自社サイトを見つめ直す

2009年3月6日(金)
門別 諭

ソフトウエアだけを導入するという現実

 CMSと聞くと、いわゆるソフトウエアを思い浮かべる人が非常に多いという実感があります。先ほどあえてCMSツールと記載した理由はここにあります。この現実がCMS導入を失敗させている原因になっているのかもしれません。

 企業のWeb担当者が運用などに困った際に、改善しようといろいろと解決策を調べると思います。そのような時、最終的にさまざまなソフトウエアにたどりつくきます。

 ソフトウエアの担当者を呼び、機能の概要を聞き、一番良いと感じたものを導入します。導入すれば問題が解決されるだろうという、理想にも似た淡い期待を持って。しかし、実際に導入してみると決してそのようにはならないことが多いのでしょう。

 ソフトウエアの良いところだけを見て導入したために、そのソフトウエアの一部の機能だけしか使っていない、あるいはWebサイトのごく一部にしかソフトウエアを利用していないといった、当初想定した理想とはかけ離れたものになっているためです。

 では、なぜソフトウエアの内容を検討して導入したのに効果がないのでしょうか?

 それは、このソフトが使いやすそうだとか、こういうことできると便利だよね、という機能面だけを見て導入を行っていることが一番の原因です。

 CMSにおいては、「導入した後で何に利用するのか」が一番のポイントです。

 CMSは、Webサイトに最新の情報をミスなく提供するために利用するものですし、もちろん管理・運用を効率的にするために利用するものです。そのため、単純にソフトウエアを導入するという観点だけでCMSを選んでも効果を得られないのです。

ソフトウエアだけではなぜだめなのか?

 では、ソフトウエアの導入だけではなぜだめなのでしょうか?

 答えは簡単です。失敗するケースのほとんどは「CMSソフトウエアが何であるか」という部分の理解がなされていないことに原因があります。

 例をあげてCMSの導入とソフトウエアの役割について説明をします。これが分かれば、なぜソフトウエアの導入だけでは効果がないのか、何をしなくてはいけないかという部分が見えてくるはずです。

 皆さん、オフィスを新しく構える時のことを想像してみてください。皆さんはオフィスの移転や新設をする場合、どのような手順で行うでしょうか?

 まず、そのオフィスに入る人員や機材などを想定して広さ、機能などを選定すると思います。その上で物件を選びます。物件を選ぶ際にはさまざま条件が必要です。広さ、機能だけではなく、場所や形や階数などといった細かい部分まで決めるでしょう。

 また業務は、利用する設備やポリシーとして行っている内容など会社によって異なるため、それに合わせて考える必要があります。このため、企業が利用できるオフィスとしての条件も検討しておく必要があります。これらを経て、オフィスビルの選定が完了します。

 オフィスビルは選定して終わりではありません。オフィスビルというのはスケルトン(何もない)状態なので、その空間にパーティションなどの仕切りを作ったり、壁を増設したり、会議室を作成したりする必要があります。その後、機材を運び込み、実運用に可能な準備を行い、やっとオフィスとして完成にいたります。

 CMSソフトウエアは、この例におけるオフィスビルのスケルトン状態と同じものです。

 CMSソフトウエアとは、オフィスという機能を作ることができる箱であり、コンテンツを管理することができる箱にすぎないのです。もちろんスケルトン状態で利用できる場合もありますが、ほとんどの場合は何らかの手を加える必要があります。

 何の計画もなく、オフィスビルだけ借りてうまく業務を行うことができるはずがありません。CMSにおいてもソフトウエアの導入だけでうまくいくものではないのです。

 どのように配置し、どのように活用するのかについて、前もってイメージしなければいけませんし、ソフトウエアの導入だけではなく、内容を充実させるためにはさまざまな部品の導入にも時間とコストをかける必要があるということを、ここでは理解してほしいと思います。

株式会社キノトロープ
株式会社キノトロープ 代表取締役社長
株式会社キノトロープスリーイント 代表取締役社長
IT技術を有効な成果につながるソリューションに変換してシステムを構築することで顧客に最適なソリューションを提供するITコンサルティングサービスを行う。FatWire社のContent Serverなど、各種CMSを活用したシステム構築を数多く手がけており、CMSに関するセミナーでの講演なども多数行っている。著書:CMS構築 成功の法則

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