解像度の異なる端末に対応する
解像度の違いによる不具合
サンプル"ResourceTest"を、HVGAとWVGAのエミュレータで実行した結果が、下の図2-1になります。ご覧のとおり、HVGAでは正常に表示されていますが、WVGAでは小さく、右端と下側が余って表示されています。
また、端末を横に向けたときのアプリの挙動を考えてみましょう。ユーザーの設定にもよりますが、Androidでは、端末が横に向くと、画面自体が回転して、それまでの縦長から、横長の画面表示に変わります。エミュレータでは、[Ctrl+F12]を押すと、画面の向きが切り替わります。
画面を横向きにした結果が下の図2-2です。HVGAでは縦で画面が切れて、正常に表示されていません。また、WVGAでは、図らずも全体は表示されていますが、右端が余っており、正常に表示されているとは言えません。
これらの不具合は、画面を設計する際に、部品の大きさをピクセル(px)単位で指定したことが原因です。 HVGA(480x320)の解像度に合わせて設計したため、WVGA(854x480)で表示すると、480x320でいっぱいに表示しても、まだ右と下が余ってしまいます。
また、画面が回転して縦横の長さが切り替わっても、部品の縦横の大きさ指定は変わらないため、きちんと表示されないのです。
ピクセル単位での指定は、レイアウトの細かい調整には非常に便利です。しかし、今回のように1画面を構成するピクセル数そのものが違う環境には、全く対応できません。
Androidの初期のSDKでは、AbsoluteLayoutと呼ばれる、画面の部品の座標が絶対値で指定できるレイアウトがありました。しかし、現在ではこれは非推奨の扱いです。同様に、位置合わせのためにピクセル単位を使うこともまた、今後は推奨されなくなると筆者は考えています。
それでは、これら端末間の違いを解消するにはどうしたら良いのでしょうか。
レイアウト・リソースを調整する
まず、WVGAで表示した際、右と下が余ってしまう不具合を調整します。
この場合、単位を[px]ではなく、[sp]で指定することで改善できます。
すべての大きさを指定する単位を、pxからspに変更したレイアウトファイルが、res_sample/layout/main2.xmlにあります。このファイルをres/layout/にコピーしてください(前のページでコピーを終えている人はそのままでかまいません)。
次に、src以下のMainActivity内で、setContentViewの引数をR.layout.main2に変更してください。main2 が見つからないとエラーが発生する場合は、プロジェクトを一度クリーンしてから再度ビルドしてください。
変更後のサンプルを実行した結果が、上の図2-3です。小さく表示されていた画面が、横いっぱいに拡大されて表示されています。値を全く変えずに、単位をpxからspに変更するだけで、明らかに改善されました。
sp(Scale-independent Pixels)は、画面の解像度に依存しない単位です。基本的にピクセル単位の指定と同じ意味を持ちますが、解像度に合わせて自動的に拡大縮小を行います。
そのため、HVGA用に設計した画面も、単位をspにしておけば、WVGA向けに拡大して表示されるのです。ちなみに、図2-3では下側が少し余っていますが、これはHVGAとWVGAの画面の縦横比が異なり、縦横比を保ったまま拡大したためです。
単位spで指定は、どのような画面でも大きな不具合が起こりにくいので、pxの代わりにspを使うことをおすすめします。
次のページでは、「画面の縦横の切り替え」への対応と、より具体的な複数解像度への対応を解説します。