サンプルで見る!ロゴマニュアル

2008年12月16日(火)
河田 雅彦

多メディアへの展開について

 前回のプレゼンテーション項目で紹介しましたが、ロゴは単体では存在し得ないものです。

 名刺、封筒などの基本的なアプリケーションはもとより、Webサイト、商品パッケージ、ダンボール箱、企業規模によっては社用車にもロゴが使われることも考えられます。これらの多メディア展開を進める上で、認識していただきたいことは、メディアの変化によって印象が変わるようなロゴデザインはロゴとしてあり得ないということです。

 大きな看板と小さな名刺、そしてWebサイトに導入した時に、ユーザーが同じ企業だと認識しなくてはなりません。また、新聞/雑誌に掲載する必要がある場合には、モノクロや白黒でも同じ印象である必要があります。

 これら付帯事項についても対応可能なデザインにするために、ヒアリング/コンセプト立案の段階で、必ずどんな媒体で使用するのか、また、キャンペーンや季節商品などのサイクルが短いものであるかどうかも確認しておく必要があります。

 サイクルが短い場合は、「時代にリンクしたデザインにするべきである」と、成美堂出版発行の書籍「日本のロゴ」にて、佐藤 可士和氏が解説されていました。

 つまり、企業のロゴに限っては、多メディアへの展開を踏まえ、シンプル、かつ、汎用性(普遍性)の高いデザインが求められているということが言えるでしょう。余談ですが、思想信条は抜きにして、世界の国旗、とりわけ、日本の国旗である日の丸はシンプルであり、汎用性も高く、伝達力の高い素晴らしい意匠デザインであると言えます。ここまで無駄なものを削(そ)ぎ落とし、伝達性の高いデザインは少ないと思います。デザインの見地から、各国の国旗を見てみることも、とても良い勉強になります。

アプリケーション展開 - 名刺/封筒/レターヘッド

 アプリケーション展開をする上で、最も気をつけなければいけないのは何でしょうか。それは、アプリケーションによって、伝えるべきことの優先順位が違うという点だと言えるでしょう。

 例えば、看板や社用車などにおいては、伝えるべきことは企業イメージのみといっても過言ではありません。とはいえ、真ん中に置けば良いなんて単純な話ではありません。空きスペースとロゴとの比率やスペース取りを可能な限り検証し、ベストな大きさ・位置を割り出す必要があります。

 この時に参考にしてほしいのは、日本画の空間の使い方と黄金率/白銀率です。木全賢氏主催の「中小企業の工業デザイン相談室(http://blog.goo.ne.jp/designsoudan/e/67b8a85c728449320928e0d8342ad674)」では、iPodや工業製品と黄金率の関係について紹介されていますので、参照ください。

 名刺と封筒に関する場合は、社員名とロゴが同格である必要があります。しかも、名刺自体が黄金率の産物であり、それを利用したデザインが最も美しく見えるアイテムだと言えます。

 レターヘッドとWebサイトですが、これは、根本的に名刺と封筒とは違います。なぜなら、ロゴ以上に伝えたい情報が掲載されるものだからです。ロゴは必要以上に主張せず、かつ、その企業のものであることを伝えなければなりません。最もVIやロゴマニュアルを意識しなければならない媒体です。

 これら、基本的なアプリケーション展開から理解できるように、使用規定を守り、置けば良いなどという単純な話ではありません。また、ロゴは何かの媒体に使用することを前提に作られるものです。それを意識してすべての作業を進行させる必要があります。

株式会社キノトロープスーパープロジェクト
大学卒業後、建築・プロダクト模型制作を経て、グラフィックデザイナーに転向。SPツール/パッケージデザイン等を経験後、企業のオフィシャルサイトの企画立案、企業ブランディングなど、デザイン&ディレクションを中心に活動。2008年7月よりキノトロープスーパープロジェクト取締役を務める。http://www.k-superproject.co.jp/

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