レビューの質をモデル化する!
なりたい姿を段階的に表現する成長モデル
「なりたい姿」とはどういう姿でしょうか。先に述べたように、ソフトウエア開発においては、その時々の状況に合った方法を採ることが求められます。そのため、状況に合わせ考えられたレビューが、効果的で質の高いよいレビューとなると考えます。そこで、なりたい姿を「状況に合わせ、よく考えられている状態」と想定しました。
しかし、なりたい姿をモデルで描くといっても、「こうあるべき」という理想型を並べるだけでは、現実との差が大き過ぎて改善の第一歩が踏み出せないものです。そこで、なりたい姿に到達するまでのステップを持つ枠組みを考えました。これを「成長モデル」と呼びます。成長モデルのステップとして、「考えている度合い」で0~5の6段階の刻みを設けています。どんな材料/根拠をもとに考えられているか、という観点をもとに「考えている度合い」の刻みを決めています。
影響を与える要素を「やり方」「評価」の切り口でモデル化
ステップは、レビューの質を表現する高さのようなものです(縦軸)。一方、モデルの横軸には、レビューの質に影響を与える要素を抽出し定義しています。考えられたよい「やり方」があり、やった結果をどのように「評価」しているかを重要と考え、この2つの切り口で抽出しています。
「評価」というと、「レビューの指摘件数を評価する」といった項目が最初に思い浮かびます。このモデルでは、そういった要素も含んでいますが、「レビューの振り返り」というイメージのものになっています。
モデルは、具体的には以下のようになっています。以下は「やり方」の要素である「人・スキル」の場合について紹介します。
5:懸念点を考慮して参加者を調整している
4:選定基準に基づいて参加者を選定している
3:過去の実績を参考にして参加者を選定している
2:経験/スキルが十分なレビューアやPM/リーダが選定している
1:経験が浅い、もしくはスキルが不足している担当者(レビューイ)が選定している
0:考えていない
続いて、「評価」の要素である「レビューの完了」の場合について紹介します。
5:評価結果を基準などに反映している
4:レビューを評価した結果や懸念点などから完了/再レビューの判断をしている
3:あらかじめ決められた条件に基づいて完了/再レビューの判断をしている
2:レビューの場でレビューアが完了/再レビューの判断をしている
1:時間切れの場合、再レビューとしている(時間内に終われば完了)
0:完了を意識していない
このモデルのポイントは「評価」という観点を持っているところです。CAPDo(Check-Action-Plan-Do)という考え方があるように、改善にはCheckが重要な意味を持っています。そして、第三者や他人がCheckするのではなく、レビューの「やり方」を自分たちで「評価」することに意味があります。自分たちで活動の改善ポイントを見つけ、改善する方法を決める、そして実行するのです。第三者や他人から指摘され、指示される改善は、「やらされ感」がどうしても生まれてしまいます。自ら気づくことで、主体的な改善になりやすいのです。
モデルは、「やり方」でよいレビューのやり方の方向性を示し、「評価」でレビューを自分たちで振り返る方法の指針を示しています。そして、現場の中でCAPDoのサイクルを回しやすくすることを狙っています。
また、「評価」の5だけは、考えの材料/根拠ではなく、評価結果が活用されているかどうかになっています。それも、評価して終わりではなく、そこから改善につなげるための仕掛けの1つです。