ITサービス管理とコスト最適化
IT財務管理モデルとHPのアプローチ
IT財務管理では、まず、プロジェクト、開発、運用における各種データ、さらには企業および部署の会計データというように、企業内に分散しているIT支出にかかわるデータを統合する作業が必要です。
次に、統合したデータを元にして、プロジェクト・ポートフォリオ管理とIT資産管理を行います。
プロジェクト・ポートフォリオ管理とは、プロジェクトを投資目的に応じて分類し、それぞれの分類での評価項目を用いて「戦略に適合しうるか」「実現可能か」を判断する管理手法です。
IT資産管理とは、ハードウエアやソフトウエアなどのIT資産を対象に、要求、調達から廃棄までの過程(ライフサイクル)を一律に管理する手法です。コストの最適化を容易にし、ライセンス違反などのリスクを下げ、ビジネスの意思決定に役立てることができます。
これらの管理手法によって、資産、ITサービスのTCO(Total Cost of Ownership)を計算すると、ITサービスの財務状況を適正に計測することができます。さらに、部門ごとに発生するITサービスの費用配分を行う配賦も可能になります。
この結果、ITにかかわる帳簿価額や減価償却などの決算報告書が作成できるようになります。また、過去にあった同規模のプロジェクトで発生した資産や人件費を参照することによって、新規プロジェクトを計画立案する際のコスト計算に役立つでしょう。
日本ヒューレット・パッカード(以下、HP)が扱っているIT財務管理の製品は、以下の通りです。
(1)「HP Project & Portfolio Management Center software」:プロジェクト・ポートフォリオ管理
(2)「HP Asset Management software」:IT資産管理
このほか、ダッシュボードとして「HP Decision Center software」(日本では今後リリース予定)、構成管理システム(CMDB)として「HP Universal CMDB software」があります。
プロジェクト・ポートフォリオ管理
(1)以下では、プロジェクト・ポートフォリオ管理について、詳しく説明します。
プロジェクト・ポートフォリオ管理は、人、スキル、予算などの配分、ビジネスの優先順位、ビジネスの目的との整合性といった個々の課題を全体最適の視点でとらえて解決する手段です。
しかし、現実には、ITサービスの各部門で個別最適されていることが多く、例えば、「特定プロジェクトが正当な理由なく優先されている」といった不具合が多々あるようです。
HP Project & Portfolio Management Centerでは、次の各機能によって、プロジェクト・ポートフォリオ管理の手順を自動化するとともに、作業効率を高めます。
(a)要件管理
要件管理は、ビジネス側から寄せられる要件のすべてを収集します。これらの要求はリポジトリ(データベース)に集約され、集められた要求項目を、以下の2つ、「戦略的な要件」(経営上の重要課題など)と、「運用に関する要件」(プロビジョニングやバグ修正、ソフトウエア・アップデートなど)に分類します。
(b)ポートフォリオ管理
ポートフォリオ管理は、要件管理の「戦略的な要件」を対象に、アイディア、提案、プロジェクト、資産などのポートフォリオを、リソースやコストなどの多角的な視点から比較/分析/検討し、プロジェクトの優先順位付けなどの意思決定を行います。
(c)プロジェクト管理
プロジェクト管理は、プロジェクト化が決定した要件について、プロジェクト、リソース、予算、リスク、時間の観点から、継続的に監視します。プロジェクトに関連したプログラム(似た目的をもった複数のプロジェクトのこと)が対象とする範囲の変更、リスク、品質、問題、スケジュール、リソース、コスト管理などにより、統制のとれたIT環境を構築できます。
(d)財務管理
財務管理は、プロジェクトの予算と実際のIT作業コストについて、ポートフォリオに基づいて予算内でのプロジェクトの進行がされているかどうかを、予測やリアルタイム計測によって監視します。
次ページでは、プロジェクト・ポートフォリオ管理に引き続き、IT資産管理と管理ツールのコンソリデーションについて、詳しく解説します。