ロゴを制作する、その前に。
さまざまなアイデンティティー
CI=VI+BI+MIだと紹介しましたが、これはあくまで、認識の1つであることも頭に入れておいてください。
例えば、大阪産業デザインセンター(http://www.pref.osaka.jp/oidc/dmnet10/identity.html)では、企業のアイデンティティー戦略として、CI、VIのほかにBI(ブランドアイデンティティー)とPI(プロダクトアイデンティティー)を挙げています。
ブランドとは本来、企業の商標資産であり、プロダクトはその中に入る商品群です。筆者はビヘイビアアイデンティティーに含まれる部分だと思いますが、近年、ブランディングという言葉の登場で、多少認識が変わってきており、「企業ブランディング=CIの確立」という側面も出てきています。
そのほかにも、ディビジョンアイデンティティー(企業の一部門)やサービスアイデンティティーなど、企業の経済活動すべてにアイデンティティーが存在すると言っても過言ではありません。
これは、企業規模の拡大と共に、末端の社員の帰属意識が薄れていることや、技術と情報の発達により、商品の価格と性能だけでは企業の差別化が測られなくなっていることなども一因ではないかと考えています。
つまり、社員のモチベーション向上のため、より身近でわかりやすい目標を持たせるため、商品やサービスの場合は、アイデンティティーの明示により、お客さまに安心や信頼を醸成するためと言えます。いずれにしても、アイデンティティーとは企業や商品を語る上での、最も重要な要素であることは間違いありません。
ロゴの位置づけ
では、ロゴはこれらアイデンティティーのどこに位置するものでしょうか。
当然、ビジュアルアイデンティティーのど真ん中に位置すると考えがちですが、筆者はVIマニュアルを中心に置き、その衛星上にロゴを位置づけます。もちろん、とても重要な要素の1つではありますが、最重要ではありません。これは、企業であっても、商品であっても変わりません。その理由を紹介したいと思います。
まず、以下の世界的に有名な下記企業のロゴを思い浮かべてください。
「Apple」「Microsoft」「Amazon」「SONY」「Panasonic」
思い出せた方、思い出せなかった方いらっしゃると思いますが、ロゴより先に各社のサービスや商品、もしくはWebサイトを思い浮かべたのではないでしょうか。
各社ともシンボルマークは別として、ロゴタイプはとてもシンプルであることが特徴です。しかし、サービスや商品は独特で、Webサイトのデザインにもそれが現れています。
このことからもわかるように、サービスや商品、そしてそれらを表現するためのVIマニュアルなどの基本が存在し、それを表現するVIの一部分として、ロゴが存在しているのです。極端な話ですが、これらの企業にとっては、コーポレートカラーなどのマニュアルさえきちんとしたものがあれば、ロゴは何でも良いのかもしれません。
もちろん、ロゴ自体がメッセージ性が高く、真っ先にロゴが浮かぶものも数多く存在しています。その場合でも、ロゴはあくまでVIの一部分として存在するのであって、企業・商品よりも先に存在するのではないということを理解しておいてください。