手段を先行させないクラウドの課題解決
ストレージ・クラウド
企業が保有するデータ量は、非構造化データの増加により毎年25%以上のペースで増加すると言われていますが、このような状況に対してクラウドコンピューティングのITリソース要求の変化への対応力が発揮されます。
ストレージ・クラウドとは、インターネットを介して提供されるスケーラブルなストレージサービスと考えられますが、これを大きく2つに分けると、ストレージ・サービスが単独で提供されるスケーラブルなファイルストレージと、サーバーとの組み合わせで提供されるスケーラブルなブロック・ストレージとなります。ここからは両方について見ていきましょう。
ファイルストレージは、NASがその典型ですが、ストレージ・システムがファイル・システムを持ち、サーバーなどの複数の利用者にIPネットワークを介して共用されます。
必要なストレージ容量が増加した場合、NASであれば新たなNASをもう一台追加して対応することが可能ですが、これだと別のIPアドレスを持つNASへの対応がサーバー側にも必要になります。サーバーは物理的なファイルストレージの追加を意識せず、連続的に容量が増加するように見えることが望ましいですが、ストレージ・クラウドはスケーラブルなファイルストレージの提供によりこれを可能にします。
次にブロック・ストレージは、SANがその典型ですが、LUN単位で単一のサーバーにファイバーチャネルなどを介して独占使用されます。
この場合もブロック・ストレージの増設がサーバーから透過的であり、仮想ディスクの連続的な容量増加に見えることが望ましく、スケーラブルなブロック・ストレージがこれを可能にします。
IBMは、前者をSOFS(スケールアウトファイルサービス)、後者をSVC(SANボリュームコントローラー)などで実現しています。
ストレージの容量当たりの価格はテクノロジーの進歩により逓減傾向にあります。したがって必要な都度、上位システムから透過的に容量を増加させられるストレージクラウドは経済的に有利な選択肢であると言えます。
クラウドコンピューティングの実装
開発テストクラウドやストレージクラウドを実装するためのクラウドコンピューティング共用プラットフォームを図2に示しました。主要なコンポーネントについて以下に説明します。
・WEB2.0ユーザーインターフェース
セルフサービス・ポータルの開発に使用されます。
・サービス・リクエスト・マネジャー
申請の承認ワークフローや、サービスインスタンスからのイベントをインシデント管理につなぐ役割をします。
・プロビジョニング・マネジャー
サーバー、ストレージ、ネットワーク、モニターなど、クラウド・コンピューティング環境に必要なITリソースの設定を事前に定義されたプロビジョニング・ワークフローにしたがって行います。
・データモデル
システム構成を管理します。
・ITリソース・プール
ITリソース、ハイパーバイザー、個々の仮想化管理機能などの集合です。
・オペレーション管理製品
実行環境にあるITリソースのモニタリング、ユーザーの利用状況のメータリングを行います。
「PCサーバーの仮想化は行っているが、それとクラウドコンピューティングはどこが異なるのか」という質問が時々ありますが、図2で言えばPCサーバーの仮想化はITリソース・プールのPCサーバー仮想化に関する部分であり、クラウドコンピューティング全体の一部であることが理解できます。
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