エンタープライズ・モバイル

2010年4月30日(金)
永井 一美

モバイル端末の種類と特徴(2)

・ノートPC、UMPC/ネットブック

これらは、モバイル用途に利用できるPC(パソコン)と言ってよいです。ただ、音声端末用途やマルチメディア的な利用には向かないでしょう。

・HT(ハンディ・ターミナル)

モバイルの範疇(はんちゅう)ですが、コンシューマが利用するものではなく、もともと業務用です。ほかのモバイル機器と違って用途が明確で、 それに合わせた形状、機能を持っています。

画面UIを含めたアプリケーションの開発環境としては、従来はC言語が主で、「組み込み系」の技術者が携わっていました。 現在では、Windows CE、Windows Mobileを搭載した機種も多く、デスクトップPCでの業務アプリケーション開発者が開発を行えるようになっています。

リッチ・クライアントであるBiz/Browserも、モバイル用として「Biz/Browser Mobile」、その開発ツールとして「Biz/Desinger Mobile」を用意しています。 端末のプロファイルを登録することで、端末に合わせた開発をデスクトップPCにて行えます。最終テスト時に実機検証すれ ばよいため、開発生産性が向上します。

HTには歴史があります。形状も人間工学に基づいて作られていたり、バーコード・リーダーが標準装備されていたりします。 防水、落下耐性などの堅牢(けんろう)性も備わっており、業務用途に特化しています。スマートフォンでHTを代替するケースを聞きますが、完全な代替はできないと考えるべきでしょう。

端末全体に言えることとして、バッテリの持続時間は重要です。充電という作業が発生することで業務に支障を与えないかどうか検証が必要です。 また、仮に大容量バッテリが用意されていたとしても、重くて携帯性を損ねてしまっては意味がありません。

また、端末選択は、業務上片手で操作する必要があるのか、フル・キーボードが必要なのか、縦横変換が必要なのか、堅牢(けんろう)性が求められるのか、など、 利用者の要求/プロファイルをもとにして選択すべきものです。

例えば、業務においては、ネットワーク通信が遮断されても業務の遂行ができなければいけません、 そのためには、リッチ・クライアントでは多くの製品が可能にしている「オフライン・モード」が必要になります。

小さな画面でのUIのポイント

モバイル端末においては、デスクトップPCと同じと考えてよいノートPCやUMPC/ネットブックを除けば、それ以外の端末はそれぞれ異なる操作性を持ちます。 モバイル、マウスレス、小さな画面といった特徴を持つことから、各ベンダーや各端末において、UIに工夫 が見られます。

代表的なものに、長押しや、iPhoneのタッチ・パネル操作でのピンチイン/ピンチアウト、日本語入力時のフリック入力などがあります。 また、ソフト・キーボードもモバイルでは標準と言えます。圧力センサーや位置センサー、方位センサーなどもモバイル独自であり、 これを使ってナビゲーションやゲーム、位置情報を利用したアプリケーションを組むことが可能です。モバイルだからこその機能ですね。

スマートフォン向けに、シンクライアント用のツールを利用してデスクトップPCの画面をそのまま利用する製品/サービスがありますが、 画面サイズが全く違うのですから、このUIで利用者の満足を得られるはずがありません。iPhoneにおいてはピンチアウトを利用して画面を大きくして閲覧しますが、 こうした使い方は間違っています。小さな画面を生かすためのUIには工夫が必要です。

いくつか、小さな画面に適合したUIを構築/開発するためのポイントを紹介します。

・スクロールは排除、極力無くす
キー操作であっても画面タッチであっても、小さな画面でのスクロールは使い勝手の良いものではありません。しかし、iPhoneなどによる、 指でなそるスクロールや、強さ次第でより早く送れるようなインタフェースは、用途によっては良いと思います。

・ドロップダウンは、リストのデータ数が固定されている場合のみに限定
リストが開くコントロールは、データの数によって上に出たり下に出たり、また欠けてしまうこともありえますし、 リストを開いた段階で画面の一部が隠れますから、考慮が必要です。

・タブ画面を使う
画面の大きさからも、デスクトップのようにウインドウをいくつも開けません。ですので、タブがあると便利です。 リッチ・クライアントは、本当のタブ(タブ単位の画面をメモリーにて保持)表示ができます。

・入力補助を手厚く
日本語変換は、デスクトップPCのキーボードのようにはいきません。アプリケーション側にて補助を行い、楽に入力できるように構築しましょう。

・グリッド(表)を安易に使わない
スクロールを排除することは、通常のグリッドは利用できないということです。畳み込みのあるグリッドならば良いです。

ほかにも考慮点はありますが、それぞれの端末OSの持つ機能とリッチ・クライアントなどが提供するUIコントロールを駆使し、 デスクトップ以上に利用者の立場に立ったUIを作ることが重要です。UI=システムです。

次ページでは、アクシスソフトが提供しているモバイル用リッチ・クライアント製品と、伊藤忠エネクス株式会社のユーザー事例を紹介します。

アクシスソフト株式会社 代表取締役社長
SI会社においてOS開発、アプリケーション開発、品質保証、SI事業の管理者を経て、ソフトウェア製品の可能性追求のため、当時のアクシスソフトウェアに入社、以降、一貫して製品事業に携わる。2006年より現職。イノベータであり続けたいことが信条、国産に拘りを持ち、MIJS(Made In Japan Software consortium)にも参加、理事として国産ソフト発展に尽力している。

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