大規模化していくデータ・ウエアハウス

2010年3月4日(木)
TIS株式会社 サービス&コミュニケーション事業部 ソリューションチーム

経営の高度化とグローバル化が重要に

(1)経営の高度化

厳しいビジネス環境の変化から、各企業は徹底的なコスト削減戦略に取り組んできました。ところが、最近ではコスト削減の限界が見え始め、一転して売上重視の戦略に変わってきたと考えられます。

社団法人日本情報システム・ユーザー協会の「企業IT動向調査2009」を見ると、大企業の経営企画部門がITで実現したいことの第1位は「IT基盤整備」ですが、2位と3位はそれぞれ「経営情報システム」と「営業支援システム」となっています。

2位に入った「経営情報システム」では、ERP(統合業務パッケージ)などのデータを基に、管理会計やバランス・スコア・カード、インフルエンス・ダイヤグラムによるKPI(重要業績評価指標)設定の進ちょくなどを、DWHとビジネス・インテリジェンス(BI)・ツールの組み合わせで実現するケースが増えてきています。

これらは、サマリーのデータからすぐさまその場でドリルダウンできる形態が多く、その場で“数字”ベースの原因追及を行えるよう、Rawデータ(生データ)を扱えるようになっています。データの粒度として、より細かいレベルで扱えることが必要になっています。

3位の「営業支援システム」は、DWHとBIの組み合わせで実現するケースが増えてきています。かつてのSFA(Sales Force Automation)ツールは日報管理の領域に止まっていましたが、近年の営業支援システムは、“数字”を使った高度な戦略システムとして位置づけられています。取引収益性を考慮して顧客のセグメンテーションを行ったうえで、効率を追求した営業戦略を立てられるようになっています。

IR(投資家向け情報提供)でも、非常に重要な要素として“数字”が位置づけられています。SFAなどのパイプライン情報と組み合わせて、Forecasting(予測)の精度を向上させる必要があります。金融業や卸売業だけでなくネット企業においても、顧客の取引データやプロファイリング情報を生かして次回の売り上げにつなげるマーケティング・サイクルの短縮化に取り組んでいます。

このように、厳しいビジネス環境の下で経営はより戦略的になり、そこに汎用的なITソリューションとしてDWHの活用機会が生まれています。さらに、今まで活用していたデータの粒度よりも細かいデータを活用する場面が増えてきていることが、DWHが扱うデータ量の増大につながっている要因となっています

(2)グローバル化

グローバル化も、経営の高度化の一環です。

日本はもともと輸出産業国です。ただ、各企業が日本で作ったものを海外に輸出をするというモデルは少なくなりました。各国の企業の競争力も上がり、海外の安い労働力を使ってのコスト競争力の強化や、自社の企業に有利な商習慣への対応の必要性などの要因により、海外に拠点を構える必要が出てきました。

単に海外拠点を置いただけの「国際化」から、海外拠点のリソースを使って生産する「グローバル化」に変えた戦略は、今や常識化の域に達しつつあるのではないでしょうか。このことは、日本企業の対外直接投資動向の増加からも見てとれます。今や海外現地法人の売上高は、日本のGNP(国民総生産)の半分にも迫る勢いです。

グローバル化した日本企業が増えることで、海外の商習慣に合わせるために、扱うデータの種類が増えていきます。さらに、欧米流の厳しい管理基準から、より明細なデータが求められることになり、管理されるデータは激増し、DWHの容量拡大につながっています。

企業統合/提携への対応や法令順守が重要に

(3)企業統合、提携の増加

厳しいビジネス環境によって市場のシュリンクと寡占化が進んだ結果、勝ち組企業が負け組企業を傘下に収めています。「規模の経済」を生かすだけでなく、グローバル化を視野に入れた戦略を優位に進めるためにも、企業統合が大規模なレベルで進んでいます。

企業統合は、1993年以降増加の一途をたどりました。2005年以降は商法改正も手伝って、年間2500件以上の企業統合が行われ、もはや経営戦略の常識となりました。企業統合が行われると、取り扱うデータ量は増大します。また、短期間に全体最適を目指すうえで、どこが採算を取れているかを可視化する上でも、データ・マネジメントが活躍します。

企業統合の増加は、単純に企業内データの増加を招くだけでなく、経営の高度化を目指す1つの戦略であることから、DWHが活躍するケースが大いに増えていきます。

(4)法規制などによる対応

法規制や情報開示対応によってデータが増大する要因は、2つあります。1つは法規制の緩和による増加、もう1つは法規制の強化による増加です。

法規制の緩和によるデータの増加は、例えば一定期間保持が必要な伝票類の紙媒体が電子データに置き換わり、法廷証拠となる写真がデジタル・データに置き換わることで激増したことは、非常に理解しやすいと思います。

法規制の強化も、データ量激増の主要因です。個人情報保護法やSOX法などの下、速やかにデータを証拠として提出し開示するためにデータのすべてを一定期間保管することが、データ増加の大きな要因となっています。

一定期間だけでなく、開示するデータは一定時間内で抽出できなければならず、さらにデータが改ざんされたものではないことの証明も必要になるというコンプライアンス対応は、管理データ量の急増という現象を招きました。

ここまで解説してきたように、DWHの大規模化は、企業内のデータが増大してきたことにあり、その主要因は現在のビジネス環境における市場のシュリンクと寡占化が引き起こしていると考えられます。

ビジネス環境の下、企業は経営の高度化への対応を迫られる一方で法規制の緩和と強化を招き、その手段としてデータを最大限活用する仕組みにDWHが利用され、活用とともにDWHが大規模化していったのです。

次ページでは、DWHの大規模化が生む課題について解説します。

著者
TIS株式会社 サービス&コミュニケーション事業部 ソリューションチーム
戦略の高度化に向けたシステム支援を専門にしているチームです。我々はDWHやBIを使いビジネスロジックをいかに既存のビジネスに活かしていくか、営業の高度化におけるSFAや、ポイントカードに代表されるFSPなどとDWHやBIの連携により、お客様の営業支援に役立てられればと考えております。
03-5402-2086/sales3-info@mbgx.tis.co.jp

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