これならわかる!OpenIDの仕組み

2009年2月3日(火)
村上 知紀

なぜOpenIDを発行するのか

 「OpenIDを使えば別のサービスのログインが簡単になる」というだけでは、OpenIDを発行する側のメリットはよくわからないでしょう。OpenIDを発行する背景として見落としてはいけないのが、Webにおけるオープン化の流れです。

 GoogleのオープンソーシャルやFacebookのフレンドコネクトという言葉を聞いたことがあると思いますが、ビッグネームは現在、こぞってオープン化を進めています。

 FacebookやmixiのようなSNSは、ユーザーにコンテンツを入力してもらうことや、それを通じてユーザー同士の人間関係を根づかせることによって、ユーザーを囲い込むことを競争の主眼に置いています。それによって、トラフィックやコンテンツを得るだけでなく、ユーザーの個人情報なども取得することができるのです。

 本来なら、なるべくユーザーを囲い込んでおきたいというのが心情だと思います。しかし、こうしたサービス側の事情とは関係なしに、雨後のたけのこのように多くのサービスが出現して、ユーザーがいろいろなサービスを利用し始めると、ユーザーの個人情報や入力したコンテンツ、人間関係が分散して存在するようになりました。ユーザーとしては、自分の情報は自分のものなので、いろいろなところに持って歩きたいでしょうし、その利便性も容易に想像できます。

 そうした環境の下で、ユーザー中心という考えをつきつめていくと、一見ユーザーを外に逃がすように見えるサービスでも、ユーザーにとって使いやすいものであれば、サービス全体の価値を高め、ブランドとしてより強固な地盤を作ることができます。こうしてサービス提供各社は、サービスをオープン化するという判断をしているのです。

 OpenIDも個別のサービス側の発想ではなく、ユーザー中心で発想されたオープンなものです。オープン化の大きな流れの1つにOpenIDは位置づけられると考えると、その意味合いが見えてくるでしょう。

OpenID 1.1から、OpenID 2.0に

 また、OpenIDが注目される背景として、OpenIDの仕様がOpenID 1.1からOpenID 2.0への移行したという要因もあります。Yahoo! JAPANは、セキュリティーの観点から、OpenID 2.0になってから対応しています。簡単に言うと、仕様自体がアップグレードし、ユーザーにとっての利便性、安全性の面が向上したことによって、発行サイトや利用サービスが対応しやすくなったと理解するとよいでしょう。

 具体的には、OpenID 1.1までは、Claimed Identifier、つまりURL形式のユーザーのIDを利用サービスに入力することによって認証を行っていました。OpenID 2.0になってからは、yahoo.co.jpといったOpenIDを発行するサイトのアドレス(OP Identifier)を入れるだけでよくなりました。これはとても大きな変更点だと思います。

 つまりユーザーが、長いURL形式のIDを覚えておくことが必要なくなったとともに、自分のIDを入力する必要がないということで、サービス利用サイトに自分のIDを教える必要もなくなったわけです。

 さらには、Yahoo! JAPANであればyahoo.co.jp、mixiであれば、mixi.jpといったリンク先さえわかればよいため、サイト側はボタンを設置すればよくなったのです。ユーザーにとっても、テキストのフォームにわざわざyahoo.co.jpと入力する代わりに、yahooのボタンをクリックするだけで、yahooで認証することができるようになったのです。

 たとえ、ユーザーがOpenIDの仕組みはわからなくとも、直観的に何ができるかわかるのではないでしょうか。単純に聞こえますが、一般化という意味では、非常に大きなステップだと思います。

cNuts創業者/Webコンサルタント。クリエイティブパーソンのための検索/共有エンジンであるcNuts(http://cnuts.jp/)を日々開発するとともに、企業のパートナーとしてWebのサービス戦略、企画、設計、組織改善などに関するコンサルティングに従事。Webのサービスプランニングの進め方や考え方を解説した「Webサイトプランニングブック」(http://www.amazon.co.jp/gp/product/4774133892)を出版。雑誌への執筆多数。Web Innovator:(http://chikitomo.blogspot.com/

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