ストレージ仮想化に対するEMCの取り組み

2009年8月19日(水)
後藤 哲也

変遷期を迎えた今日のデータセンター

 連載第2回では、実際のストレージ仮想化に向けた取り組みとして、EMCが提供するサービスを交えながら解説していきます。

 仮想化は、ユーザー・インターフェースには影響を与えず、物理要素を抽象化し、論理的な見え方に変換する技術です。仮想化に向けて、今日のデータセンターは大きな変遷期を迎えています。既にデータセンター内で、物理環境と仮想環境の混在は進んでいて、仮想化に対する問いかけは既に、「もしも」などで始まる段階を超え、今や、「どのようにして」やさらには、「どれくらい早く」で始まるものになっています。

 従来ある、データセンター管理者の課題は、常に調達や運用にかかるコストの削減、できるだけ多くのビジネス要件を満足させることのできる柔軟性の向上、さらにすべてのアプリケーションにわたって、より高いサービス・レベルの提供を実現することでした。仮想化はこれらデータセンター管理者の課題を解決します。

 さらに仮想化は、データセンターに対する考え方、計画方法、管理方法までを変えます。それは、IT機器の管理や個々のIT資産間で優先順位をつけるという考え方から、ITをサービスとして提供し、物理装置の管理ではなくポリシーを管理するという考え方の変革でもあります。これらすべてが、今まで以上により高度のサービス・レベルの提供につながるのです。

サーバー仮想化とストレージ仮想化

 他でも触れられていますが、まずITインフラの2つの仮想化ソリューション、サーバー仮想化とストレージ仮想化について説明します。

■サーバー仮想化

 サーバー仮想化では、1台の物理サーバー上に複数の仮想サーバーを動作させます。そのため、物理サーバーを統合し、使用率を向上させ電力やサーバー・スペースにかかる費用の削減なども可能です。仮想サーバーは、物理サーバーに比べ、圧倒的に迅速にユーザーに提供できるだけでなく、逆にサーバー・リソースが不要となった場合でも、容易に「廃棄」することが可能で、プロジェクトの効率化を実現します。

 さらに、サーバー仮想化環境では、物理サーバーの負荷変動や要件に応じて、指定したタイミングで仮想サーバーを物理サーバー上で移動させることが可能です。これは、物理環境で常につきまとってきた互換性に要する複雑さを軽減させる第一歩と言えます。

 ストレージ仮想化と別々にとらえられがちなサーバー仮想化技術ですが、サーバー仮想化においては、SAN(Storage Area Network)すなわちストレージ階層において、集約された高速大容量のI/Oのリード/ライトや複数サーバーのイメージの移動が発生します。そのため、パフォーマンスや容量増加の適切な対応、可用性向上、さらに効率的かつ最適化されたパス管理などを実現するストレージ仮想化がサーバー仮想化を支える重要な技術となります。

■ストレージ仮想化

 ストレージ仮想化によって、サーバーに影響を与えない、複数のディスク階層間、異機種混在環境を含む、ストレージ筐体(きょうたい)間での無停止のデータ移行が実現されます。後ほど詳しく触れますが、「今すぐ活用できるストレージ仮想化技術」としても仮想プロビジョニングや仮想LUNなどの先進のストレージ仮想化テクノロジーがEMCのSymmetrixやCLARiXだけでなく、各社の高性能なSANストレージ製品で提供されています。ストレージ仮想化の本質とは、複数のストレージ階層を単一の管理基盤の下で統合するものです。これによって、すべてのストレージ階層を容易かつ迅速に構成、管理し、環境を劇的に単純化し管理にかかるすべての手間とコストを削減します。

EMCジャパン株式会社
マーケティング本部 プロダクト・マーケティング・マネージャ 
某鉄鋼メーカーのシステム・エンジニア、某監査法人系コンサルティング・ファームのITコンサルタントを経て1999年EMCジャパン入社。現在に至る。

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