VMware vSphereの運用課題

2009年12月4日(金)
前田 正重

サーバー仮想化に対する不安と解説

以下では、サーバー仮想化を導入しようとする際の不安点を明確にし、サーバー仮想化が進んだ現時点においても解決策が確立/確認されていない不安点を洗い出します。

代表的なサーバー仮想化に関する3つの不安点

サーバー仮想化に関する代表的な不安点は、以下の3つです。それぞれについて、すでに不安は少ないという現状を説明します。

(1)サーバー仮想化ではオーバーヘッドが大きく、負荷が高いデータベース・サーバーなどには向かないという不安
(2)複数のサーバーを統合するため、ファイバ・チャネルやネットワークの帯域が不足するという不安
(3)キャパシティ管理や運用の自動化などを実施しなければならず運用が複雑化するという不安

(1)サーバー仮想化ではオーバーヘッドが大きく、負荷が高いデータベース・サーバーなどには向かないという不安

サーバー仮想化環境で動作する個々の仮想マシンに対してはCPU命令レベルで処理を切り替えるためにCPUのオーバーヘッドが発生してしまい、I/O処理が多いサーバー用途には不向きと言われていました。

しかし、2009年に入ってから出荷された最新のCPUを搭載したサーバー機とVMware vSphere 4を組み合わせた場合、オーバーヘッドが非常に小さくなっていることが確認されていて、この不安は解消されつつあります。

(2)複数のサーバーを統合するため、ファイバ・チャネルやネットワークの帯域が不足するという不安

サーバー仮想化によって、1台の物理サーバー機で数十台のサーバー機を集約することが可能になりました。単純に考えると、ストレージ用のファイバ・チャネルやネットワークの帯域が不足するイメージがあります。

しかし、実際には、ストレージに関してはファイバ・チャネルやネットワークの帯域が問題になることは少なく、ディスク装置自体がボトルネックになるケースが多いです。また、データ通信用のネットワークに関しても、1Gビット/秒のネットワークを数本利用すれば帯域不足を回避できます。現時点でも設計上の注意点は多く存在しますが、いずれも回避可能な課題であり、むやみに不安視する必要はありません。

(3)キャパシティ管理や運用の自動化などを実施しなければならず運用が複雑化するという不安

「キャパシティ管理や運用の自動化などにより、結果として運用が複雑化しそうで不安」という声や、「何が変わるのかが分からず不安」という声があります。CTCでは、サーバー仮想化の導入を3ステップで成熟化していくことで、運用へのこうした不安を取り除きます。各ステップごとに運用で考慮すべきポイントが異なりますので、まずは、3つのステップ(ステージ)に関して、説明します。

仮想化環境における3つの成熟度ステージ

仮想化環境を構築する際の成熟度ステージは、以下の3つに分かれます。それぞれについて説明します。

  • ステージ1: 物理集約(統合化)
  • ステージ2: 共同運用体制の確立(標準化)
  • ステージ3: さらなる効率化(最適化/自動化)

ステージ1: 物理集約(統合化)

ステージ1は、統合前に実施したサイジング(容量設計)に基づいた静的なサーバー統合であり、動的なリソース割り当て変更を行わず、論理的(仮想的)なサイロが林立する運用形態と定義します。

具体的には、サーバーを統合するものの、仮想マシンのCPU割り当てを動的に1コアから2コアに変更するといったオペレーションを一切実施しない運用をイメージしてください。

ステージ2: 共同運用体制の確立(標準化)

ステージ2は、以下の様な運用イメージを実装したサーバー統合であり、複数部署のシステムに対してリソースを提供する「マルチテナント型」で、なおかつ、利用システムに対して柔軟にリソース割り当てを変更できるサーバー統合環境と定義します。

・想定運用イメージ:
 - 新規環境の切り出しや、リソース割り当て変更、既存環境の抹消を随時実施できること
 - 定期的な稼働評価により、切り出した環境ごとのリソース割り当てに関してオーバー/アンダー・コミットが把握でき、リソース割り当て変更の意思決定を支援できること
 - 過去の稼働実績をベースに、全体としてのキャパシティを計画可能で、ハードウエアおよびソフトウエアの増強計画を支援できること
 - インシデント管理を実施し、システムの障害/変更要求および作業依頼などを管理できること

ステージ3: さらなる効率化(最適化/自動化)

ステージ3は、運用要員の数に対して管理可能なシステムの数を最大化するために、運用項目に関して、サーバー利用者側への移管(=セルフサービス化)、作業手順のスクリプト化、定型業務や定型ワーク・アラウンドに関する自動実行機能を実装したサーバー統合環境と定義します。

次ページでは、3つのステージごとに検討すべき運用の変化点を明確にして、CTCが準備している処方せんの概要をご紹介します。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
前職にて、汎用機のOS管理や運用支援を経験し、2001年にCTCに入社。当初はGIS製品や地図データの販売に携わる。2006年より、VMware社製品に携わり、現在は、ITインフラの統合に関するソリューション開発を担当し、プライベート・クラウドソリューションの開発に取り組み中。

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