ネットワーク全体から見る「ルーター超入門」
ルーターの基本動作「ルーティング」
ここからは、ルーターの基本動作であるルーティングについて解説します。ルーティングとは、パケットを目的のネットワークに転送する機能です。
現実のネットワークは、図2-1のように、あて先端末と送信元端末が異なるネットワークに接続されている場合もあれば、同じネットワークに接続されている場合もあります。
あて先端末と送信元端末が異なるネットワークに接続されている場合は、その端末間には、必ずルーターが介在します。その間に位置するルーターは、送信元端末が送信したパケットがあて先ネットワークに届くまでの、最適なルート(経路)を判断します。ルーターは、その最適なルートの情報に基づいて、パケットを転送します。この機能がルーティングです。
ルーターのパケット転送処理
ルーターがパケットを転送するためには、必要なルート情報をルーティング・テーブルに登録しておく必要があります。
ルーターは、パケットを受け取ると、そのパケットに書かれているあて先IPアドレスからルート情報を検索し、該当のあて先が見つかれば、そのあて先が接続されているルートにパケットを転送します(図2-1)。また、該当のあて先が見つからなければ、パケットを破棄します。
ルーティング・テーブルを登録/変更する3つの方法
ルーターのルーティング・テーブルにルート情報を登録するためには、次の3通りの方法があります。
- 直接接続
- スタティック・ルート
- ルーティング・プロトコル
直接接続
(1)直接接続による登録とは、自身が直接接続しているルーターのインタフェースにIPアドレスを設定することで自動的にルート情報が登録されることを差します。例えば、図2-2では、ルーター2を基軸として、「192.168.2.0」と「192.168.3.0」のルート情報が自動的に登録されます。
しかし、隣接していないルーターのルート情報、つまり「192.168.1.0」と「192.168.4.0」に関しては、スタティック・ルート(静的なルート)、またはルーティング・プロトコル(ルート情報交換プロトコルによる動的なルート)によってルーティング・テーブルに登録する必要があります。
スタティック・ルート: 手動登録
(2)スタティック・ルートは、ネットワーク管理者がルーティング・テーブルを編集し、ルーティング情報を1つひとつ登録していく方法です。つまり、ネットワーク管理者が思い通りにパケットのルートを決められます。
スタティック・ルートのメリットは、次に説明するルーティング・プロトコルと比較して、ルーターやネットワークに負荷がかからない点です。
一方、デメリットは、運用に手間がかかる点です。ルーターを1台設定変更するたびに、ほかのルーターにも変更作業が発生します。さらに、ネットワークが拡大すると、ルート情報の管理、つまりルーティング情報の管理が煩雑になります。
ルーティング・プロトコル: 自動学習
(3)ルーティング・テーブルを登録/変更するもう1つの方法は、ルーティング情報をほかのルーターから自動的に取得するというものです。ルーター同士が自動的にルーティング情報を交換し合うため、トラブル発生時にルートを自動的に切り替えられるといったメリットがあります。また、特に大規模ネットワークではルーティング情報が膨大な量になるため、運用面でも有効です。
しかし、良いことだけではありません。先ほど説明したスタティック・ルートと違い、ルーター同士が定期的にルーティング情報を交換することで、ネットワークに負荷がかかります。さらに、ルーター自身がルーティング・プロトコルを定期的に処理しなくてはなりません。
なお、ルーティング・プロトコルにもいくつか種類があります。RIP(Routing InformationProtocol)やOSPF(Open Shortest Path First)などがよく使われます。また、通信事業者がよく使うBGP4(Border Gateway Protocol version 4)もルーティング・プロトコルの1つです。
次ページでは、ルーターが備えるセキュリティ機能と、運用時の冗長構成について解説します。