ファイル・サーバーの課題を解決する

2010年2月17日(水)
南里 修一

性能限界が高いクラスタ型ファイル・サーバー・アプライアンス

(1)クラスタ型ファイル・サーバー・アプライアンスを用いて、ファイル・サーバー全体をリプレイスする

ファイル・サーバーが1台1台で処理できる性能には限界があります。このため、これまでのファイル・サーバーでは台数の増加とアイランド化がつきもので、互いに独立した運用を強いられていました。この問題を解決する方法として、クラスタ技術を採用したファイル・サーバー・アプライアンスが登場しました。

クラスタ(房)とは、複数の機器を組み合わせ、1つの巨大かつ高スペックなシステムとして利用する技術のことです(サーバー単体でCPUなどの処理性能を向上させる方法を「スケール・アップ」と呼ぶのに対して、クラスタによる疎結合の性能向上を「スケール・アウト」と呼びます)。

近年、ファイル・サーバーにもクラスタ技術を搭載した製品が登場しています。クラスタ型アプライアンスは、これまでのファイル・サーバーよりも高い拡張性を持っています。容量やパフォーマンスが不足した場合に、機器を追加するだけで、全体に影響を及ぼすことなくシステム増強ができます。

例えば米Isilon Systemsの「Isilon IQシリーズ」を利用すると、クライアントからのアクセスは自動的に別々のノードに分かれますが、複数のノードで単一のファイル・システム(シングル・ファイル・システム)を形成しているため、同一のファイルを参照できます。

図2-1のように、Isilon IQシリーズは最小構成の3台からスタートし、ノード数を増やせば増やすほど容量と性能を同時に拡張できます。ノード数は最大で144ノード(2010年2月現在)で、ペタバイト以上までファイル・システムを増設できます。

加えて、シングル・ファイル・システムであることから、導入後にストレージの構成を変更する必要がありません。このため、管理者はストレージの構成管理からも開放されます。

ファイル・サーバー・システム全体のリプレースが可能な場合は、クラスタ型ファイル・サーバー・アプライアンスの採用が効果的でしょう。

複数のファイル・サーバーを仮想的に統合するアプライアンス

(2)ファイル仮想化アプライアンスを用いて、既存サーバー資源を活用しつつ仮想的に統合する

すでにファイル・サーバーが複数台設置されているケースでは、ファイル・サーバー全体をリプレースするのは、既存資産の有効利用やコストの関係から難しくなります。

この場合には、既存のファイル・サーバーを残したまま仮想的に統合するアプライアンス製品を利用することで、問題を解決できます。

ファイル仮想化アプライアンスは、各ファイル・サーバーの共有情報やファイル・データ情報を一元管理します。これにより、ユーザーはファイルがどこにあるのかを意識することなく、あらゆるファイルにアクセスできるようになります。

例えば、米F5 Networksの「ARX」は、ファイル・サーバーにアクセスできるネットワーク上に設置することで、ファイル・サーバーを仮想的に統合できます。

図2-2のように、ARXはファイル・サーバー統合の機能に加え、ファイル・サーバーの負荷を均等に分ける負荷分散機能や、アクセス頻度の少ないファイルを安価なサーバーに自動的に移動する階層化(ティアリング)機能、サーバー間のデータ移行(マイグレーション)を行う機能も持っています。

さらに、バックアップ管理もできます。DR(災害対策バックアップ)を実施する際には、バックアップ拠点側にARXと大容量ファイル・サーバーを設置します。こうすることで、バックアップ拠点側のファイル・サーバーに対してファイル単位の非同期バックアップが行えます。

資源の有効活用とユーザビリティを両立できることから、既存のファイル・サーバーが複数存在する場合は、ファイル仮想化アプライアンスによる統合が適しています。

次のページでは、ファイル圧縮アプライアンスとデータ・バックアップについて解説します。

東京エレクトロン デバイス株式会社
これまでSEとしてサーバー構築やインフラ運用設計、SANストレージやファイルサーバーの設計を経験し、現在はCN事業統括本部ソリューション推進グループに所属。ストレージやバックアップ製品のプリセールスエンジニアを担当している。

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