ばらばらのファイルサーバーを統合!
ファイルサーバーの統合
一言でファイルサーバーの統合といっても、いくつかのアプローチがある。大きく分けて、「仮想化による統合」と「物理的統合」となる。なお、仮想化による統合は、第2回でも取り上げたので、そちらを参考にしてほしい。
ここでいう「物理的統合」とは、第1回で取り上げたファイルサーバーの種類のうち、「Windows Storage Serverを搭載したNAS」や「専用OSを搭載したNAS」があてはまる。どちらを選択するかは、必要なデータの容量、ユーザー規模、統合すべきファイルサーバーの台数などを目安に考えると良い。おおよその目安としては、1台のNASのデータ領域が将来的に3TB以上になると予想できる場合には、拡張性や機能が高い専用OSを搭載したNAS(専用NAS)を検討してみたい。
NASの導入によって、Windows、Linux、UNIXのファイルサーバーが高パフォーマンスのソリューションに統合される。このソリューションは導入しやすく、管理が容易である。ファイルサーバーの統合には次のようなメリットがある。
1つ目にコストの削減がある。具体的には、テープライブラリの追加が不要になることからハードウエアのコストの削減、またサーバー統合により個別ライセンスが不要になるため、ソフトウエアにかかるコストの削減が期待できる。さらにテープの数の減少に伴い、テープ管理やテープ障害など問題が減少すると考えられ、テープやオフサイトストレージに必要なコストも削減できる。
2つ目にITリソースの効率化がある。ネットワークストレージによりストレージ使用率が向上することが期待できる上、ITリソースを効率的に活用することで、バックアップ管理に要する時間の節約にもつながる。
3つ目にパフォーマンスの向上がある。NAS機能に特化しチューニングされたオペレーティングシステムによりパフォーマンス向上が実現できる。また、クオータ管理が一元化できることで、低い使用率のファイルサーバーを検出しやすくなり、ストレージ使用率の平準化につながる。
4つ目に、セキュリティー、コンプライアンスへの対応がある。統合により統一した運用方法でデータを保護でき、規制や社内ガバナンス、ポリシーの順守も対応しやすくなる。また、高可用性のオプションを活用することで、計画的および予期しないダウンタイムの短縮も期待できる。
効率の良いバックアップとシンプロビジョニング
専用NASの特徴として、効率の良いバックアップとシンプロビジョニングによるリソースの効率化について説明しておく。
高機能NASには、データのクローンコピーに対応しているものが多く、その場合は、バックグラウンドでクローンコピーから効率的にバックアップを取ることが可能となる。また、消失した情報のリカバリーは、スナップショットコピーに対応していれば容易かつ迅速に行うことができる。
さらに、高機能NASを使用することで、数日分のデータのコピーをオンラインに維持することが可能になり、潜在的なデータ破損が発生した場合でも、より迅速にデータをリカバリーできる。すなわち、最初のコピーをマウントし、破損をチェックして、破損がある場合にはその前のコピーをマウントする作業が、すべて数分のうちに完了する。バックアップとリストアを一元化することで、バックアップに必要なハードウエア、ソフトウエア、メディアの量が減少し、コスト削減が期待できる。
シンプロビジョニング(図2)とは、必要な容量に応じてファイルシステムサイズを論理的に決定し、物理的にはそれよりも少ない容量でプロビジョニングを行う機能である。これにより、実際にストレージが使用されるまで、アイドル状態のままファイルシステムやLUNに割り当てておく必要がなくなる。将来のストレージ容量の計画が効率化されると共に、過度なストレージをあらかじめ用意することがなくなるため、ストレージ使用率が向上する。
シンプロビジョニングを保護機能として使用すると、ユーザー自身がシンプロビジョニング対象ファイルシステムとLUNを管理できるようになる。物理的な実際の使用量、論理的な合計サイズ、および利用可能なプール容量に関する報告を受け取ることで、管理者は物理的な容量を見積もることができると同時に、アラートを設定して容量不足を回避できる。専用NASにはシンプロビジョニングに対応したものが増えてきているので、そのあたりも比較検討の項目に加えておきたい。
最後に複数に分散したファイルサーバーを統合する際に考慮しなければならない点を確認しておく。