提供されるソフトウエアと構築活用のポイント
パブリック・クラウドでの商用ソフトウエア提供
「Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)」は、Amazon社が提供するIaaSです。AmazonのWebサイトを運営するシステムの一部を、仮想マシン(VM)として有償で貸し出すサービスです。
書籍通販で有名なAmazon社では、Amazon Webサービスと称して、インターネット上での開発者に対して幅広い機能提供を行ってきました。Amazon EC2は、Amazon Webサービスの機能の一つです。
IBMでは、次のソフトウエアについて、Amazon EC2で提供される仮想マシンECU(EC2 Compute Unit)に対して、1時間単位でライセンスを提供しています。1時間あたり数10セント~数ドル程度のライセンス料金となっているほか、いくつかのものは開発専用ライセンスのため無料です。
・IBM MashupCenter
・Lotus Forms
・Lotus Web Content Management
・WebSphere Portal Server
・WebSphere Application Server
・WebSphere eXtreme Scale
・WebSphere sMash
・IBM Informix Dynamic Server
・DB2 Workgroup
・DB2 Express/Express-Cの一部のエディション
これらのソフトウエアは、AMI(Amazon Machine Image)と呼ばれるVMイメージとして、あらかじめAmazon EC2サイト内に準備されていますので、使いたいときに指定するだけですぐに使えます。
Amazon EC2にはミドルウエアがあり、短時間の利用に便利です。テストなどのために数時間だけ使うような場合にも10分程度で利用開始が可能なため、インストールなどの手間をかけず、すぐに作業ができます。無償版もあるため、機能評価にも利用できます。また、1週間だけアプリケーションを運用したいといった場合でも、必要な分だけライセンス料を支払って本番運用することが可能で、ユーティリティー型のミドルウエア提供と言えます。
また、ユーザー企業がお持ちのミドルウエア・ライセンスを使って、EC2上で運用することも可能です。IBMソフトウエアは、PVU(Processor Value Unit)というCPU能力に応じてライセンス料金を算出しますが、その単位も発表されています。
クラウド構築を支えるプロビジョニング製品
IBMでは、プライベート・クラウドの複雑さを克服するために、「可視化」「コントロール」「オートメーション」の3つが必要と考え、これを「IBMサービス・マネジメント」というコンセプトとして打ち出しています。
・可視化
ヘテロな仮想環境のパフォーマンスと可用性を可視化することにより、早い対応とより良い判断を可能とします。
・コントロール
共有されたインフラストラクチャーとアプリケーションにセキュリティー管理を提供することでリスク、コンプライアンスを管理します。また共有リソースの使用率と仮想環境のコストをモニターします。
・オートメーション
仮想リソースの運用管理に伴う複雑さを自動化し、オペレーションに機敏さと低コストをもたらします。
プライベート・クラウドを構築する際、プロセッサーの動的配分に欠かせない技術に「プロビジョニング」があります。プロビジョニングとは、ある機能を使いたいと思ったときに、その機能を自動的に準備し稼働させる仕組みを提供するものです。プロビジョニングは、IBMサービス・マネジメントの重要な要素の一つです。
IBMソフトウエアのTivoliブランドからは「Tivoli Provisioning Manager(TPM)」(図2)と「Tivoli Service Automation Manager(TSAM)」の2種類のプロビジョニング製品が提供されています。
TPMは、あらかじめ準備されたソフトウエアを、ITリソースに自動配信したり、自動始動したりするソフトウエアです。スケジュールしたり、自動構成したりする機能にも対応しています。
TSAMは、さらにスケジューリングをするポータル画面や、ワークロードによって調整する機能などを提供します。これらの機能は、特にIaaSの構築に重要な役割を果たします。