建物を描くのはむずかしい?

2008年12月19日(金)
兎本 幸子

背景を考える

 前回は人物の描き方を練習しましたが、人物が描けるようになってきたら、やはりその周りの状況も描きたくなってきますよね。つまり背景です。例えば、ここはどこなのか、その状況を示すのに、屋外や屋内のその風景を描くのはとても手っ取り早く分かりやすい方法です。

 背景の中に建物や家具などが入ってくる場合も少なくありません。こういった立体的なものを描く場合、その奥行きを自然に見えるように描くことがポイントになります。奥行きのことをパースと言いますが、パースが正しく描かれていないと、たとえ専門的な知識がない人が見たとしても「何かおかしいな」と感じてしまいます。

 また、逆パースという言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは奥に行くほど小さくなるべき奥行きが逆に見えてしまっている状況のことを言います。正しく描いているつもりでも、ふと気がつくと逆パースになってしまっているのはよくあることです。

 なんだかパースは手ごわそうですね。でもそのルールさえ知ってしまえば意外と簡単に描けますし、むしろパズルのようで面白いですよ。さて、パースについては後ほどじっくりそのルールを紹介することにして、まずは奥行きのことは考えず、建物や家具を楽しく描く練習をしてみましょう。

 奥行きを考えずにそれらを描くことができるのでしょうか。それは視点の位置によります。正面から建物を見ると奥行きの壁は見えませんから、正面の壁だけ描くことになりますね。

 この様に、背景を正面だけで描くことはよくあります。どんな建物か分かることが重要な時、フラワーショップなのか、オフィスビルなのか、歴史のあるクラシック建築物なのか。その時は側面の壁、つまり奥行きの情報はそれほど重要ではありません。正面の「顔」が分かりやすく、魅力的に描かれていることの方が大事なのです。それは建物だけでなく、机やいす等の家具でも同じことが言えます。

 逆に奥行きを見せるべき時はどんな時でしょう。そのもののスケールや存在感、並んでいる状況などを表現したい時です。用途に応じて、どんな角度から見た背景を描けばいいのか選びましょう。

正面から見た建物を描く

 それでは、図1と筆者が実際に描いてみたサンプルの動画(http://tedia.jp/movie/item.php?id=1a1xNkls_G8)を見ていきましょう。

 建物や家具は、実は「丸チョン」で描くのに最も適しています。だいたい四角でできていますから、四角をたくさん描けばいいのです。ただ、描いていく順番にコツがあります。最初は大きな形から、徐々に細かいディテールを加えていきます(図1-1)。

 建物の最も面白いところは細かい窓やドアのディテールだったりしますから、ついついそこから描いてしまいがちです。でもここは我慢です。人を描く時も、ホネのホネで全体から描き始めたように、初めに大きな形をつかむことは大変大事な作業なのです。そうすることで、描きながら自分の中で、どれぐらいの大きさでどんな風に描いていくのかの見当をつけることができます。

 例えば、1階を描いてしまってから2階を描くよりも、全体を描き、1階と2階に分けてから、それぞれのディテールに取り組んだ方が、両方同じ高さのフロアになるし、同じ様に意識を向けることができます。

 また、細かい窓やドア、引き出しなどは、ピッタリ同じサイズで描けなくても大丈夫です。手のクセによるゆがみも面白いものですし、機械的にそろえることに神経を使うよりも、あなたのかっこいいと思う場所に、描きたい大きさで描くことを考えましょう。

 ところで、こういったものを描く時、資料を利用することも大切です。実在の建物をスケッチしてもよいですし、ネットや雑誌で見つけた気に入ったモチーフを参考にしてもいいでしょう。初めのうちは特に、自分の頭の中だけで考えずに、本物を見て描いてみることをおすすめします。アレンジを加えたり、細かすぎるところを省略したりと、どう「丸チョン」に変換するか考える練習になります(図1-2)。

1970年生まれ。多摩美術大学油画科卒業。イラストレーターとして活動する他、ウサギ王(株)のアニメーターとして映像作品も手がける。著書に「えんぴつ一本ではじめる イラスト手習い帖」「えんぴつ一本ではじめる スケッチ手習い帖」(MdNコーポレーション)、「イラストの学校 かわいい動物と。」「イラストの学校 たのしい人々と。」(BNN新社)などがある。犬とハワイをこよなく愛する。http://umotosachiko.com

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