企業の何をどうモバイル化する?
企業データのモバイル化の効果
モバイル・システムの導入効果については、以下の考え方を参考にしてみてください。
例えば、営業支援ツールのモバイル化の効果としては、営業活動において約20%の改善が見られ、直行直帰を許可することによって残業時間が月間で10時間程度減ると言われています。
つまり、こういうことです。
(1)営業効率のアップにより、1日当たりの顧客やパートナ訪問数が、20%改善される。すなわち1.2倍になる。
(2)営業社員1人当たりの残業コストが、月間で10時間分減る。すなわち、1時間当たりの営業社員の平均コスト×10時間×営業社員数×12カ月が1 年間のコスト削減額になる。
また、次のようにも考えられます。
(1)ユーザーに対する対応が迅速になり、会社のイメージや認知度の向上につながる。 (2)営業社員は、社内情報をいつでもどこでも利用できる。 (3)情報を入手するために社内に戻る必要がなく、移動時間が短縮できる。
営業社員の机を共有化することも可能であり、そうすればオフィスの賃貸費用も削減できます。
一方、モバイル化では、システム構築コストがどれだけかかるのか、運用コストはどの程度になるのかも考えなければなりません。当然、営業社員1人当たりの携帯情報端末やモバイル機器(ノートPCを含む)のコストだけでなく、インフラ・ソフトウエアのコストやアプリケーション開発コストもかかります。初期の6カ月程度は、営業社員教育費用などもかかってきます。
導入前の売り上げや利益を計算し、導入後に改善される数字を比較して、効果を明確にする。そして、導入にかかるコストと、コスト削減効果を組み合わせ、最終的にどれだけ会社にとってプラスになるのかを算出します。
使えるシステムになれば、確実に導入効果は出ます。例えば、前述したコンサルティング会社では、データ通信と音声にかかる総費用を、iPhone導入前よりも約26%削減し、フリー・アドレス制の先進的なオフィス環境を導入しています。
別の会社では、保守メンテナンス作業にスマートフォンを利用した株式会社INAXメンテナンスでは、年間約1億円もかかっていた紙代金を削減しました(http://www.ianywhere.jp/sol/sstory_inax.html)。
米国の大規模スマートフォン事例
このほか、企業データとは異なりますが、スマートフォンという切り口で情報収集の効率アップに利用している例を紹介します。
米国では、10年に1度の国勢調査が、2010年に実施されます。基本的には日本と同じように、調査票を配布し、記入されたものを回収するという方式で実施されます。
毎回、大量の未回収の調査票に頭を悩ませていたため、今回の調査では、15万人の調査員が未回収の世帯を戸別訪問し、ヒアリングした内容をスマートフォンのアプリケーションにその場で登録するというシステムを構築しています。
台湾のHTC製のスマートフォンに、iAnywhereの軽量データベースであるUltra Lightが搭載されており、ヒアリングした情報をいったんそのデータベースに格納し、その後随時センターと同期するようになっています。これにより、調査票未回収世帯からの迅速な情報収集が可能になると期待されています。
次回は、エンタープライズ・システムをモバイル化するにあたって、失敗しないためのポイントを解説します。