間違いだらけの製品選び

2010年3月17日(水)
寺澤 豊

間違った製品選定(1)

以下は、実際に筆者がプリセールス活動を通じて感じた、製品選定時の問題点です。3つのケースを通じて、製品選定のステップでどのような落とし穴があるのかを考えてみましょう。

ケース1「製品を見れば決まる?!」

情報システム部門に所属していても、BIやDWHのプロジェクトを経験する機会というのは、そう何度もないかと思います。4~5年前に導入した経験があったとしても、ここ数年の製品の進歩は非常に目覚ましく、最新の製品を見て驚かれる方も少なくありません。

そこで皆さんが考えることは、「まずは製品を見て学習しよう」ということかと思います。しかし、機能も豊富な現在のBI製品は、単にぼんやりと眺めるだけで決められるほど簡単なものではありません。

「まずは学習する」という考えは前向きで良い感じもしますが、何も考えずに“ただ見るだけ”で終わるケースは少なくありません。例えば、車を購入するケースを考えてみてください。車を選ぶ時、あなたはどうしますか。

家族が5人もいるのに2人乗りのスポーツ・クーペや15人乗りの自家用バスを見てまわりますか。最低限必要な要件も持たずに自動車展示場に入ってしまうと、あれもいい、これもいいと思うだけで、何も決められません。最後に運命の1台に運よく巡り会うかも知れませんが、必要以上に無駄な労力を使ってしまうことになります。

このケースで最後に出る言葉は、「やっぱり要件を洗いなおそう」というものです。つまり、スタートに逆戻りです。

ケース2「ユーザー要件がない」

SIベンダーがユーザー企業から要望を受け、「取りあえず製品比較表を送って欲しい、要件は特にない」と言われてしまった場合、大抵の場合でそのユーザー企業はエンドユーザーの要件を把握していないことが見受けられます。

先ほど車選びに例えましたが、どのような乗り物が必要なのか考えもせず、高級外車のディーラーや二輪車の販売店、はたまた自家用ジェットのベンダーに諸元表を取り寄せるようなことをするでしょうか。

間違いなく、そのようなことはしないと思います。家族の意見も聞き、家の駐車場に置ける大きさで、家族4人が乗れる大きさ、予算は300万円以内、と要件にある程度あったものから選ぶかと考えます。

BI製品の場合、残念ながら諸元比較表を眺めても、答えはそこに記載されていません。これはほかの業務アプリケーションも同様で、「どの製品も大体は同じなんだな」という言葉とともに、スタートへ逆戻りです。

間違った製品選定(2)

ケース3「製品を押し付けるパートナ」

日本のユーザー企業のほとんどが、製品ベンダーやSIベンダーといったパートナ企業と付き合っているかと思います。その中には付き合いの深いパートナがいて、製品ベンダーの自社製品やSIベンダーの注力製品を強く勧められ、そのまま製品を比較することなく導入する場合があるかと考えます。

その自社製品や注力製品が、運よくユーザー企業のニーズと一致した場合にはハッピーですが、そうでない場合は非常にアンハッピーな結果が待っています。

パッケージ製品を購入したにも関わらず、その製品にない機能を付け加えるために無理な開発をし、結果として開発費用が膨れ上がった挙げ句に、使い勝手が悪くバージョンアップも容易にできなくなってしまったケースを見たことがあります。

BI製品は、エンドユーザーが、その目で見て、その手で触れて、経営に対して重要な意思決定を行うために利用する製品です。製品選びに際しては、複数のパートナから情報を収集することをオススメします。

ユーザー企業側から要件も伝えていないのに「この製品がオススメです」というパートナには要注意です。大抵の場合、その製品はユーザー企業の要件に対して適切な製品ではなく、パートナにとって適切な製品、すなわち“売りたい”製品です。

BI製品の導入経験や提案経験を持つ方であれば、これらのいずれかのケースにぶち当たったことがあるかと思います。もし「私はありません」という方がいれば、その方は正しい製品選定ステップを理解されていたか、もしくは優秀なパートナに恵まれていた、もしくは運が良かったのかも知れません。

では最後に、これらのケースのような問題に陥らないためにはどのようにすれば良いか。次ページでは、製品選定の方法論を解説します。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 ソリューション営業第3部DWH/BIソリューション課
2002年伊藤忠テクノソリューションズ株式会社に入社以来一貫してBI/DWH分野を担当。ETL、BIの製品サポート業務を経験した後、業種業態を問わず様々なプロジェクトへの技術支援を経験、現在はBI/DWH分野におけるマーケティング、プリセールスを担当している。

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