Androidと組み込み開発
Androidの構成要素
Androidの構造を知るために、ソフトウエアのレイヤーを順に見ていきます。Androidは次のようなレイヤーにわかれています。
(1) Linuxカーネル
(2) ライブラリ
(3) Dalvik仮想マシン
(4) アプリケーションフレームワーク
(5) アプリケーション
(1)Linuxカーネル
カーネルは2.6.25が使われています。Androidのソースコードリポジトリにはcupcakeという名前の開発ブランチがあり、そちらでは2.6.27が使われています。
Androidのカーネルには、いくつかのデバイスドライバーの追加と、電源管理やメモリ管理に変更が加えられています。特徴的なデバイスドライバーはbinderというプロセス間通信(IPC)ドライバーです。このドライバーはAndroidのシステムで広範囲に使われていて、Javaアプリケーション間のメッセージングから、画面の描画にいたるまで、binderによるIPCで実装されています。
(2)ライブラリ
WebブラウザーのレンダリングエンジンであるWebKitや、MP3やH.264といった音声や動画のコーデックであるOpenCoreが採用されています。また、bionicという名前の独自libcが含まれます。bionicは組み込み用にコンパクトなlibcとして開発され、BSDライセンスで公開されています。
もう1つ面白いライブラリがあります。SQLite(http://www.sqlite.org/)です。SQLiteは軽量のSQLデータベースエンジンです。1つのファイルに複数のテーブルを持つことができ、ほとんどのSQLコマンドをサポートしています。
Androidでは、例えば着信音のボリュームなどのシステムプロパティをSQLiteのデータベースファイルに保存しています。また、Java APIも用意されているので、アプリケーションのデータ保存や検索にも利用できます。
(3) Dalvik仮想マシン
Androidを特徴づけるのは、このDalvik仮想マシンでしょう。組み込み用にパフォーマンスの向上と使用メモリを削減するため、スタック型ではなく、レジスタ型の仮想マシンとして実装されています。バイトコードも独自のものです。
しかし、J2SE環境を提供していて、ソースコードは通常のJavaと同じように記述できます。また、J2SE 5でサポートされているAPIも一部を除いてそのまま利用できます。Androidに含まれていないライブラリには、Android用に最適化されているもの(例えばユーザーインターフェースを構築するためのjava.awt)や、そもそもAndroidでは意味を持たないもの(例えば、印刷のためのjavax.print)などです。
DalvikはJavaネーティブインターフェース(JNI)もサポートしています。独自ライブラリやハードウエアの拡張なども可能です。
(4) アプリケーションフレームワーク
ユーザーインターフェースを作るためのUI Toolkitや、各種のマネジャーがJavaで実装されています。例えば、アプリケーションでWebページを表示したいときに、簡単に埋め込めるWebViewなどのAPIがあります。
(5) アプリケーション
電話の発着信、電話帳といった携帯電話に必要なアプリケーションが含まれます。もちろんWebKitベースのフルブラウザーも含まれます。
面白いのはホーム画面を表示するのも、1つのアプリケーションにすぎないことです。見た目のまったく異なるホームアプリケーションを作成すれば、完全にカスタマイズすることができます。
ソースコードライセンス
Androidはソースコードライセンスが1つ1つのプロジェクトごとに明確に記述されています。LinuxカーネルはもちろんGPLです。それ以外はほぼApache 2.0ライセンスで、ごく一部がBSDライセンスで提供されています。