競争に勝ち抜くためのクラウド
コスト削減のためのテクニック
コストチューニングのコツについて理解するために、IBM MCCSにおける料金体系をもう少し詳細に紹介していきます。
このサービスは月次ごとに必要なIT資源量を設定、課金することができるため、季節変動や繁忙期など一時的にピークを迎えるような使い方に柔軟に対応することが可能です(図2参照)。
また、開発やテストのため一時的にサーバー資源が必要な場合においても、迅速に対応することが可能です。そして、突然のバーストについても動的に資源追加(使い終わったら削除)、課金が行われるため、必要最低限のコストでIT運営を実現できます。
また、あまり重要ではないサーバーについては、CPU使用率の下限、もしくはそれ以下に設定し、高いパフォーマンスを必要としたアプリケーションや重要サーバーについては、中間もしくは上限に設定することで、ビジネスモデルや売り上げに合致したIT投資を実現することができ、結果として経営に貢献することができます。
そして、あればあるだけIT資源を使ってしまうようなアプリケーションにおいては、パフォーマンス要件に合わせて割り当てるIT資源量を抑制設定することが可能です。
ですから、予算やビジネス状況によって柔軟にITコストをコントロールすることができ、システム全体の最適化を行うと同時に安定稼働を保証できます。
IBM MCCS(クラウド化)へのハードル
ここまで、IBM MCCSが提供するコスト削減や迅速性、拡張性や柔軟性について説明してきました。
それでは、全く何も助走のない状態でいきなりIBM MCCSを利用(クラウド化)することができるのでしょうか。
その答えは、半分「Yes」で半分「No」です。
ハードウエアに直接命令を出すようなプログラムの少ないIAの環境においては、仮想化された環境での制約がほとんどないため、現状のサーバー群をこのIBM MCCSに乗せ替えて利用することはおおむね容易ですし、比較的早い段階でその恩恵を享受することが可能になります。ここまでが「半分Yes」の理由です。
ただし、マルチOSレベルやマルチミドルウエアの環境では何種類ものサービスカタログが必要になり、この管理、メンテナンスだけで相当のワークロードとコストがかかってしまいます。
これではせっかくクラウドの環境に移行できたとしても部分的な効果しか得られず、十分な結果へ導くことができません。ここが「半分No」の理由となります。
加えて、IBM MCCSは企業向けクラウドであることから非常に高いセキュリティーを実現しており、現状、セキュリティーにあまり大きな関心が払われていないようなお客さまの場合、セキュリティーに対する理解や文化を変革しなければならず、そのプロセスや高いセキュリティーレベルが非常に面倒に感じることが危惧(きぐ)されます。
また、IBM MCCSはIT資源と運用が「雲(クラウド)」の中にあるということを正しく理解することが必要です。
「どこに何の機器が何台あって、何を使って何人で運用しているのか」ということではなく、COM(Conceptual Operational Modeling)のフェーズでの要件設計に注力し、SOM(Specified Operational Modeling)やPOM(Physical Operation Modeling)についてはクラウドに任せ(アウトソース)、SLAや契約でこれを管理することが重要です。
これらは簡単なことではありませんが、文化と風土の変革が求められている現代では、IT構造改革のひとつとしてとらえ強く推し進めていくことが重要です。