事例から学ぶ動画の使い方

2008年10月10日(金)
篠原 哲也

コンテンツとしての動画の使い方

 Webサイトで動画を使うもっとも一般的な方法として、動画コンテンツをそのWebサイトのメインコンテンツとして展開する方法があります。CMの続きはWebでのようにWebドラマの展開などはみなさんの記憶に多く残っているケースだと思います。

 動画をコンテンツの中心としたWebサイトの事例として今回ご紹介したいのは、映像のクオリティーが飛び抜けていて、映画並みのクオリティーの動画コンテンツを展開している日産自動車のエクストレイルのWebサイトです。

 現在、日産エクストレイルのWebサイトでは「NO LIMIT PROJECT(http://www2.nissan.co.jp/X-TRAIL/T31/0708/index.html)」という、Xスポーツのトップアスリートたちが自分の限界に挑戦するドキュメンタリームービーを「スノーボート編」「サーフィン編」の2つを展開しています。このハイクオリティの動画コンテンツをWebコンテンツとして展開しただけでなく、そのダイジェスト(予告編)をTVCMで展開するというWebを中心としたコミュニケーションの組み立てになっています。

 スノーボード編では、単純に最初から最後まで見せるだけでなく(もちろん、普通に最初から最後まで見ることはできます)、100個のチャプターに分けて、気まぐれなネットユーザーの嗜好(しこう)に合わせたストーリーではなく、シーンを楽しむという形で見ることができます。100個のチャプターが並んでいる画面上をオンカーソルするだけでそのチャプターの最初の数秒だけを再生してくれたりなど、Webならではの楽しみ方がWebサイトの仕様として工夫がされています。

 サーフィン編では、本編を4つの時間軸でシンプルに分けられたチャプターで構成し、エキストラ映像はボーナスクリップという形で、映像自体の編集をWebユーザーの使われ方を想定した形で構成されています。また、ボーナスクリップは、BLOGに貼(は)り付けることも可能な形式になっています。

難しいことを簡単に親しみやすくするための使い方

 動画を使ったWebサイトと言うと、エンターテインメントなことにフォーカスされがちですが、動画+インタラクティブを使ってわかりにくい仕組みや商品詳細を親しみやすく、わかりやすく説明する方法としてパーソンインプレゼンテーション(PIP)というものがあります。

 人やロボットなどの解説者がその仕組みを説明するための世界に入り込んで、ユーザーのインタラクションに合わせて、説明をしてくれるものになります。トヨタ自動車の「ハイブリットタウン」は有名ですが、同じくトヨタ自動車のコンテンツで「TOYOTA 3年ぶんください。(http://3nenbun.jp/)」という新しい車の購入方法である残価設定型プランを解説するスペシャルサイトにもPIPが使われています。

 このWebサイトでは、人ではなく、CGのロボット(人形)が体全体やいろいろなオブジェクトを使って、ちょっと複雑な購入プランの説明をしてくれるのですが、普通に説明しようとすると機械的で固い感じの説明になってしまうところをPIPという手法を使うことで、ロボットが残価設定の先生となってユーザーの反応に合わせて説明をしてくれるので、親しみながら、わかりやすい、コンテンツになっています。

 通常、PIPと言うと背景をCGで実際に撮影した人を合成するという手法が一般的だと思うのですが、このWebサイトの場合はフルCGで簡単な形、動きでPIPを実現しているので、人物を撮影して合成するよりは、手軽に作れる制作方法ではないでしょうか。また、インタラクティブの場合、合成を必要とする動画の使い方が多いため、CGを使うというのは有効な手段だと考えています。

株式会社ピラミッドフィルムクアドラ
チーフプロデューサー。1997 PYRAMID FILMにてインタラクティブ広告制作に携わる。大手企業のプロモーション、ブランディングサイトを中心にプロデュースを担当。2002 SONYに転職。VAIOをプラットフォームとしたコンテンツサービスの企画を担当。2005 PYRAMID FILM QUADRAに戻り、ムービーを強みとしたインタラクティブ広告制作に取り組んでいる。http://www.pfq.co.jp/

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