現在のBIアーキテクチャ
RDBにおける大量ユーザー・サポート
一方、C/S型アーキテクチャにおいてデータ管理の役割を担ってきたRDBの位置付けは、3層型アーキテクチャにおいても不変でした。しかし、C/S型アーキテクチャから3層型アーキテクチャへの移行に伴い、イントラネットおよびアプリケーション・サーバー経由でデータベースに接続されるユーザーの数は飛躍的に増大しました。このため、RDBにおいては、大量ユーザーをサポートするための機能強化が必須となりました。
このような機能の1つに、「コネクション・プーリング」がありました。この機能は、あらかじめ一定数のセッションを確保しておくことで、大量の接続要求があっても、セッションの確立・切断に伴う負荷を軽減し、性能の低下を防ぐ機能です。ちなみに、Oracleデータベースでは、1997年に出荷されたOracle 8から、この「コネクション・プーリング」機能が実装されました。
3層型のBIアーキテクチャ
さて、それでは、3層型アーキテクチャの登場により、BIシステムのアーキテクチャはどのように変化したのでしょうか。
C/S型アーキテクチャから3層型アーキテクチャへの移行に伴い、アプリケーションの実行をアプリケーション・サーバーが、ユーザー・インタフェースの制御をWebブラウザが担うようになったことは既に述べたとおりです。C/S型のBIアーキテクチャの時代に隆盛を誇ったQ&Rツールもまた、この変化の影響を大きく受けました。
具体的には、検索のためのSQLの組み立てから、レポートの表示・印刷のための書式の設定・保存にいたる処理の大部分は、アプリケーション・サーバー上で実行されるようになり、一部のユーザー・インタフェースの制御だけがクライアントPC上のWebブラウザで実行されるようになりました(図2-1)。
Q&Rツールの変化
しかし、この時代にQ&Rツールに起こった変化は、単なる3層型アーキテクチャへの移行には止まりませんでした。なぜなら、3層型アーキテクチャへの移行が発生した背景には、より大量のユーザーのサポートというビジネス課題の解決があったからです。
すなわち、C/S型のBIアーキテクチャの時代には潜在的でしかなかった、「パワー・ユーザー以外のすべての企業内ユーザーにBIシステムの利用を拡大する」というニーズが、3層型アーキテクチャの登場により、現実的なものとなったのです。
具体的にQ&Rツールが受けた影響とは、次の2つでした。
- Webレポーティング機能の追加
- ダッシュボード機能の追加
(1)Webレポーティング機能
まず、Webレポーティング機能から見ていきましょう。Webレポーティング機能とは、パワー・ユーザーが作成したレポートを、Webブラウザ経由で多数の一般ユーザーが閲覧できるようにする機能です。
C/S型のBIアーキテクチャの時代には、この一般ユーザーは、パワー・ユーザーがQ&Rツールにより作成したレポートを、ファイルまたは印刷された紙として受け取っており、直接的なBIシステムのユーザーではありませんでした。
しかし、3層型のBIアーキテクチャのもとでは、一般ユーザーはWebブラウザを使用して直接BIシステムにアクセスし、作成済みのレポートを閲覧するようになりました。
また、結果として、Q&Rツールから引き継がれたパワー・ユーザー向けの機能は、この時代には、一般ユーザー向けレポートの開発ツールとしての役割も担うことになりました。
従って、一部の企業においては、もともとはパワー・ユーザー向けであったレポート作成の機能を、IT部門が開発者として使用するようになりました(図2-2)。さらには、一部製品においては、パワー・ユーザー向けとレポート開発者向けの機能を明確に分離するものも現れました。