BIツールを利用したシステム構築時のポイント

2010年3月29日(月)
五月女 雅一

ERPパッケージとBIツールの役割分担

ERPパッケージなどの業務アプリケーションとBIツールには、役割分担があります。前回、これについて簡単に説明しました。では、それぞれの具体的な役割とは、どのようなものになるのでしょうか。

答えはこうです。ERPパッケージがデータを「ためる」、そして「見る」という役割を持っているのに対して、BIツールは、ERPパッケージがためたデータを「追求する」、そして「見せる」ことを特性としています。

詳しく説明します。ERPパッケージは、企業活動の結果をデータベースに蓄積し、 一元的にデータを管理します。目的は、リアルタイムに収集するデータから現時点の企業活動の状況を速報値として定点観測することです。画面の照会や帳票出力によって、利用者が必要な時に最新の情報をいつでも確認できるようにしています。これが、ERPパッケージの特性です。

一方、BIツールは、ERPパッケージで蓄積されたデータを用いて、データを追求するツールです。目的は、予測と異なる数値を発見して、その原因を追究することや、その数値傾向を別の角度から分析することです。簡単な操作によって任意の集計軸でデータを参照できるほか、ドリルダウン・ドリルスルー・スライス&ダイスといった機能を備えます。追求した結果を、最初から用意されているグラフィカルな表示を用いて視覚的に「見せる」といった処理に特性を持っています。

システム構築の流れ

ERPパッケージとBIツールは「相性の良い」組み合わせです。BIシステムの構築は、基本的に通常のシステム構築とあまり変わりませんが、BIシステムならではのポイントがいくつかあります。以下では、システム構築の流れに沿ってBIシステム構築のポイントを説明します。

  1. まず、要求分析では、経営層、現場利用者、情報システム担当といった複数の立場から要求を挙げてもらい、BIシステム利用の目的やスケジュールなどを含めた方針を明らかにする必要があります。BIシステムは、立場や利用部署によって利用目的や利用方法が大幅に異なるためです。「何のためにシステムを導入するのか」というゴールを明確にしておくことが重要です。
  2. 次に、要件定義では、利用ニーズの確認と、見たいデータの種類/組み合わせやレイアウトなどのレポート・イメージを決定します。レポートについては、「判断/分析したい内容は何か」という観点からアプローチする必要があります。
  3. この上で、対象データを定義します。必要となるデータを整理し、データの取り込み元となるERPパッケージ側にデータが存在するかどうかを確認します。
  4. 利用ニーズから、分析するデータの切り口(地域別や取引先別の売上高など)と対象データ、その期間(年・月・日など)を整理しておくことがポイントです。分析データの切り口としては、グループ化するのか、階層化するのか、といった観点も重要です。
  5. 設計では、データ連携のためのデータ取得方法を定義します。対象データをERPパッケージから出力する手段を決めます。BIツール側のデータの取り込み方法に応じて、CSV(カンマ区切り形式)ファイルで出力するのか、キューブを作成するのかなどを決めます。BIツールによっては、ERPパッケージのデータベースに直接アクセスしてデータを取り込むものもあります。
  6. リアルタイムにデータを取得しなければならないのか、日次(1日1回のバッチ処理)などで構わないのかは、閲覧すべきデータの種類や利用方法によって異なります。最適な方法を選択してください。
  7. 設計後、実際にシステムを構築します。レポート出力のために必要な項目を抽出し、必要に応じて演算処理を設定します。最後に、分析結果を表示するレポート・イメージのレイアウトを設定すれば完了です。成果物の整理も、しっかりしておきましょう。

繰り返しになりますが、BIシステムを導入するためのポイントを押さえることを注意すること以外は、通常のシステム構築と何ら変わりありません。つまり、要件定義が最も重要であり、きちんと整理しておく必要があるということです。実現範囲が広がりすぎると期間もコストも収拾がつかなくなる点も、通常のシステム構築と同じです。

皆さんが想像している以上に、BIの環境を構築して利用を開始するまでには、やらなければならない作業は多いです。BIツールの中には、こうした構築作業を省略して素早く利用開始できるようにERPパッケージと連携するテンプレートを準備しているものもあり、そういったテンプレートを利用するのは非常に効率的だと言えます。

次ページからは、BIツールで会計データを扱う際の注意点を解説するとともに、実際に会計ソフトとBIツールを連携させる例について、具体的な2つの製品を引き合いに解説します。

住商情報システム株式会社
入社当時は国際金融ビジネスに携わり、パッケージソフトの導入・サポート業務を経て、パッケージソフト開発のPMとして従事。その後、新規ビジネスの企画立案に携わる。今までの経験を活かし、現在は、自社開発のERPパッケージ「ProActive E2」の営業推進として、製品企画やマーケティングを担当している。
http://www.scs.co.jp
http://proactive.jp

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