選択肢が広がるBI製品

2010年3月8日(月)
IT Leaders編集部

独自技術を生かして使い勝手をアピール

分析時の応答性などで独自の技術力を訴求する製品もある。例えば1989年の設立から一貫してBI市場に特化しているマイクロストラテジーは、 RDBにおけるキャッシュ技術に強みを持つ。独自のアルゴリズムで多次元DBのようにデータをキャッシュしておき、できるだけDBサーバーにアクセスせずに検索すべきデータをフロントツールに返すことで高速化を図っている。最新製品は「MicroStrategy 8」で、データ統合からダッシュボード、各種分析ツールなどを取りそろえる。

DBの高速処理ではサイベースも目立つ存在だ。同社のSybase IQはDWHの用途に特化したDBである。RDBで一般的なレコード単位のテーブル構造とインデックス作成の組み合わせで管理するのではなく、カラム単位でデータを管理することを特徴とする。データ検索時、レコード単位だと不要なカラムもストレージからメモリーに読み込んでしまうため処理が重くなりがちなほか、メモリーやCPUパワーなど余計なリソースも消費してしまう。Sybase IQはこの問題を回避しており、迅速なレスポンスを売りする。

フロントツールとして一般的なBIツールが使えるほか、関連会社アイエニウェア・ソリューションズが「AnswersAnywhere」を提供。自然言語や文脈解析機能を搭載しており「今年上半期の地区別の売り上げを見たい」といった入力テキストから、データの検索/抽出処理ができる。

2008年に国際市場に登場したエー・エス・ジェイの「ADVISOR」は、オンメモリー処理による高速な分析と可視化を特徴とした製品だ。「一昔前に比較するとメモリーは格段に安くなり、個人のPCでさえ数GBを搭載する時代。一般的な業務のデータなら、このメモリー内で十分な分析処理ができる」(百瀬公朗 最高技術責任者)。

スタンドアロンで使う場合もサーバーとWebブラウザの組み合わせで使う場合も、まずは業務システムからCSV形式などでデータをメモリー上に読み込む。画面には、最初は表形式で表示されるが、ボタンを1つ押せば立体グラフや散布図など好みのスタイルで表現できる(図2)。分析の過程で、いざとなればすぐに元データ(明細データ)にさかのぼって参照できることに重点を置いている。例えば利益率と売り上げを2軸にとった顧客の散布図を描いておき、孤立エリアにある1つの点をクリックすれば、その顧客IDや実際の利益率や売り上げが直ちに表示されるといった具合だ。また、散布図の中で売り上げは高いが利益率が低いと思われるエリアを選択ツールで囲めば、その範囲内にプロットされている顧客リストをすぐに表形式で出力できる。

「分析者の思考を妨げないという観点で、ツールのレスポンスはとても重要な要素。次々と視点を変えて試行錯誤を繰り返す使い方をするなら、自社の実際のデータを持ち込んで各製品の応答性を体感して比べることを勧める」(百瀬最高技術責任者)。

HOWS(ハウズ)が研究開発を進めるWeb基盤技術である「ISSEI」も、膨大なデータを対象とした分析/検索で注目に値する。一般的だった「インデックス」という検索概念にとらわれない独自のデータ構造を用いて、これまで難しかった検索条件に関連、あるいは近似するデータを同時に取得することを狙っている。

ボトムアップでBI全域をカバー

部署単位など、小規模な組織での簡単なデータ分析といった用途から発展してきたBIツールもある。

その代表例がウイングアーク テクノロジーズの「Dr.Sum EA」だ。Sumという製品名が表しているように、当初は集計処理を中心としたツールだった。比較的小さな組織で、サーバーに蓄積したデータを一定条件で集計したいが1枚のエクセルシートで処理するのは機能的に限界というユーザーが使う例が多かった。その後、「データ検索エンジンをチューニングする一方、ダッシュボードや業務システムからのETL処理など、顧客の要望に応じて機能拡張してきた。結果として、部署単位から全社規模まで広く対応できるラインナップが揃った」(小島 薫 Dr.Sum事業部長)。

中核のDr.Sum EAにはデータ処理量に応じて3つのエディションがある。2000万件までを対象にした「Advanced」がエントリーモデルで、「Premium」(1億件未満)、「Enterprise」(1億件以上)と続く。そのほか複数のデータソースを統合する「Connect」、ダッシュボード「Visualizer」などの周辺ツールがある。

メインフレームやクライアント/サーバー環境における4GL(第四世代言語)から発展したBIツールがアシストの「WebFOCUS」。ERPや各種DBとのアダプタを介して分析処理を実行する「レポーティングサーバ」を中核に、「BIダッシュボード」や非定型分析処理などを担う「マネージドレポート」、Excelから使うアドイン「クイックデータ」などを用意する。

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