちの連絡先がすぐわかる、音楽が聴ける、出先でメールを受信できるなど、いろいろあるでしょう。それらの特長を生かすには、どうすればよいか?という順序で考えてみましょう。

PCで使う頻度が高い処理や、PCの方が圧倒的に便利な処理を実装するなら、それ以上のメリットが必要になります。「Windows Phone アプリでなければならない必然性がある」アイデアを見つけることが肝心です。

公開されているアプリを使ってみる

開発者の中には、現行のマーケットプレイスのアプリを使ってみると、それがトリガとなり、「もっとユーザーにとって使いやすいものを作れないか」とばかりにアイデアのわく人がいるかもしれません。

あるいは、他社のスマホのアプリを眺めることがトリガーとなり、「Windows Phoneの独自性を打ち出せないだろうか」と考える人もいるかもしれません。

データベースから考える

データベースの入力と構築には時間も手間もかかり、おいそれと開発できるものでもありません。逆に言えば、もし、有用なデータベースの使用許可を得られれば、検索処理を実装してアプリ化できるでしょう。もっとも、開発力に加え、利用できるデータベースを探して、交渉するスキルが必要になります。

日用品から考える

日常よく使うもので、身の回りにあるけれども、常には携帯していないものの機能を、Windows Phoneアプリで置き換えることはできないか、考えてみましょう。

一度、カバンの中をチェックしてみてください。非常用品袋でもかまいません。Windows Phoneアプリで置き換えられる機能を持つものはありませんか?ネタを見つけるためには、日々の暮らしの中で、アプリにする価値があるものはないか、常に考える癖を身に付けておきたいものですね。多くの趣味を持ち、本を読み、人の話を傾聴し、どのような情報もフィルタリングせずに記憶しておくことも発想を助けます。

また、mixiでもfacebookでもいいので、参加しているコミュでのメンバーの発言をよく読んでみましょう。多くのヒントが隠れています。自分に合った発想法を見つけることが大事です。

なお、本稿で述べた例は、あくまで解説用のものであり、実装可能性にも公開結果にも言及していませんが、ヒントになるようでしたら自由に作るなり発展させるなりしてかまいません。

四国のSOHO。薬師寺国安(VBプログラマ)と、薬師寺聖(デザイナ、エンジニア)によるコラボレーション・ユニット。1997年6月、Dynamic HTMLとDirectAnimationの普及を目的として結成。共同開発やユニット名義での執筆活動を行う。XMLおよび.NETに関する著書や連載多数。最新刊は「Silverlight実践プログラミング」両名とも、Microsoft MVP for Development Platforms - Client App Dev (Oct 2003-Sep 2012)。http://www.PROJECTKySS.NET/

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