サーバーの仮想化とバックアップ運用
仮想化環境におけるバックアップ運用を従来の延長で考える
(1)バックアップ・ソフト一式を仮想サーバー上で稼働
図2の左に示した方式は、個々のゲストOS(仮想サーバー)上でそれぞれ別個にバックアップ・ソフト一式(バックアップ管理サーバー、バックアップ・エージェント、メディア・エージェントなど)を稼働させる方法です。仮想化環境のバックアップを考えた場合に、まずは単純に思いつく手法です。
仮想サーバー上でバックアップ・ソフトを動作させるメリットは、仮想化以前の物理サーバーでの運用をそのまま引き継ぐことができることです。仮想化への移行にあたって運用の変更を伴うことがほとんどないので、管理上の課題もなさそうです。
デメリットは、一斉にバックアップ・ソフトが動き出すと、CPUのリソースやバックアップ・デバイスへのI/O負荷などで調整が必要になることです。バックアップ・ソフトの性能が存分に得られないことを考慮すると、時間内にバックアップ処理が終わらないなど、バックアップ・ウインドウ(バックアップを終えるまでに必要な時間)も問題になります。
(2)VMware VCBを用いてバックアップ機能を外出し
仮想化環境のデータ・バックアップでは、従来のバックアップ機能を外出しにして使う方法もあります。仮想化ソフトを提供している米VMwareや、各種物理サーバー向けに従来からバックアップ・ソフトを提供しているベンダーから、こうしたソフトが提供されています。
図2の中央で示した手法は、VMware Consolidated Backup(VCB)を用いたものであり、VCB対応のバックアップ・ソフトと連携して仮想環境のデータをバックアップします。別途用意したサーバー機(プロキシ・サーバー)に、VCBに対応したバックアップ・ソフトのエージェントを導入します。
VCBを使った手法のメリットは、仮想サーバー側にバックアップ・ソフトをインストールして動作させる必要がないことで仮想サーバーのCPUリソースの問題を解決できる点や、バックアップ処理の外出しによって仮想化環境のバックアップを統合化できる点です。
デメリットは、アプリケーションの静止点を確保できないため、データにアクセスしている最中にバックアップすると、データの一貫性を保持できないという課題が発生することです。アプリケーションの種類によっては、難しい選択になるかも知れません。
(3)エージェント以外のバックアップ・ソフトを外出し
図2の右で示した手法は、バックアップ・ソフトが提供するエージェントをゲストOS(仮想サーバー)にインストールして、外部のバックアップ・サーバーを介してバックアップを行う方法です。これは、(1)仮想サーバー上でバックアップ・ソフトを動作させる方法と基本的には同じですが、バックアップ管理サーバーやデバイス・エージェントを外出ししている点が違います。
この方法では、エージェント・ソフトからバックアップ・サーバーへのデータの吸い上げ方(データ転送方法)にもよりますが、仮想サーバーにおけるCPUへの負荷やディスクI/Oの負荷が課題になります。
仮想化環境のバックアップは難しい?
ここまで、仮想化環境のデータを取り急ぎバックアップするという目的に立って、これまでのバックアップ方法の延長線で仮想化環境のバックアップをとらえてきました。ところが、こうした手法はどれも、仮想化環境に適用するには少し課題があるようです。
仮想化環境では、物理サーバーのリソースを合理的かつ効率的に使うことが目的になる一方で、CPUリソースやI/Oリソースに負担をかけるバックアップ処理はどうしても立場が難しい役回りになってしまいます。
サーバーの仮想化によってサーバーの統合ができても、従来のバックアップによってバックアップ管理を統合することには限界があります。また、前回から提言をしているように、復旧(リカバリ)への時間的な課題を考慮すると、旧来のバックアップ・ソフトが提供する機能では十分ではありません。
それでは、前回取り上げたCDPではどうでしょうか?
次ページでは、仮想化環境のバックアップに対するCDPを使った解決案を取り上げます。