2009-2010年の流行色は何色?
自然な循環をイメージさせる色
2009-2010年に向けて、「流行色」の方向は大きく2つあります。
1つは、エコロジーに対する関心が高まっている点から、「自然な循環」をイメージさせる色です。もう1つは、「感情」を解放する場所を求める気運が高まっていることから、豊かな感情を表す色が重要です。
まず「自然な循環」をイメージさせる色についてですが、エコロジーはもともと「生態系」のことで、地球上の「生命の循環」を示す言葉です。雨が降り、大地を濡(ぬ)らし、植物が育ち、森になり、光合成によって空気を清浄にします。森はまた、降る雨を清らかな水に変え、海にかえります。海は対流の中で、生き物をはぐくみます。海や森ではぐくまれた生き物も、生きてやがて土にかえります。
地球上では太古の昔から、このような循環が行われてきたのですが、「人」が経済発展を理由に、この循環を不自然にしました。その結果、「人」自身が危うくなっています。
図2-1は、2009-2010年に向けた、プロダクツおよびインテリアカラーのジェネラル・カラー・トレンドです。JAFCA(財団法人日本ファッション協会流行色情報センター)では、このようなカラートレンド情報を、当該シーズンの3年から1年半前に、分野別に発表しています。プロダクツ・インテリアのほかには、服飾ファッション、化粧品、自動車、ファッショングッズ、着物などのトレンドカラーがあります。
JAFCAは、プロダクツ・インテリアの色として3つのカラーグループを提案しました。図2-1は、植物のグリーン、きれいな空気や水、空を思わせるブルーで構成したカラーグループです。木々の緑や空、海の写真を用いて、その色の発想源を表現しました。
自然界にある色は、年齢、性別、国、民族文化等、すべての境を越えて、好ましい感覚が持たれる色なのです。自然界にある色の中でも特に2009年は、植物を思わせるグリーン、きれいな空や水を思わせるブルー、大地のブラウン、そして、光を象徴するホワイトやイエローに注目しています。
「自然界の色」という点では、都市生活者にとって最も身近な自然は「食材」です。例えば、レタスのグリーン、ホウレンソウのグリーンなど、新鮮な野菜が持つ色、グリーンも私たちにとって非常に馴染(なじ)みやすい色です。
「循環」という点では「流れ」は大事なキーワードです。水や空気などは、単体で形を止めておくことができないものです。光もそうです。色表現は必ず、素材と形が伴います。2009年の色は、流れるような文様や形、グラデーションなど、どこかに「移り変わり」を感じさせる要素を取り入れた表現が求められています。
素材の色
図2-2は、2009-2010年に重要なブラウン系とプロダクツに使用するためのブラックとホワイトで構成したカラーグループです。土のようなざらざらしたブラウン、木肌そのままの色、人の肌が持っているブラウンに注目しています。タイルを色見本として使っている理由は、タイルで面を構成すると、凸凹ができることによって、同じ色で構成しても複雑なニュアンスが生まれるからです。私たちは、トレンドカラーを直感的に知ってもらうために、このようなメッセージを、それぞれの色に込めています。
ところで、通常、私たちの身のまわりにある色は、色単体で存在することはなく、素材を伴って存在します。このことを言い換えれば、私たちは色を見ていると言うよりは、素材の質感の色を見ているのです。
特に日本人は「素材」の色に敏感です。なぜなら、日本の風土が自然とともにあり、自然素材そのものの美しさを生活に生かしてきたからです。日本の古い家屋、工芸の多くは、日本のそれぞれの地方で取れる木や土を使い、その素材自体の肌(色)を生かしてデザインされています。日本食も同様で、新鮮な素材の色を生かして美しくディスプレーされます。味も素材そのままの香りを生かす料理が多いということも、日本人がいかに「素材」にこだわるかを裏付けています。
近年では、日本の優れた技術によって、非常に魅力的な新素材が開発されています。世界のデザイナーやアーティストは、日本食や日本の伝統デザイン同様に、新しく開発される日本の素材にも並々ならぬ興味を持っています。