Java EEの動向と最新機能

2010年1月7日(木)
原口 知子

今後のJava EEの動向

最新のJava EE 6では何が変わっているのでしょうか。Java EE 6の特徴としては、以下の3つが挙げられます。

  • 軽量化
  • 拡張性
  • 開発容易性

これまでJava EEは機能追加と拡張を繰り返してきましたが、仕様が肥大化してきたことは否めません。そこで、新しく採用されたProfileでは、軽量化を実現するために、Java EEフル・スタックではなく、必要な機能のみを採用することが可能となっています。

Java EE 6ではまずWeb Profileが策定され、Webアプリケーションに必要な機能を定義しています。Webアプリケーションと言っても、HTTPによる対話の管理だけでなく、トランザクション管理、セキュリティ、永続化も重要な要素として定義されており、ServletやJSPだけでなく、EJB LiteやJPAといったAPIも含まれているのが特徴です。これらはすべて.warファイルにパッケージされます。

また今後は、Web Profile以外のプロファイルも登場することでしょう。同時に、古くて使われなくなったAPIについては、今後段階的に削除することも検討されています。これはプルーニングと呼ばれており、現時点ではEJB 2.xのエンティティBeanやJAX-RPC(Java API for XML - based RPC)が候補に挙がっています。これらのAPIを使っている開発者は、今後のJava EEの動向に注意する必要があります。

開発容易性はJava EE 5に続く重要なテーマとなっており、Java EE 6ではさらに多くのアノテーションを提供し、コード量の削減を実現します。JPA 2.0ではクエリー言語であるJPQL(Java Persistence Query Language)が強化され、新しく追加されたBean Validationでは、アノテーションを使用した入力値の検証機能が提供されています。ほかにも、悲観的ロック(頻ぱんに更新がかかるレコードを対象に、参照時にロックをかける手法)のサポートやレベル2キャッシュの仕様追加などJPA 2.0には多くの機能拡張が含まれています。

さらに、WebのフレームワークであるJSF(JavaServer Faces)と、EJB 3.0、JPAを統合するための仕様として、Web Beans 1.0(Contexts and Dependency Injection)が追加されました。2つのコンポーネント・プログラミング・モデルが1つに統合され、コンテキストやライフサイクルがコンテナで管理されます。依存性注入もサポートされ、開発生産性の向上が期待できます。

シンプルなWeb連携手順であるRESTful WebサービスをサポートするJAX-RSが追加されたことも重要です。Java EE 5のJAX-WSはSOAP(Simple Object Access Protocol)によるアクセスがメインであり、REST(Representational State Transfer)対応についてはローレベルのAPIしか提供されていませんでした。JAX-RSではアノテーションを利用したPOJOによる開発が可能です。今後はJava EE環境でもREST対応のWebサービスが容易に作成できるようになります。

WASでは、「Apache OpenJPA」に基づくJPA 2.0実装のαコードをWebに公開しています。興味がある方はぜひ試してみてください。

今後の動向として、OSGi(Open Services Gateway initiative)にも注目してください。OSGiはJavaモジュールの動的追加/更新/削除の仕組みを提供するもので、「OSGi Alliance」によって仕様が策定されています。

OSGiフレームワーク

実はWAS V6.1やEclipse 3から、内部的にOSGiを採用しています。2007年には、このOSGiの技術をエンタープライズ・アプリケーション開発に応用する目的で、OSGi Alliance Enterprise Expert Group(EEG)が結成されました。EEGは、OSGiからJava EEへのアクセス方法を検討し、Springで採用されていたアセンブリ・モデルを標準化してBlueprintコンポーネント・モデルを定義しました。2009年9月にリリースされたOSGi 4.2の仕様には、このBlueprintが含まれています。

OSGiでは、モジュール(JARファイル)は「バンドル」と呼ばれ、バンドル単位で動的なロードやアンロードが可能になります。バンドルの構成情報や接続情報は、マニフェスト・ファイルにメタデータとして記述されます。OSGiフレームワークを使用することにより、アプリケーション・モジュールのホット・デプロイやバンドルのバージョン管理が可能になります。複数のバージョンを同時にアクティブにすることも可能です。

オープンソースのOSGi実装としては、「Eclipse Equinox」や「Apache Felix」が知られていますが、WASでは「Apache Incubatorプロジェクト」の「Aries」を採用したαコードをWebに公開しています。こちらもぜひお試しください。

次ページでは、AjaxやSOA、音声統合など、用途に応じた機能拡張フレームワークについて、実例を挙げて紹介します。

日本アイ・ビー・エム株式会社
2001年よりWebSphere事業部にてWebSphere Application Serverの技術支援を担当。WebSphere製品の提案活動や構築支援の他、セミナーの講師やWeb(http://www.ibm.com/developerworks/jp/websphere/)の運営など幅広く担当している。

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