Linux技術者認定制度「LPIC」の最新バージョン「3.5」で、確かな知識と技術力を証明して差を付ける

2013年3月5日(火)
ラーニング編集部

特定のベンダーに依存しない
中立性のメリット

Linuxの技術者認定試験であるLPIC(Linux技術者認定制度)が、カナダに本部を持つ非営利団体のLPIにより開始されたのは1999年のこと。当時はオープンソースの概念そのものがよく知られていなかった時代であり、企業内でLinuxが使用されている事例も少なかったという。

もともとはLinuxの普及やエンジニアの養成を目的にスタートしたLPICだが、ここ数年におけるオープンソース利用の拡大を受け、Linux技術者の実力を評価する国際的な認定制度として注目を集めている。2013年1月における全世界(150カ国以上)での累計受験者数は35万人以上。日本国内だけでも20万人を突破しており、名実ともにLinuxに関するデファクト資格といえるだろう(図1)。

図1 国内累計受験者数は、2013年1月時点で20万人突破(LPI-Japan調べ)

国内累計受験者数

日本においてLPICを提供するNPO法人エルピーアイジャパンの理事長を務める成井弦氏は、Linux技術者に対するニーズの変化について「いまや、FacebookやAmazonをはじめとするIT企業だけでなく、銀行や証券会社のミッションクリティカルなシステム、組み込みOS、スーパーコンピューターに至るまで、あらゆる分野にLinuxが採用されています。IT技術者にとって、欠かせない技術といえるでしょう」とその現状を語る。

またここ数年においては、官公庁のサーバ構築案件でも、予算や保守性の面からLinuxを利用することが一般的となっている。公募/入札にあたり、運用担当技術者の要件として、ベンダーニュートラルな資格であるLPICの取得が求められるケースも少なくない。もちろん、特定のディストリビューションやベンダーに依存しない中立性だけが、LPICの特徴ではない。

「Linuxの技術を卵に例えるならば、LPICが認定するのは、あらゆるディストリビューションに共通する『黄身』に相当するもの。Linuxの根本にあたる、広範囲なスキルを問う試験と言い換えてもよいでしょう。これに対して、各種のLinuxディストリビューションに特化したベンダー試験が問うのは、カスタマイズされた周辺の『白身』にあたる部分です。もちろん、Linuxを習得するうえではいずれも重要ですが、LPICではより総合的な知識の習得が要求されることになります」と成井氏は説明する。

そのため、長年の実務経験を持つエンジニアがLPICを受験して、いかに自分の持つ知識が限定された範囲でしかなかったかに驚くことも珍しくないという。

もっとも高度な技術力を認定する
レベル3の受験者が急増

全世界共通で実施されるLPICは、レベル1からレベル3までの3段階に分かれている。それぞれの試験レベルについて、より詳しく見てみよう(図2)。

図2 LPIC試験の構成と概要(LPI-Japanサイトより)。ITSSレベルとは、経済産業省が定める、IT人材に求められるスキルやキャリアを、体系化してレベル別に示した指標

国内累計受験者数

●エントリー資格のレベル1

LPICレベル1は「Linuxのサーバ環境の構築、運用、保守などの基本操作ができること」とされ、エントリーレベルでのLinuxの知識を問うものとなっている。実際にはLinuxのアーキテクチャやコマンドに関する「101試験」と、システム管理やネットワークの基礎などを問う「102試験」の2つに分かれており、この両方を取得することで認定される仕組みだ。

主に1~2年の実務経験を持つ新人エンジニアを想定した難易度だが、最近では事務職からのキャリアチェンジを目指す女性の受験も増えているという。そのため、エルピーアイジャパンでは各種認定教材のほかに、初学者を対象にした「Linux標準教科書」をWeb上で無償配布。また試験のコツや学習方法などをレクチャーする無料セミナーを開催するなど、UNIXに関する知識がゼロでも挑戦できる体制を整えている。

●一人前の実務能力が試されるレベル2

LPICレベル2は「Linuxのシステムデザインと構築、ネットワークの構築、維持、トラブルシューティングが行えること」が前提となっており、ネットワークを含めたコンピュータシステム全体に関する知識が要求される。こちらはLinuxに関する総合的な知識を証明する資格となるため、SEなどの取得例が多いとのこと。

レベル2もLinuxの高度な管理手法を問う「201試験」と、Linuxで構築されたネットワークの管理などを問う「202試験」から構成され、認定取得には両方の試験をパスする必要がある。このレベル2の取得をもって、一人前のLinuxエンジニアに仲間入りしたと言えよう。

●受注や転職が有利に進められるレベル3

もっとも難易度の高いLPICレベル3は「複数のOSが混在する環境において、大規模なITシステムの構築を主導的に実施できること」と定義されており、エンタープライズレベルでのシステム構築やコンサルティングが可能な技術者を認定する「LPICレベル3 Core」(301試験)と、各分野におけるスペシャリストを認定するための「LPICレベル3 Specialty」の2段階に分かれている。

LPICレベル3 Specialtyはさらに、Linux及びUNIXとWindowsの混在環境におけるSI能力を認定する「Mixed Environment Exam」(302試験)と、高度なネットワークにおけるセキュリティ技術を認定する「Security Exam」(303試験)、クラウドの基本技術である仮想化システムやHA構成の構築/運用技術を認定する「Virtualization & High Availability Exam」(304試験)の3つから成る(※)。いずれも5年程度の実務経験を前提とした難関試験だが、高度なスキルを持つLinuxエンジニアの需要が伸びたことを受け、ここ数年において受験者数が急増しているという。さまざまな現場に対応できる能力を証明するレベル3を取得していれば、技術力の証明となり案件の受注率が高まったり、転職でも有利に働くであろう。

※ 302~304試験のいずれか1つにパスすると、LPICレベル3 Specialtyに認定される。

なお合格率については、出題内容が変更されても難易度が変わらないように統計処理的な手法が用いられており、いずれのレベルに関しても65%前後となるよう設定されているとのことだ。

問題作成のプロセスをオープン化し
問題の精度と実用性を高める

LPICの試験はPearson VUEにより提供されるCBT(Computer Based Testing)方式で実施され、複数選択式の問題にキーボード入力問題を組み合わせたものだ。それぞれの資格には「認定日から5年」という有意期限が設けられており、上位資格の受験にあたっては有意な下位の資格を有することが条件となっている。5年が経過しても認定された事実が取り消されるわけではないが、同じレベルの資格を再度取得するか、あるいは上位レベルの資格を取得することで、現在有効な資格保持者であることを証明でききる。

試験内容に関しては、Linuxの進化や技術的なトレンドに合わせて数年のスパンで定期的な見直しが実行されており、2012年の10月にはLPICレベル1と2が、それぞれ「バージョン3.5」に改訂されている。新バージョンの試験において、出題範囲が追加/変更される割合は全体の数%と、全面的な刷新ではないので、旧版のテキストも使えないわけではないが、これから学習を開始する場合は、新たな規格に対応した教材を利用するほうがよいだろう。

ちなみにLPICの試験問題に関しては、より実務に即したものを出題するという観点から、現役エンジニアが参加するコミュニティにおいて、オープンな環境での問題作成が行われている。これにより「高品質で正確な問題が出題できるだけでなく、現場で本当に必要となる知識を問える」と成井氏。

では最後に、LPICを受験するメリットをあらためてまとめておこう。

  1. Linuxの技術力を証明する認定制度としては世界最大であり、事実上のデファクト・スタンダードとなっている
  2. 広範囲から出題されるため、Linuxの知識全般を習得できる

「AppleやGoogleの例を挙げるまでもなく、オープンソースの新しい流れを理解して、積極的にビジネスへ取り入れる経営者が増えています。この流れを生き残るためにも、これからのエンジニアにはオープンソースに関するスキルが欠かせません」(成井氏)

自身のキャリアアップのためには、ただ知識を習得するだけでなく、その知識レベルを証明できる手段が必要になると指摘する成井氏。そのためにも、ぜひLPICを活用したいところだ。

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