すぐに使える!レビュー効果向上の秘訣

2009年3月24日(火)
安達 賢二

レビュー技法と運営方法による欠陥検出効果

 筆者が以前実施した研修で、レビューとはどのようなものか、大事なポイントは何かを受講者に把握してもらうための演習を行いました。

 その演習結果からレビュー手法と運営方法の違いが、主な効果(欠陥検出数)に影響を与えることが確認できましたので紹介します。演習内容と結果は以下のとおりでした。

演習の考察結果

結果1:欠陥検出数が最も多かったのは、チェックリストとシナリオを併用したGr(グループ)2であった。

 Gr2には、モデルとなる標準的なレビュー運営を体験してもらいました。演習開始直後の数分間で、役割の割り当て、対象物の位置づけ、チェック方法など事前オリエンテーションを実施し、さらに複数の手法を併用して観点を増やした結果、予想通り欠陥検出数が最も高いグループとなりました。

結果2:アドホックレビューのGrが、チェックリストによるレビューGrよりも欠陥検出数が多かった。

 チェックリストによるレビューGrには、必要な準備をせずにチェックリストを形式導入した場合を体験してもらいました。使用したチェックリストは業界標準的なものでしたが、用語に慣れていないため何を、どこまで確認すればよいのかわからない状況でした。

 また「チェックリストに基づき確認しよう」とするあまり、自由な発想や自分なりの確認視点が抑制され、時間の多くをチェックリスト内容読解と確認方法検討に費やし、少ない残り時間のプレッシャーから結局は表面的な確認で、未消化項目が残ったなど不十分な対応になっていました。

 一方でアドホックレビューのGrは、メンバー間でいろいろと相談しつつ運営していました。その結果コミュニケーション量が多くなり、欠陥検出に集中できたと言えます。ただし、単項目の欠陥には気がつきやすいものの、複合的な欠陥(整合性や利用シナリオ上の問題など)はあまり検出できない、つまり検出した欠陥にムラが多い結果となりました。

結果3:コミュニケーション量が多く、その質が高いGrほど、欠陥検出数が多かった。

 それぞれのGrのレビュー運営状況を観察した結果、Gr2を除いてはレビュー中のコミュニケーション量とその形態(質)が欠陥検出数に影響していたと推察されます。図2-2にはそれぞれのGrのコミュニケーション状況(量・質)を特徴的な言葉で表現してありますので参考にしてください。

 「静か」Grは会話がほとんどなく、「普通」Grは会話があるものの、活発ではありませんでした。また「キーマン主導」Grは、レビュー進行役となったメンバーがトリガとなり各メンバーがコメントする形式、言い方を変えると、ピラミッドのようにキーマンを頂点としてその配下に各メンバーが放射状にぶら下がるコミュニケーションでした。

 一方「ワイガヤ」Grは、その時々で進行役や場をリードする者が変化し、各メンバーがネットワーク状に双方向のコミュニケーションを行いながら、お互いの観点を引き出しつつ相互連携してイキイキとレビューが進行していました。

 ほかのGrと比較してコミュニケーション量・質ともに最大となっていたことは言うまでもありません。

 注目すべきは、例外となったGr2です。各自の役割、確認方法が理解できているため、チェック中の会話はほとんどありませんでした。残り5分になってお互いの確認結果を共有する会話の分だけ全体のコミュニケーション量は「普通」でしたが、欠陥検出数が最大になりました。

株式会社HBA
現在、社内品質マネジメントシステム統括管理、各種プロセス評価・改善推進、管理者・技術者育成支援などを担当。NPO法人 ソフトウェアテスト技術振興協会 理事。
ソフトウェアテストシンポジウム札幌 実行委員長。 個人的趣味の範疇でSoftware Quality.com: http://sw-quality.com/default.aspxを運営している。

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