初期のBIアーキテクチャ

2010年3月2日(火)
平井 明夫

BI登場の背景

BI(ビジネス・インテリジェンス)という概念は、このような時代の末期、すなわち、1989年に登場しました。この年、当時、米調査会社Gartnerのアナリストであったハワード・ドレスナー(Howard Dresner)氏は、企業で蓄積されたデータを検索・集計・分析することでホワイトカラーの生産性を上げるという概念を提唱し、その概念をBIと呼びました。

これは、具体的な新しいシステム・アーキテクチャというものではなく、当時、IT部門に100%依存していたデータ処理の業務を、データの消費者であるエンド・ユーザーが自ら手がけることで、生産性の向上や意思決定の迅速化を目指すという極めてビジネス的な観点からの提言でした。

とはいえ、このような提言を現実的なものとしてマーケットが受け入れることができたのは、背景に当時のシステム・アーキテクチャが大きな変化の時代を迎えていたことがあげられます。この変化こそが、1980年代後半から1990年代にかけての、C/S(クライアント/サーバー)型のアーキテクチャの登場です。

Windows 3.1が発売された1992年ごろからPCの性能は飛躍的に向上し、それまでワード・プロセッサやスプレッドシートが中心だった用途が、一般のアプリケーション開発や業務アプリケーションの実行にまで一気に拡大します。

また時期を同じくして、Oracleに代表されるRDB(リレーショナル・データベース)製品の充実、RISCチップを搭載した高速でかつ安価なUNIXサーバーの登場、さらには、高速LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)の企業内への普及が見られました。

結果として、少数のRDBサーバーと多数のPCをLAN経由で接続し、データの管理をサーバーで、アプリケーションの実行とユーザー・インタフェースの制御をクライアントPCで行うというC/S型アーキテクチャが確立します(図2-1)。

このようなC/S型アーキテクチャを使用したシステムの導入は、エンド・ユーザーがデータ処理業務を、IT部門任せではなく、自らの手で行うというビジネス的なトレンドの中で行われました。

このトレンドは、当時、EUC(エンド・ユーザー・コンピューティング)/EUD(エンド・ユーザー・デベロップメント)と呼ばれました。これはまさにハワード・ドレスナー氏が提唱したBIの概念に当てはまるものであり、必然的に最初のBIシステムの普及もこのC/S型アーキテクチャの台頭とともに進んだのです。

C/S型のBIアーキテクチャ

さて、それでは、C/S型アーキテクチャのもとで普及した最初のBIシステムは、どのようなアーキテクチャを持っていたのでしょうか。

この時代に構築された標準的なBIシステムは、DWH(データ・ウエアハウス)とQ&R(Query & Reporting)ツールから構成されていました(図2-2)。

DWHとはRDBに、業務システムから抽出したデータを時系列(ヒストリカル)に蓄積したもので、その多くはUNIXサーバーを使用していました。エンド・ユーザーは、このDWHに対してQ&Rツールを使用して、RDBやSQLの知識なしにデータの検索(Query)とレポート作成(Reporting)が行えるというのが、このシステムの最大のメリットでした。

この時代に登場した主なRDBとQ&Rツール製品は図2-3のとおりです。

株式会社アイ・ティ・アール リサーチ・フェロー

外資系ソフトウェアベンダーやITコンサルティング企業において、20年以上にわたり、BIツール製品のマーケティング、BIシステムの導入支援に携わる。2013年よりITRのリサーチ・フェローとして活動。現在は、事業企画コンサルタントとしてIT企業の新規事業立上げ、事業再編を支援するかたわら、ITRアカデミーにおいて、データ分析スキルコースの講師を務めるなど、データ分析を中心としたテーマでの講演・執筆活動を行っている。

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています