作品を作ってみたいあなたへ

2008年11月28日(金)
村田 朋泰

キャラクターの魔法

 人は逆さになると、血流を促したり、脳を活性化したり精神を調和する効果があります。腰痛やヘルニアにも良いです。禅僧やヨガ修行僧も、瞑想(めいそう)状態に入る時に逆立ちをします。瞑想(めいそう)は心の安らぎ、心と身体の一体感、ストレスや一日の疲れを取り除くことができます。現代人にとって逆立ちは重要性の高いものであると言えます。

 このことは最近知ったのですが、偶然にも筆者の作品に「さかだちくん」という2Dアニメーションがあります。

 さかだちくんは頭の上に身体がついていて、立ち姿は逆立ちをしています。10歳のときに初めて逆立ちできるようになり、それからずっと逆立ちで生活しています。さかだちくんは柔道着を着ているのですが、これは筆者が中学時代、柔道をやっていたことからヒントを得ました。

 なぜ逆立ちさせることにしたのか。筆者が小学生のときに見ていたドラマ「暴れはっちゃく」がふと頭をよぎったからでした。何かに悩み、その答えを導き出すとき「はっちゃく」は逆立ちをして解決するのです。

 筆者もそれにならってらくがきを逆立ちさせることにしました。さかだちくんはその容姿のインパクトですでに悟りを開いているような存在感を放っています。人間の完成型と言える、象徴(シンボル)のようなものです。

 筆者自身は逆立ちをする習慣を持っていませんが、これをアニメーションにすることは、現代人にとって大いに役立つものになるかもしれません(具体的にどのように役立つかはよくわからないのですが)。

三ノ函半島 - 百色旅館/100名所ジュークボックス

 さかだちくんを制作したあと、リチャード・ブローティガン著「西瓜糖の日々」、ガルシア・マルケス著「エレンディラ」の世界のように、構想していた架空の世界(立体ではない、もう1つの世界、3Dと2Dとの差異)を創作し始めました。

 それが「三ノ函半島 - 百色旅館/100名所ジュークボックス」という作品で、30年ほど前のビクターのジュークボックスを改良し、音楽ではなく100種類の映像作品を見ることができるというものです。

 『景勝地で知られる「三ノ函半島」は「100の名所」があり、今では半島自体が残像となりまして「幻想半島」とも呼ばれております。100の名所があるのにちなんで「百色旅館」と改名した当館は創業170年の歴史ある旅館としてみなさまに親しんでいただいております。この地でしか見る事のできない「ピンクのドロドロ」はときどき大空から垂れ流されます。昔の人はそれを「天からのお糞さま」と呼び、信仰しました。ドロドロを独自の方法で採取、ピンクゲルマ温泉として当館の源泉となりました。温泉効果は~肩こり、腰痛、リウマチ、まれに予知能力を持つ効果もございます。三ノ函半島はここでしか見ることのできない「さむらいイカ」の生息地でもあります。「文豪八釜磯辺」がこの地を好み、当館を宿泊場としていたことでも有名です。』

 「地球のはぐれ方」という本の中で村上春樹さんは、日本の都市が平準化し、衛生化されていってしまうことは「僕ら自身の内部にある古典的異界=暗闇」に次々に照明があてられ、その固有の暗がり性が失われ、やがて消失していくということを書いています。それは「三ノ函半島100名所」を作るうえで重要なキーワードであり、「古典的異界=暗闇」を持ったアニメーション作品となっています。

立体アニメーション「朱の路」で第9回広島国際アニメーションフェティバル優秀賞を受賞するほか、Mr.Childrenの「HERO」のPVなども手がける。近年では絵画、空間芸術にも表現を展開し、2008年4月の平塚市美術館での個展「夢がしゃがんでいる」では、巨大な空間をひとつの作品世界として作り上げた。http://www.tomoyasu.net/

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