日本ユニシス「スマートタクシー」に見る、アジャイルによるサービスビジネス開発事例のポイント

2012年9月13日(木)
篠田 健(しのだ たけし)

サービスビジネスのために開発されたシステム

概要

本事例では、タクシー会社におけるタクシー配車業務を支援する「smartaxi®」(以後スマートタクシー)と呼称したサービスのシステム開発事例についてご紹介します。

本システムは、ご要望のあった乗客のもとまでタクシーが迎えに行く「迎車」を中心に、「予約」管理・「タクシー待機場所」管理・「メッセージ共有」など、タクシー配車業務にまつわる機能を提供します。

本サービスビジネスの背景

通常、タクシーは専用無線網を利用することで配車センターとコミュニケーションを取っていて、この専用無線網は現在アナログ方式と新方式であるデジタル方式が普及しています。

しかし、国の施策によってアナログ方式は2016年6月までに利用を停止する事が求められています。

代替されるデジタル方式は、音声以上の情報を通信できるメリットがあるものの、機器の交換コストが高い・アナログ方式同様不感地帯の対応などの課題を抱えています。

日本ユニシスはそれら課題に対して、汎用技術と製品で構成された安価なタクシー業務システムとして「スマートタクシー」を開発し、サービスとして提供しています(図1)。

将来的には、専用無線網では実現できなかった様々なサービスを充実し、タクシー会社の価値を向上させることが出来るサービスとして期待しています。

図1:デジタル無線を使ったシステムから転換をはかるスマートタクシー(クリックで拡大)

「スマートタクシー」概要

前述の通り、多くのタクシー会社では配車センターを備えており、配車センターと街を走行する各タクシーがコミュニケーションをとりながら日々の業務を実施しています。

スマートタクシーでは、配車センターとタクシーは、クラウド上に配置されたサーバーと、タクシーに配置されたAndroid端末を通じてコミュニケーションを取ります。例えば、乗客のお迎えのための配車通知や、対象地域の街のイベント情報や道路工事情報の共有などです。

中心となるタクシーの配車としては、「自動配車」や「手動配車」機能を提供しています。

「自動配車」は、乗客より迎車の要請があった際には、街を走行している各タクシーの中から自動的に乗客との最短距離の場所を走行している「空車」状態のタクシーを見つけ出し、配車します。また、配車センターによるきめ細かい乗客サービスを残したいというご要望もあり、地図上から任意のタクシーを選択し、迎車に向かわせる「手動配車」の機能もあります。

ビジネス・技術上の課題と開発プロセスの選定

プロジェクト開始時の状況

日本ユニシスにとって、タクシー配車システムは未経験のビジネス領域でした。

また、お客さまにとっても、専用無線網ではなく携帯電話網を大規模に活用した前例はありませんでした。

以上の条件から、まずは配車システムにとっての最小限の要求を把握することと、机上では事前に把握しにくい技術的な課題を解決しつづけることを同時に実施する必要があるとプロジェクトでは判断しました。

プロセスの選定

お客さまの、配車システムに対する最小限の要求を把握するためには、事前の綿密な取材と、動くシステムによる現実との差を確認し続ける事が必要だと考えました。

つまり、把握された要求を細かくお客さまに確認し、技術的問題を早期発見することが、プロジェクトのリスクを最小限にするためには必要であるとともに、結果的な開発コスト削減に繋がるであろうという判断をしました。そこで、開発はアジャイルな開発手法を採用する事としました。

開発手法の実践については、後に詳しく記載します。

著者
篠田 健(しのだ たけし)
日本ユニシス株式会社

日本ユニシス株式会社 アドバンスド技術部 Webビジネス技術室 所属
1981年生まれ。入社後、技術支援および研究部署に所属し、OLTPミドルウェアおよびBPM・EIP製品の技術支援や調査業務に関わる。現在は、Rubyを中心としたシステム開発を推進。

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