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de:code 2018が開催。基調講演はクラウド、開発ツール、MRが語られる

2018年6月11日(月)
高橋 正和

クロスプラットフォームで共同プログラミング

 続いて登場したJulia Liuson氏(Corporate Vice President, Developer Division)のパートでは、開発ツールが語られた。

Julia Liuson氏

 「Visual Studioは優秀だが、われわれは、各自がどんなツールを使って、どんなアプリケーションを開発しても、成功できるようにしたい」とLiuson氏。そこで、700万人のユーザーを持つ「Visual Studio」のほか、360万人のユーザーを持つオープンソースでマルチプラットフォームの「Visual Studio Code」をリリースしている。

 新機能として、これらVisual StudioおよびVisual Studio Codeを使って共同作業をするためのサービス「Visual Studio Live Share」が紹介された。

Visual Studio Live Share

 実際にVisual Studio Live Shareがステージ上で、大森彩子氏と原綾香氏によってデモされた。

 macOS上のVisual Studio CodeとNode.jsの環境でプログラミングしていて、リモートでヘルプを求めるメッセージを送る。Windowsでそれを受信してリンクをクリックすると、Node.jsの入っていないVisual Studioが起動し、共同作業が始まる。

大森彩子氏
原綾香氏
リモートにメッセージを送る
メッセージを受信してVisual Studioを開く

 別々のファイルを開いてそれぞれ作業しながら、ソースコード中の選択部分を共有したりできる。また、リモートからブレークポイントを設定して実行してもらうこともできる。ローカルで起動したWebアプリケーションのサーバーを共有し、リモートの共同作業相手からアクセスしてもらうこともできる。また、ターミナルを共有する機能により、Node.jsの入っていないVisual Studioから、Node.jsの入ったmacOSのターミナルを操作することもできる。

ブレークポイントなどを共有しながら共同作業(Visual Studio Code側)
ブレークポイントなどを共有しながら共同作業(Visual Studio側)
Webアプリケーションのサーバーを共有
Visual Studio Code側のmacOSの端末をVisual Studioから共有

 デモを受けてLiuson氏は「好みのマシンやキーボードを使いながら共同作業できる」とコメントした。

GitHubからApp CenterでCI/CDや実機テストを実行

 続いてLiuson氏は最近のMicrosoftの変化として、GitHub上のOSSに貢献している最大の単一企業であるとアピールした。GitHubはde:code 2018の展示会場にも出展していた(編注:その後MicrosoftがGitHubの買収を発表した)。

de:code 2018展示会場のGitHubブース

 そのうえで、新しいサービスとして、Visual Studio App CenterとGitHubの組み合わせが紹介された。Visual Studio App Centerは、iOSとAndroidの開発のためのサービスで、ビルドやテスト、テストユーザーへの配布、クラッシュレポートなどの機能を持っている。

Visual Studio App Center+GitHub

 このデモに千代田まどか(ちょまど)氏が再び登場し、Visual Studio App Center+GitHubを実演した。

 題材は、iOSのホテル業務アプリ。このアプリのGitHubリポジトリにプルリクエストが来ているところからデモが始まった。「ここで何も考えずにマージボタンを押す人はいないので、まず自分の環境で動かすが、毎回は面倒」(千代田氏)。

 そこで、GitHub MarketplaceのMobile CIで「App Center」を選んで導入。自動でiOSアプリと認識され、簡単な設定だけでCIが設定でき、ビルドが実行される。

再び登壇した千代田まどか(ちょまど)氏
GitHubでプルリクエストが来た
GitHub Marketplaceで「App Center」を選んで導入
App Centerで設定
ビルドの設定
ビルドが実行されて結果がGitHubに表示された

 ビルドされたアプリは、Visual Studio App Centerから実機テストを自動で走らせることもできる。異なる機種、異なるOSバージョン、異なる言語のほか、Androidも含めて一度に100種類以上の実機でテストできるという。テストに失敗した機種についてはログを見られる。

 さらに、ベータテスターに配布する機能や、ユーザー分析、クラッシュリポートの機能もあると千代田氏は説明した。

App Centerから実機テストを実行できる
ベータテスターに配布することも可能

Azure上にCI/CD環境を簡単に作る

 次に紹介されたのはVisual Studio Team ServicesのDevOps機能、特に「Azure DevOps Project」だ。

 Azure DevOps Projectについては、最初から阿佐志保氏がデモで説明した。CI/CD環境を手作りしていくのは面倒なところを、Azure DevOps Projectを使うとAzure上にCI/CD環境を作ってくれる。これは現在プレビュー段階であるという。

 阿佐氏は、言語、フレームワーク、実行環境といった項目を選択し、Azure Kubernetes Service(AKS)を選んで基本設定するだけで、CI/CDパイプラインができるところを実演して見せた。ビルドパイプラインはDockerのマルチステージビルドや、クラスターパッケージツールHelmに対応、デプロイパイプラインはデプロイタイミング指定などができるという。

 また、AKSで動いているので、WebのKubernetes DashbordやWSLコマンドラインのkubectlコマンドから、動作を確認したりPodを増やしたりできるところも見せた。

阿佐志保氏
言語やフレームワークなどを選ぶ
AKSを選ぶ
CI/CDパイプラインができる
DockerのマルチステージビルドやクラスターパッケージツールのHelmに対応
デプロイの設定
Kubernetes Dashboardから確認
kubectlからPodを増やす

AKS上に開発環境を簡単に作る

 AKSは、Build 2018で名称を「Azure Container Service」から「Azure Kubernetes Service」に変更している。このAKS関連の新サービスとして、「Dev Spaces for AKS」も紹介された。

 「通常は、開発するときにローカルにDockerやKubernetesのさまざまなソフトを入れる必要があって大変。Dev Spacesでは、短時間でAzure上に開発環境を作成できる」とLiuson氏。

 チームでのコンテナクラスターアプリケーションの開発にも対応。たとえば、Kubernetes上でクローンを作って一部を開発しつつ、チームのほかの人はそれ以外の部分の開発を進めるといったこともできるという。

Dev Spaces for AKS
Dev Spaces for AKSで開発環境を簡単に作る

.NET Coreは.NET Frameworkとの互換性を強化

 次の話題は.NETだ。Liuson氏は「.NETには400万人の開発者がいて、毎月45万人が新しく試すなど、開発者は増えている」と語った。

 もともとWindowsプラットフォーム専用の.NET Frameworkだった.NETは、現在ではオープン化とクラスプラットフォーム化が進められている。「たとえばタクシーに乗ってWeChat Payで料金を支払うとき、Tencentの支払いゲートウェイでLinux上の.NET Coreが動いている」とLiuson氏。

 オープンソース版.NETである.NET Coreの次期バージョン「.NET Core 2.1」が現在RCの段階という。シナリオによっては5倍の速度改善を実現したほか、.NET Frameworkとの互換性が進化。ASP.NET CoreとEF Coreの差も縮めている。

 今後、.NET Core 3.0に向けてのロードマップとして、デスクトップ、IoT、AIを包含するための拡張が掲げられた。特にデスクトップ分野では、UWPコントロールやWPF、Windows Formsとの互換性を持ち、すべてのWindows APIにアクセスできるようにする計画をLiuson氏は語った。

次期バージョンの.NET Core 2.1 RC
.NET Core 3.0のデスクトップ機能のロードマップ

 .NET Coreについて、原綾香氏が再び登場してデモした。パイチャートを表示する同じサンプルコードを、.NET Frameworkと.NET Coreのそれぞれのプロジェクトにし、両者が同じように動くことを見せた。さらに、.NET Core版が処理速度が速かったことや、約66MBのEXEファイルにまとめられたところも示した。

原綾香氏が再び登壇
.NET Framework版。実行時間248ms
.NET Core版。実行時間95ms

「現場の人」に向けたMRの遠隔支援と空間プランニング

 Lorraine Bardeen氏(General Manager, Mixed Reality Studios)のパートでは、MR(Mixed Reality)分野が語られた。

Lorraine Bardeen氏

 Bardeen氏は、Microsoft 365から話を始めた。Microsoft 365は、Office 365とWindows 10、Enterprise Mobility + Securityを含むソリューションだ。Microsoft 365では複数のデバイス、いくつものアプリ、いくつもの部署の人などがいっしょに働くようになっている。

 そうしたつながりの中心にあるのがMicrosoft Graphだ。さまざまなデータがつながり、利用できる。

Microsoft 365とMicrosoft Graph

 デジタル化されたデータが集まり、次のステップとなるのが、「空間的なデータ」によりデジタルとフィジカルの両方のデータが結びつくことだ。そこにHoloLensによるMRが使われる。「MRによりファーストラインワーカー(現場の人)をempowerする」とBardeen氏。ファーストラインワーカーは、Microsoftにとって新たな顧客セグメントであり、開発者によっての新たな機会となる。

 HoloLensを2年前に出荷したMicrosoftは、ファーストラインワーカーのシナリオを学んだという。価値の高いものとして、遠隔支援、空間プランニング、トレーニング、コラボレーションの4つが挙げられた。

ファーストラインワーカーのMRの4つのシナリオ

 ここで新しく「Microsoft Remote Assist」と「Microsoft Layout」の2つのMRビジネスアプリケーションが紹介された。

 Microsoft Remote Assistは、前述の「遠隔支援」に相当する。作業者をリモートのエキスパートが助けるもので、ハンズフリーのビデオ通話や画像共有、MRでの注釈付け機能を持つ。

 Microsoft Layoutは前述の「空間プランニング」に相当する。MRで現実空間にリアルサイズの3Dモデルを可視化し、リアルタイムに関係者と共有して変更できる。これにより、意思決定が数ヶ月から数日に短縮できるという。

Microsoft Remote Assist
Microsoft Layout

 スクリーンには、飛行機工場でMicrosoft Layoutを使って空間分析をしたり、Microsoft Remote Assistを使って共同作業をしたり、コルタナを使ってハンズフリーで情報を調べたりする動画が上映された。

飛行機工場で空間分析する動画

 日本でファーストラインワーカーにHoloLensが採用された事例も紹介された。

 東急建設株式会社では、株式会社インフォマティクスによる、パイプラインの青写真をMRで重ねて見るシステムを採用した。工程の短縮につながり、より早い意思決定ができるという。

東急建設株式会社と株式会社インフォマティクスによる事例

 海上輸送のJRCS株式会社では、MRによるトレーニング、MRによるエキスパートの助言、陸上からの操船のプロジェクトを開始した。

JRCS株式会社の事例

 最後にBardeen氏は、「こうした未来を実現するのに、いちばん重要なのは開発者」と語った。

HoloLensを使う開発者たち

MRパートナーに4社が新規参加

 最後のパートとして、日本マイクロソフト社長の平野拓也氏が登場した。今回、唯一の男性登壇者となる。

 平野氏は、投資を加速しているテクノロジー分野として、MR、IoT、AIの3つを挙げた。

平野拓也氏
投資を加速している3分野はMR、IoT、AI

 日本マイクロソフトは、2017年にMRパートナープログラムを開始し、11社が参加している。このMRパートナープログラムに新たに4社が加わったことがアナウンスされた。

 株式会社セックは、MRをJAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同研究している。株式会社ポケット・クエリーズは、東京電力の現場の作業支援にMRを使う。株式会社シャンティは、MRで処方箋から薬の場所や数量がわかる調剤薬局支援システムを開発中。株式会社電通国際情報サービス(iSiD)は、工場での作業者補助やロボットの利用を実験している。

MRパートナープログラムに4社が加わった

 平野氏はそのほか、de:code 2018直後の5月24日〜29に日比谷シャンテで開催される「ゴジラ・ナイト」を紹介した。HoloLensを使ってMRでゴジラを体験するというものだ。

MRでゴジラを体験する「ゴジラ・ナイト」

IoTビジネス共創ラボの最新事例

 IoTについては、まずMicrosoftがIoT分野でテクノロジーとイノベーションの支援プログラムに4年間で50億ドル投資していることを紹介した。日本での取り組みとしては、2016年に「IoTビジネス共創ラボ」をスタート。現在435社に参加者が増えているという。

 その事例としてはまず豊田自動織機が紹介された。世界各地のフォークリフトをIoTに接続し、活動状況を分析したり、予兆保全や人員配置の最適化に利用しているという。

 またLANDLOGでは、建築現場で、スマートコンストラクションや、ドローンからの建築現場の情報収集、予兆保全などを行っているという。

IoTビジネス共創ラボとその事例

 さらに、日立製作所とIoTソリューション「Lumada」で協業することも明らかにされた。

日立製作所とIoTソリューション「Lumada」で協業

「りんな」に次世代会話エンジンを採用

 AIについてはソーシャルAIチャットボット「りんな」のユーザーが690万人になったことを紹介。そのうえで、次世代の会話エンジン「共感モデル」を、同日(5月22日)から採用することを発表した。共感モデルでは、人間が会話するのと同じように、会話の流れを読んで返答するという。

「りんな」に次世代の会話エンジン「共感モデル」を採用

 AI関連でそのほか、米国ではAIを使った障害者支援機能の開発者を支援する「AI for Accessibility」を発表している。これを日本でも同日(5月22日)設立することがアナウンスされた。

「AI for Accessibility」を日本でも設立

 なお、de:code 2018の展示会場でも、AIを含むアクセシビリティ機能のブースが設けられていた。

展示会場より。見たものを音声でナレーションしてくれる「Seeing AI」
展示会場より。視線でマウスを操作するWindows 10の機能(筆者が文字入力を試しているところ)

 平野氏はそのほか、Microsoftが関与する開発コミュニティの成長や、女性技術者の活動を支援するWomen in Technologyを紹介した。

 また、日本マイクロソフトでリターンシップのプログラムを1月から開始したことも紹介した。事情により日本マイクロソフトでのエンジニアの道を断念した人が、同社またはほかの会社でエンジニアに戻ることを支援しているという。

フリーランスのライター&編集者。IT系の書籍編集、雑誌編集、Web媒体記者などを経てフリーに。現在、「クラウドWatch」などのWeb媒体や雑誌などに幅広く執筆している。なお、同姓同名の方も多いのでご注意。

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