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DXの実現にはビジネスとITとの連動が必須 ― 日本マイクロソフトがBizDevOpsラウンドテーブルを開催

2020年3月10日(火)
高橋 正和

プラント操業のデータプラットフォームを
ハッカソンで課題対応

続いて、メインセッションである「3日のハッカソンで何ができる? 何が変わる? 体験者と提供者の率直トーク」のラウンドテーブルが開かれた。榊原氏の話にもあった、企業の課題を解決するDevOpsハッカソンの体験について、ハッカソンを体験した側と実施した側が語る形式だ。

実施した側は、株式会社ゼンアーキテクツの三宅和之氏(CTO)。体験した側は、JFEエンジニアリング株式会社の小林 義孝氏(技術本部 ICT センター AI・ビッグデータ活用推進部 グループマネージャー)。モデレータは、日本マイクロソフト株式会社の横井 羽衣子氏(Azure ビジネスグループ シニアプロダクトマネージャー)が務めた。

株式会社ゼンアーキテクツ CTO/Founder 三宅 和之氏

JFEエンジニアリング株式会社 技術本部 ICT センター AI・ビッグデータ活用推進部 グループマネージャー 小林 義孝氏

日本マイクロソフト株式会社 Azure ビジネスグループ シニアプロダクトマネージャー 横井 羽衣子氏

“3 日ハッカソン” への “期待” と “実際に成し遂げたもの”

1つめの話題は「なぜハッカソンみたいなことをしてみようと思ったのでしょうか? また、どんな期待をお持ちでしたか?」。

対象となったのは、JFEエンジニアリングによる、プラントの設計・操業のためのAI・ビッグデータの解析ツール「Pla'cello」。小林氏はPla'celloの機能強化開発に関して、以前より三宅氏にコンサルティングを委託していた。その過程で「バッチレイヤーについては、ハッカソンで一気に開発しませんか」と誘われたという。また、部下が関わっていくものについては管理上自分自身もある程度深い理解が必要であると確信していたため、迷わず自分自身も参加することにしたという。

初日はアーキテクチャを整理し、データ変換とAPIの開発をスタートしたが、一方でユーザーインターフェースとなる画面の開発についてはスタートできなかった。「(ハッカソンに参加したメンバーには)データ変換とAPIは開発する人がいたが、フロント(Web画面) をやる人がいなかった。そこで私が急遽、未経験だったVue.jsの本を買って、2日目から開発メンバーとして自ら加入した」と小林氏。これについて三宅氏は、「ハッカソンでは最終日に成果物をマネージャーなど、上層部にに見せることが多い。クラウドなどのテクノロジの専門ではない方々にも世界観や効果を直感的に理解してもらう際、画面など動きを体感してもらうものがあるかないかではインパクトと社内理解レベルが断然異なってくる」と補足した。

3つの部分をマイクロサービス方式とし、1箇所に集まって並行して開発したことで、すばやく開発できた。三宅氏は「普通だと1~3か月ぐらい、クラシックなSI 手法をとった場合1年ぐらいかかるものを3日で開発した」と胸を張る。

ハッカソンは “システム構築” だけでない、エンジニアの成長の場でもある

2つめのお題は「実際、ハッカソンの現場でどんなことを感じましたか?」。会場にいた小林氏の部下に、横井氏が尋ねると「楽しかった。ああいう場所でないと出てこないものが出せた」とのこと。では、何が楽しかったのか。 それは、まず「いまだ聞いたことも見たこともなかった “圧倒的なスピード”、そして日本で最もAzureというクラウドを知り尽くしたエンジニアと、技術コミュニティの『ロックスター』レベルのエンジニアとともに開発することで知った『未知の問題にどう対応していくか』『実装力』『全員で一気に仕上げていくことが出来るという手ごたえ』だ」という。

エンジニアとして3 日間で得られたことは、システムの構築だけでなく、自分自身のスキルが目に見えて上がっていき、そしてスキルを上げながらリアルタイムでこれまでの自分たちでは決してできなかったものを、目の前で、同じくスキルを爆上げしている仲間たちと作り上げていく「体験」。ハッカソンは、システムのモックアップを作る場にあらず。エンジニアを最高の技術力を持つ ”師範” が鍛え上げる人材育成の場でもあったのだ。

3日ハッカソンの効果を最大化する「事前の現場からの課題ヒアリング」

ITは経営戦略における武器だ。先の榊原氏の講演にもあったように、”ビジネスを速く回さなければアジャイル開発やDevOpsをやってもしかたない“ のだ。これは同時に、ビジネス側の要求に IT 側が応えられる必要があることを意味する。

小林氏は事前に社内の利用部門、つまりビジネス側にヒアリングを行い、要望を集めていた。誰が、どんな時に、どのように、どんな頻度で使うのか。様々な意見が集まり、一連を俯瞰してみた結果、ユーザーは「データサイエンティスト」。データサイエンティストは、このシステムからとってきたデータを基に分析を行う。もちろん、分析の精度のためにはデータはたくさんあった方がいい。しかも分析にはリアルタイムに行いたいものもある。つまり、「ざっくり言うと、面倒な手続きがなく簡単に、一度に制限なく、欲しいだけの量のデータを速攻得られて、さらに加工しやすければよい」ということがわかったという。

ユーザーヒアリング

地道だが、こうした事前の下調べに少しでも労力を割くか、割かないかはそのあとのハッカソンの効果カーブに効いてくる。事前に課題を把握しておけば、やみくもな “大規模エンハンス” を行うのではなく、対象のシステムのどこに今切り口を持っていくべきかを決めることができるのだ。また、課題の把握を行おうとすれば、必ずビジネス側も関わることになる。その過程で、ビジネス側との合意形成の基礎をつくることも期待できるのだ。これについて、三宅氏は「事前にここまで課題を整理しているチームはなかなかない」と褒め称えた。

なお、3日間のハッカソンは、三宅氏の方針により、初日と2日目の間に1日空けた。これは、初日に手を動かして初めて課題を集めた結果、データが足りない、開発環境のインストールが必要といったことがよく起こるからだ。この方針について、三宅氏は「戻ってからのスピードが違う」と説明した。JFE エンジニアリング社のハッカソンにおいては、初日の課題を再度見直し、2日目の力の入れどころをコントロールしたという。

「自分たちの方向性を自分自身で自信をもって決めることができるようになった」

3つめのお題は「ハッカソンを受けてみた後どんな変化がありましたか?」。小林氏は「自分たちの方向性を自分たちで決められたことが大きい」と回答。アーキテクチャが決まり、また PaaSにしたことで運用の手間を軽減し、”属人的な特定のスキルや知見を持つ誰か、あるいはチームに負担が偏りがちなシステムのお守り” ではなく、対応できる人の幅が広がったことで、担当を増やした際のOJT負担も減った。それにより、よりフレキシブルな雇用スタイルも可能になったという。また、クラウドベースのシステムによる特定の要件に依存しない汎用的なデザインパターンにより、応用力も増したという。「たとえば、気象情報をAPIで取得してVue.jsで表示できるとか、ほかのアプリケーションで同じような方式でできるなど。やれることの選択肢が一気に広がった」(小林氏)。

組織構造の変革なくして、Biz x Dev の融合はありえない
– 会社の運命を左右しうる “新しい取り組みへのトップの理解の4パターン” とは

すべてのお題が消化された後に、別の講演で小林氏が語った組織構造の解説もあった。「コスト・品質・機能・スピードのうち、どれを重視するか」「スピードを重視するならクラウド」「作ったあとの運用と普及は、軽視するところも多いが、開発当初に想定していたよりも5倍くらい大事だった」「新しい取り組みへのトップの理解の4パターン」「PDCAにおいて、日本の企業では『PdCa』(PlanとCheckが大きい)なことが多いが、それよりも『pDcA』(DoとActionが大きい)のほうが良い」などの話が紹介された。

ラウンドテーブルは笑いあり、真面目な話ありで盛り上がっていた

最後に、こうした4日間をかけて行った価値があったかについての質問について、小林氏は「驚異的なスピードで課題が解決され、システムが生まれ変わっていく実感を得られただけではない。上司は部下の言ったことをすぐに判断できなくてはならないが、現場を見て、自分でも手を動かして、自分のチームで内製できると手ごたえと確信を持てたことに満足している。本当に目に見えた効果だけでなく、部下と自分自身の成長も含め、実施してよかったと思っている。(最後にまたハッカソンをやりたいかという質問に対して)4月以降になりますが、ぜひやりたいです」と締めくくった。

フリーランスのライター&編集者。IT系の書籍編集、雑誌編集、Web媒体記者などを経てフリーに。現在、「クラウドWatch」などのWeb媒体や雑誌などに幅広く執筆している。なお、同姓同名の方も多いのでご注意。

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