クラス図とオブジェクト図
「第2回:ユースケース図を学ぼう!」では要求分析でユースケース図を使用する方法を説明しました。今回は、クラス図およびオブジェクト図を用いて、システムの静的な構造を設計する方法を見ていきましょう。
クラス図はUMLの中でも最もよく使用される図の1つです。オブジェクト指向のプログラミング言語においては、クラス図から実装(ソースコード)に変換することができます。このためシステム開発においては他のUMLダイアグラムを作成しようとも、それは最終的にはクラス図の作成に結びつけられることが多く、このような性質からもクラス図はシステム開発において中心となる図であると言えます。
オブジェクト図は、システムが動作しているある時点でのオブジェクトとオブジェクト間の関係を表現するためのダイアグラムです。後ほど説明するクラス図を作成する際の補助資料として、ユースケースを基にしながら作成されることが多い図となります。
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
クラス図
それでは、クラス図に登場する要素のそれぞれの意味を説明していきましょう。まず図1のクラス図の例を見てください。
クラスとは業務やシステムに登場する概念を表しています。クラスが持つデータ構造は属性と呼ばれ、クラス同士の結びつきは、関連と呼ばれる実線で記述します。関連のうち、その関係が全体とその部分を表す場合は、「集約」と呼ばれる、少し特別な関係になります。
関連や集約などの関係の端(関連端と呼ばれます)には、そのクラスがもう一方のクラスに対する係わり方を表す関連端名(ロール名とも呼ばれます)を記述することができます。関連端名と同様に関連端に書かれるものとして、多重度があります。多重度はクラス間の数量的な関係です。
汎化とは、クラスとクラスの関係が抽象と具象の関係であることを表したものです。オブジェクト指向の3大要素の1つと言われる「継承」と同じ意味を表す(方向性は異なる)と言った方がわかりやすいかもしれません。
汎化先のより抽象的なクラスをスーパークラス、汎化元のより具体的なクラスをサブクラスと呼びます。サブクラスは属性や関連などの特性をスーパークラスから引き継ぎます。また、サブクラスのオブジェクトは「スーパークラスのオブジェクトの代わりになることができなければならない」という原則があります。「クラスA(サブクラス)はクラスB(スーパークラス)の一種である」とか、「クラスA(サブクラス)はクラスB(スーパークラス)に分類される」と言われることもあります。
一般的なシステム開発では、クラス図はユースケース図と同じく要求分析から使用し、ユースケース図やユースケース記述と並行して作成していきます。次ページでは、ユースケース記述からクラス図を作成する方法を見てみましょう。 次のページ