ファイルサーバーを横ぐしカイゼン
低い使用率を平準化し、無駄なコストをなくす「ストレージ仮想化」
「ストレージ仮想化」の定義は複数あるが、主に複数ある物理ストレージを仮想的に1台のように見せる技術のことを指す。この技術は、サーバー間でのデータ移行が容易になるため、ファイルサーバーの容量の平準化や、さらにはファイルサーバーの台数を集約することも可能だ。
Windows Server 2008ではDFS(Distributed File System:分散ファイルシステム)によって、複数のファイルサーバーにある共有フォルダをひとまとめにして、ユーザーからはひとつのフォルダとして仮想的に表示することが可能である。これをDFS名前空間(Name Space)という。
さらに大規模かつ高度な名前空間によるファイルサーバーの仮想化を行う場合は、グローバルネームスペースを用いたツールや専用機が有効である。グローバルネームスペースは、複数のファイルサーバーを論理的にまとめて表示する名前空間のことである。
クライアント側からすると、ファイルサーバーそれぞれのパスを気にしなくてもすむ。Brocade StorageXでは、Windowsファイルサーバーはもちろんのこと、ほかのOSのファイルサーバーも含めた分散したファイルサーバーを仮想的に統合することが可能だ。
また、EMCのRainfinity GFVは、クライアントとファイルサーバーの間に常駐するタイプの、グローバルネームスペースを実現するソフトウェアとサーバーを組み合わせたアプライアンス製品である。NASを含む異機種のファイルサーバーを統合管理し、すべてのファイルサーバーの使用効率を向上できるだけでなく、データの移行/統合も、エンドユーザーやアプリケーションに影響を与えることなく動的に実行できる。
ストレージ仮想化の利点
ストレージ仮想化は、物理的なストレージやディスクと、ソフトウェアが利用するボリュームを完全に分離する。これにより、サーバーから物理ストレージは完全に見えなくなり、物理的なストレージやディスクを無駄なく使うことができ、利用効率は大幅に向上する。ストレージの管理も横断的に行うことができる。
また、「シン・プロビジョニング」という仕組みを使うと、ストレージシステムが物理的に割り当てられているよりも多くの容量をストレージアレイに割り当ててアプリケーションに提供することができる。これにより、過剰な物理ストレージを用意しなくてもすむため、ストレージ容量の使用率が向上するほか、ストレージの管理が合理化される。この結果、追加ストレージのプロビジョニングに必要な時間と労力が節約され、使わないストレージに掛かるコストの削減にもつながる。
なお、複数のファイルサーバーが乱立することでの無駄なコストを省くための抜本的な対策としては、ファイルサーバーを物理的に統合し、大規模ファイルサーバーとして運用することが望ましい。また、シン・プロビジョニングについても大規模ファイルサーバーでの運用に適しているため、これらアプローチは次回詳しく説明することとする。