今後のUnified Communications
企業間接続ネットの変化
これまで解説してきた多くのUCツールは、現状では企業の内部だけで使われています。しかし、実際のビジネス環境では社外とのコミュニケーションにかなりの時間を費やしています。そして、現在のところ、企業間コミュニケーションの手段は、相手先への訪問、電話、メールという、たった3つの手段に限られます。
電話は、この数十年間、機能の拡張がほとんど行われていません。さらに、公衆網に出ていく際にはIPで接続されていないことが多いのが現実です。このため、企業間通信の電話部分をIPベースに変えることによって、企業間コミュニケーションの拡充が期待できます。
企業間をIP接続する手段としては、インターネット網が適切です。専用線と比べ、費用面で優位であるほか、異なる企業間を容易に接続できます。簡単に言うと、企業向けSkypeのイメージです。インターネット上に音声を流すので、パケット・ロスや遅延が少なく、かつ音声を秘匿するコーデックの採用が必要です。
企業間を接続するIP通話では、メールの署名のように名刺情報ぐらいは送れるようになる必要があると考えます。音声をIP化したのに、現状のように発信者の電話番号しか情報が送れないのは奇妙な話だからです。
もちろん、Skypeとは異なり、企業が利用するツールになるので、セキュリティやポリシーの確保が重要です。
公衆網の場合は、攻撃者に課金が発生するため、攻撃には費用負担の覚悟が必要でした。しかし、IPベースの仕組みを使うと、攻撃者はほぼ無料で発信処理ができるため、SIPスパムが大量に発生する可能性があります。そこで、SIPスパムを防ぐ仕組みや、お互いを認証する仕組みが企業間の利用には必要となると考えられます。
SIPアドレスをベースとしたIPでの音声コミュニケーションが主流になるとしても、名刺にSIPアドレスを刷ってSIPアドレス・ベースで音声通話を行うようにはならないと考えられます。電話番号をSIPアドレスに変換する技術として、IETFで提案されているp2psipのテクノロジがキーとなると予想されます。
端末の進化
モバイル
モバイルの音声IP化は、すぐそこまで迫ってきています。例えば、米AT&Tは2009年末、3G回線(第3世代の携帯電話インターネット)の上でVoIP(Voice over IP)を使うことを許可しました。
VoIPにより、電話をかけても電話料金がかからないためコスト面で優位であることはもちろんのこと、着信をトリガーにCTI(Computer Telephony Integration)アプリケーションを動作させることができるので、とても便利です。
現時点では、スマートフォンを使っても発信者番号をキーとしてCRM(顧客関係管理)アプリケーションのSalesforce.comを検索することはできません。将来的には、CRMシステムとの連動動作も実現するだろうと考えています。
固定電話
固定電話機は、限定的ながら進化します。
PCとの連動がキーになりますが、PC上での電話操作が一般的になった場合には、機能を音声通話に限定した装置として固定電話機を有効活用できます。
PCのリソースに左右されるソフトフォン(電話端末ソフトウエア)は、日常的に使うにはつらい場合もありますし、不安な面があるからです。
音声は固定電話機に処理させて、音声処理以外の電話操作をPCに任せるという使い方が有効です。このスタイルであれば、PCに問題が起こった場合でも音声通話を確保できます。
固定電話機は、単体でも進化しています。簡単に言うと、GPS(全地球測位システム)以外で携帯電話に付いている機能は、固定電話機に実装されていて当然です。Bluetooth機能、ヘッドセット、カメラ、タッチ・スクリーンなどです。Ethernet(イーサネット)の配線をしたくない場合は無線LANの使用もありえます。
次ページでは、ソーシャル・ソフトウエアとビデオの進化について解説します。