Boxが年次カンファレンスBowWorksでパートナーとの連携を強調

2020年1月6日(月)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
クラウドストレージのBoxが年次カンファレンスBoxWorksを開催。IBM、Adobeなどとの連携機能を軸にエンタープライズ向けのソリューションを訴求した。

クラウドストレージサービスのBoxが、サンフランシスコで年次カンファレンスBoxWorksを開催した。クラウドストレージ、ファイル共有などのコンセプトを実装したサービスは、BoxのほかにもDropboxやGoogle Driveなどがあるが、Boxはその中でも他社サービスとの連携を売りにして成長を続けてきた。今回はカンファレンス初日のキーノート及び2日目のユーザーとの対談、展示ブースなどを紹介する。

顧客企業を交えてのキーノート

初日のキーノートではBoxのCEOであるAaron Levie氏が登場して、カンファレンスの幕を落とした。

BoxのCo-Founder&CEOであるAaron Levie氏

BoxのCo-Founder&CEOであるAaron Levie氏

驚いたことに、このセッションではいきなりIBMのCEO、Ginni Rometty氏を紹介して対談をするところから始まった。いわゆるSaaSのアプリケーションとして、エンタープライズに導入を進めることでエンタープライズのユーザーに印象付ける狙いがあったのだろう。

BoxのCEO、Levie氏(左)とIBMのCEO、Rometty氏(右)

BoxのCEO、Levie氏(左)とIBMのCEO、Rometty氏(右)

IBMのRometty氏は「企業を変えるためには、その仕事のやり方を変えなければいけない」とコメントし、IBM自身がSaaSベースのサービスを使うことで働き方を変えようとしていることを示したと言える。実際にはIBMの人工知能のブランドであるWatsonとの連携などが、今回のカンファレンスに合わせて発表されており、InstaScanとの連携や、この後に製品担当VPより紹介されたBox Shieldとの連携などを念頭に置いたプロモーションとなった。

次にLevie氏は、Boxの顧客ベースが拡がっていること、特に大企業を中心に拡大していることを紹介した。

大企業のBoxユーザー

大企業のBoxユーザー

顧客として紹介された企業の中では、コマツ、日本航空、資生堂などの日本企業のロゴが確認できる。

そしてゴールドマン・サックスやアストラゼネカのユースケースを紹介した後に、レガシーなコンテンツ管理システムが業務を複雑にしているとして、ツールがビジネスに与える悪い影響を強調した形になった。

ここまででCEOの役割としてIBMを例にエンタープライズ企業が変わるべきというメッセージ、すでに多くのエンタープライズが変わろうとしていること、そしてツールそのものを変えることでビジネスのやり方、働き方を変えられるということを訴求した形になった。

次に登壇したChief Product OfficerであるJeetu Patel氏が最初に紹介したのは、調査会社からのBoxの評価についてのスライドだ。

ガートナー、フォレスター、IDCからの評価

ガートナー、フォレスター、IDCからの評価

いずれの評価でもBoxはリーダーという右上のポジションに位置することが紹介された。カテゴリーとしては「Cloud Content Platform」というやや目新しいもので、競合もIBMやGoogle、Microsoft以外はベンチャーというカテゴリーだ。このCloud Content Platformが、エンタープライズにおいてどの程度の認知度があるのかについては要調査というところだろう。ただメジャーな調査会社からリーダーとして認知されていることは確かである。

Boxはリーダーの位置にいることを強調

Boxはリーダーの位置にいることを強調

次にLevie氏も掲げた3つのポイントを使って再度、Boxのコアなメッセージを訴求した。

ここでも3つのポイントを繰り返し訴求するPatel氏

ここでも3つのポイントを繰り返し訴求するPatel氏

このスライドに挙げられている3つのポイントは、以下のとおりだ。

  • セキュリティとコンプライアンスをスムーズに導入できること
  • 社内外とのシームレスなコラボレーションとワークフロー
  • ユーザーが使う他社アプリケーションとの連携

最初の「Frictionless」は直訳すると「摩擦がない」という意味だが、ここでは導入に当たって不要な工数や労力が必要ないという意味だろう。Levie氏のセッションの時にもこれは使われており、この3点はカンファレンスの中で繰り返し表示されていることから、コアなマーケティングメッセージということだろう。

その後、2名のエンジニアをステージに招いてデモを実施。デモの内容は製薬会社における新薬開発というプロセスの中で、社内外とのデータのやり取りをファイル共有というBoxの基本機能を使って進行していくもので、ファイルへのアクセスのコントロールやダウンロードの利用情報などを、ダッシュボードを使って見せるデモが行われた。

これはBoxが発表したBox Shieldの機能ということで、ユーザーがどのIPアドレスからどれだけダウンロードを行ったかなどを包括的に管理できるという。

Box Shieldのデモ

Box Shieldのデモ

ここではデスクトップPC、モバイルデバイス、Webブラウザーなどのさまざまな経路でのアクセスの管理と、コンテンツを主体としたセキュリティの設定によってユーザーがそのコンテンツに何をしようとしているのか? をベースにセキュリティを高められることを訴求した。

スマートアクセスと脅威検知をコンテンツをベースに実施

スマートアクセスと脅威検知をコンテンツをベースに実施

その後、エンタープライズが利用するさまざまなSaaSベースのアプリケーションとの連携を強調。ここではSplunkのCTOを招き、SplunkとBox Shieldの連携について簡単に紹介を行った。またSlackとの連携については、スレッドの中でコンテンツのサムネイル表示を許可するかどうかなどの細かな設定が可能であることが紹介されたほか、Box Relayというワークフロー製品の紹介などが行われた。

Box for Slackの紹介

Box for Slackの紹介

さらにAutoCADのファイルを共有しながらスレッドでコメントを付けるデモなども行われ、いわゆる情報系のワークフロー、非定形業務の効率化だけではなく、製造設計などの業務にもBoxの応用が可能であることも示された。

AutoCADのデータを共有

AutoCADのデータを共有

ここまでエンタープライズ向けのコアなメッセージを繰り返し訴求し、IBMやSlackなどとの連携を発表というトピックを交えて、「Boxを使って仕事そのものを変えよう」というメッセージを伝える内容となった。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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