データベースの災害対策を考える

2009年10月22日(木)
山本 祐介

システムの災害対策の実態

 第4回のテーマは、「データベースの災害対策を考える」。前回の「データベースの障害対策を考える」(http://thinkit.jp/article/1050/1/)の続きです。昨今では災害が増えていることもあって、システムに災害対策を施したいという声は非常に多いのですが、同時になかなか実施までには至らないという声もよく聞きます。

 今回は、多くの企業が災害対策の実施にまで至らない“理由”を解き明かすとともに、現実的な対処方法を解説します。あわせて、直近のトピックとして、最新版の「Oracle Database 11g Release 2」で加わった新機能や、クラウド・ストレージ「Amazon S3」への対応について解説します。

 まずは、災害対策の現状を、いくつかの資料を基に把握してみます。

(a)基幹系システムを複数個所で多重化しているのは約2割
 JUAS(社団法人日本情報システム・ユーザー協会)の「企業IT動向調査2009」(http://www.juas.or.jp/project/survey/it09/)によると、基幹系システムを「複数個所で多重化している」のは、前年度比微増の19%(「1個所で多重化している」は44%)。

(b)基幹系システムの稼働率目標を設定しているのは約6割
 同じくJUASの「企業IT動向調査2009」によると、基幹系システムの稼働率目標を設定しているのは、前年度比微増の61%(99.9%以上の目標=年間停止9時間以内を設定しているのは53%)。

(c)IT予算に占める災害対策費用の割合は約6%
 「CIO Magazine IT投資動向調査2009」(http://www.ciojp.com/contents/?id=00005089%3Bt=5)によると、災害対策関連費用のIT投資に占める割合は、前年度と変わらず5.8%。

 以上の数字を見て、どのような感想を持たれるでしょうか?各リンク先には企業規模別の数値データも掲載されていますので、災害対策を考えるうえで参考になるかも知れません。

 上記(a)のように、基幹システムに限った場合でも、複数個所で多重化している例は2割に過ぎません。この理由としてもっとも多く聞くのが、「費用対効果を考えると複数個所での多重化は難しい(複数個所での多重化は費用がかかりすぎる)」という声です。さらに、上記(c)のように、災害対策単体の費用が浮き彫りになると、費用対効果の観点で災害対策への投資が難しくなります。今回は、この災害対策への障壁について、いくつかの事例を使って解説します。

 以降は、以下のような流れで解説を進めます。

1.データベースの災害対策を検討する
2.Oracle Databaseの災害対策の方法
3.災害対策環境を最大限に生かす
4.Oracle Databaseは画像や文書も災害から守る
5.クラウドストレージでデータを保護する

現状と優先度を把握して対策方法を決定する

■1.データベースの災害対策を検討する

 まずは、データベースの災害対策を検討する3つのステップについて解説します。災害対策を含むBCP(事業継続計画)を検討する際には、ITシステム以外の要素も非常に重要ですが、今回はITシステムに限って解説します。

 データベースの災害対策を検討するステップとしては、以下の様な流れが一般的です。

■1.1.システムの現状を把握する

 個別のシステムについて把握するのと同時に、図1のようなシステムマップを作成し、各業務システム間の関連性・依存性も把握します。

■1.2.各システムが停止した場合のビジネス・リスクを洗い出し、保護・復旧の優先順位を検討する

 優先順位の設定にあたり、まずはRPO(Recovery Point Objective)とRTO(Recovery Time Objective)を各システムに設定します。RPOはリカバリ・ポイントの目標です。どのくらいのデータ消失を許容できるかを示します。一方、RTOはリカバリ・タイムの目標です。どのくらいのダウン・タイムを許容できるかを示します。

 大手食品企業の例(http://www.oracle.co.jp/iSeminars/081203_1100/20081202_SP_BCP.pdf)を紹介します。こちらの資料では、どのように優先順位を決定しているかの詳細が分かります。

■1.3.各システムの優先順位に応じた対策方法を検討する

 対策方法の具体例は次ページ以降で解説しますが、Oracle Databaseが備える機能を利用するのはもちろんのこと、昨今話題になっているクラウド・サービスを利用する選択肢もあります。今回は、クラウド・ストレージ「Amazon S3」を活用する方法についても紹介します。

 アプリケーションを含めた災害対策では、SaaSを利用する方法もあります。例えば、Oracleが提供しているSaaS型のアプリケーションは、米国にあるAustin Data Center(http://crmondemand.oracle.com/jp/why-oracle/ondemand/index.htm)という堅固なデータセンターで運用しています。企業規模が小さくなるほどIT予算に対する災害対策費用の割合が高まる傾向があるので、SaaSという選択肢も有力です。

日本オラクル株式会社
Oracle Direct / Technical Service Group 所属。Oracle Database, In-Memory Solution, 仮想化などの製品を担当し、プリセールス活動やオンラインセミナー(Oracle Direct Seminar: http://www.oracle.co.jp/direct/seminar/)等による情報発信を行う。現在はWindows Server上でのOracle製品活用を推進している(http://www.oracle.co.jp/campaign/mb_tech/

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