ユニファイド・コミュニケーションへの進化

2010年2月5日(金)
荒牧 大樹

VoIPからIP電話機へ

VoIPゲートウエイの考え方がさらに進化して、PBX自体を入れ替える手法としてIP電話が発達しました。IP電話の呼制御装置のアプローチとしては2種類あります。PBXベースのIP-PBXと、サーバー・ベースのunPBXです。

IP-PBXは、従来のPBXにIPアダプタを接続して利用する形態であるため、安価に始められるメリットがありますが、電話機としての利用からは抜けられませんでした。一方、unPBXはいわゆるサーバー・タイプであり、サーバーがPBX(呼制御)機能を提供します。

IP-PBXの場合、IP電話機が公衆網に直接接続することから、公衆網との接続性やIP電話機に変わった時の操作性の変化が課題とされました。一方、unPBXの場合は、サーバーの信頼性の問題などが課題とされました。

音質も、VoIPのゲートウエイ機器間の品質を確保すればよいわけではなく、電話機から電話機へのエンド・ツー・エンド(End-to-End)の品質確保が求められ、ネットワーク・スイッチもQoS機能を提供するタイプを使って音質を確保するようになりました。

同時期に、通信事業者(通信キャリア)からも、企業向けIP電話サービスの提供が開始されました。サービスがリリースされた当初は大きな話題となりましたが、近年は縮小傾向にあるようです。

IP電話導入のメリットとして、以下の点が挙げられます。

1. 設定作業の自営化

旧来、電話機の設定はコマンド・ライン・ベースで行う必要があったため、PBX業者に依頼しなければならず、作業費が発生していました。一方、サーバー・ベースになるとGUI(Graphical User Interface)で設定を容易に実施できるため、ユーザー企業の情報システム部/総務部みずから設定作業をこなせます。

2. PBXの一元化

IPで通信できる範囲であれば呼制御の装置はどこに置いてもよいので、それまで各拠点に置いていたPBXを1つにできます。これにより、拠点ごとに支払っていた管理運用費を一元化して、コストを削減できます。

3. 電話機とPCの2重配線の一元化

従来は、電話機用とPC用とで、配線が2重にされていました。IP電話に移行すれば、PCの配線に一元化でき、配線コストを削減できます。

以上が、IP電話の主なメリットです。

IP電話では、音声とアプリの連動もより簡単になり、CTI(Computer Telephony Integration)技術を利用したクリックtoコールのアプリや着信時のポップアップ・アプリの導入が進みました。しかし、IP電話機の主眼は、コスト削減や、従来のPBXと遜色(そんしょく)のない機能を提供できるかどうかだったと思います。

IP電話機からUCへ

IP電話の音声だけでなく、音声通話まわりのリアルタイム・コミュニケーションを全般的に扱うのがUCです。

UCでは、働く場所が机からワーク・スペースへ、競争あるいは共同作業の対象がローカルからグローバルへ、応答時間の要求が翌日から即時へと刻々と変化する現代において、コミュニケーションを改善するツールとして登場しました。

UCが扱う領域は、電話機の音声だけにとどまらず、チャット(テキストを使った会話)、プレゼンス(在席確認)、Web会議、ビデオなどの複数のツールを含んでいます。

誤解されがちですが、ただ単にチャット、プレゼンス、Web会議などの各製品をひとくくりにしたというだけでなく、互いのツールが連携するように設計されています。これにより、今までWeb会議の使い方が分からなかった社員でも直感的に複数のツールを使いこなせるようになっています。

UCは、今までのPBXベースの考えから離れて、ソフトウエアに主眼が置かれています。これまでの伝統的なPBXベンダーとは違った、米Microsoftや米IBMなどのソフト・ベンダーもUCへの参入を発表しています。

UCで使用する端末の種類も、デスクトップの電話機、PC、ビデオ端末、携帯端末などさまざまです。さらに、UCを使う環境も、会社の机、移動中、出張中とさまざまなです。各ベンダーともに「Any Place Any Device」(どこでも、どの機器からでも)という目標を掲げています。

これまで説明したVoIPとIP電話は、IP化によるコスト削減が大きな目的となっていました。一方、UCでは、今まで主眼とされていたコスト削減よりも、社員の生産性の向上を図ることを目的としています。

これらの状況から、UCは電話機を導入するのとは別の視点に立つ必要があると言えます。次ページでは、UCの導入に向けて考慮すべき点を解説します。

ネットワンシステムズ株式会社
2001年よりIP電話機構築に関わる。国内の大手金融や製造系の大規模なUCネットワーク構築に於いて、先端UC技術をいち早く取り入れてきた。メーカー以外の企業のエンジニアとして、UC技術の最高資格である「CCIE Voice」を国内で初めて取得。現在はネットワンシステムズ株式会社にて、UC製品の先端技術サポートを行っている。

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