論理力とは何か?
「論理力」向上に使える考え方
プロジェクト管理で使える考え方はどのようなものがあるのでしょうか?
プロジェクト管理の最大の課題は、不確実であいまいな情報に基づく意志決定が続くことです。それは、プロジェクトは人が実施するものであり、有期性(開始と終了が明確に定まる)を持つ独特な活動、そして計画が段階的に詳細化されていくものであるという特徴によります。
本連載ではこのような状況での意思決定に用いることのできる3つの技法を紹介します。
3つの技法を押さえる
1つ目は「ゲーム理論」です。ゲーム理論は、複数の人間が関与する活動において、各人の合理的な選択・行動はどのようなものかを考える理論です。「囚人のジレンマ」という有名な問題は皆さんも知っていると思います。この問題は個々が合理的な選択をしたにもかかわらず、結果として最適な選択とはならないというジレンマを理論化したものです。
ゲーム理論は、1944年、数学者のフォン・ノイマンと経済学者のモルゲンシュタインの共著「ゲーム理論と経済行動」によって世の中に知られるようになったものです。現在、経済学、数学、哲学、政治学、社会学、生物学などに応用されています。
特に経済学の分野では、1980年ごろから経済学者がこの理論に注目しさまざまな研究を始めたことから、経済分析の基本的用具として広く認知されるようになり、1994年にはノーベル経済学賞がゲーム理論に対して与えられています。
2つ目は「フェルミ推定」です。最近では、マイクロソフトやグーグル、そのほかのコンサルティング会社の入社問題で用いられていることや「地頭力」を鍛えるために必要な考え方ということで有名です。
もともとは、正確な値を見積もることが困難な大きな物理量を短時間で概算する方法で、1901年に生まれた物理学者エンリコ・フェルミにちなんだものです。
簡単に言えば、フェルミ推定は問題を大局的にとらえ、それをいくつかの要素に分解し、要素ごとにさまざまな仮定・推定で値を導出し、それらから問題の解答を概算する手法です。
有名な問題としては「シカゴにピアノ調律師は何人いるか?」というものがあります。この問題は、「シカゴにおける年間のピアノ調律の需要と供給が等しい」という大局的に妥当な仮説から需要をシカゴにおけるピアノ数と1台当たりの調律回数、そして需要を調律師の数と1人当たりの調律数を分析し値を導出します。
3つ目は「ベイズの定理」です。ベイズの定理は確率論の一種であり、ある事象の発生頻度を過去の発生頻度を使って推測するというものです。イギリスの牧師であるトーマス・ベイズによって発見され、彼の死後1763年に発表されたものです。ベイズは神の存在を方程式で説明できると主張したと言われている人物です。
ベイズの定理は近年、過去の大量の事実を元に以降の動作を決定するような処理をコンピュータに行わせる場合の基礎理論として注目されています。
例えば、過去のメールスパム判定結果から今後のスパムを自動的に判定する処理などに応用されています。また、コンピュータ以外の分野でも応用が可能であると考えられています。例えば、ある一定の条件を満たす集団の中で、ある病気を患っている人の確率とその病気を患っている人がある検査で陽性が出る確率から、その検査で陽性が出た人がその病気である確率を求める作業にも使うことができます。
続いてプロジェクト管理における典型的な問題を示します。