Hyper-V 2.0で強化されたライブマイグレーション
ライブマイグレーションの仕組み
では、ライブマイグレーションはどのような仕組みで実現されているのでしょうか。ライブマイグレーションを構成するには、Windows Server 2008 R2のEnterprise Edition、またはData Center Editionでフェールオーバークラスターを構築します。
クイックマイグレーション同様、仮想マシンのイメージはクラスターのマシンから共通にアクセスできるネットワークストレージ上に配置しておきます。
ライブマイグレーションを開始すると、まず稼働中の仮想マシンのメモリーイメージを移動先にコピーします。コピー中にもメモリーの中身は変化していますので、変化した差分を再度コピーします。これを複数回繰り返したのち、最後に移動元の仮想マシンを一時停止し、最終的な差分をコピーします。そして、CPUやデバイスの状態を保存し、移動先にコピーします。
最終的なコピーが完了したら、移動先の仮想マシンを再開します。ダウンタイムは最終的な差分のコピー時間のみであり、通常1秒以下です。このように、ネットワークのタイムアウトやダウンタイムなしに仮想マシンを移動することができます。
なお、メモリーイメージをコピーするため、移動元と移動先では同じプロセッサーファミリーのCPUを使用する必要があります。世代が異なるCPU間でライブマイグレーションを行う場合は、プロセッサー互換設定(http://thinkit.co.jp/article/1010/2/)をオンにしておく必要があります。
クラスターの共有ボリューム
ライブマイグレーションの追加とともに、フェールオーバークラスターで使用するストレージの仕組みとして、クラスターの共有ボリュームが追加されました。Cluster Shared Volume、またはCSVと呼ばれることもあります。
クラスターの共有ボリュームは、Hyper-Vのフェールオーバークラスターのみで利用可能な新しいネットワークストレージです。従来のネットワークストレージでは、ボリュームの単位であるLUN(論理ユニット番号)には、同時に1台のサーバーからのみアクセスが可能でした。ほかのサーバーからアクセスするためには現在使用中のサーバーでのマウントを解除し、ほかのサーバーでマウントする必要があります。
このため、Windows Server 2008でのクイックマイグレーションのためのフェールオーバークラスターでは、仮想マシンごとにLUNを用意する必要がありました。そのため、仮想マシンの数が増えるとともに、LUNやディスク容量の管理の負担も増大していました。
また、従来のネットワークストレージと異なり、クラスターの共有ボリュームはドライブレターを使わずに、ドライブルートのClusterStorageフォルダにマウントされます。どのマシンからも同時にアクセスできると同時に、共通のファイルパスでアクセスできるという特長があります。
従来のネットワークストレージではLUNごとに特定の所有者により排他アクセス制御されますが、クラスターの共有ボリュームでは、ある所有者がClusterStorageのフォルダ構造やメタデータなどの名前空間を管理し、ほかの所有者が個々のVHDなどのファイルを管理できます。
このように、クラスターの共有ボリュームによって、多数のサーバーで多数の仮想マシンを動かす場合の管理の複雑さを解消できるとともに、マウント・アンマウントの手順が不要なためにライブマイグレーションのゼロダウンタイムの目標を実現しています。
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