Androidと組み込み開発

2009年4月1日(水)
水野 光男

Androidの構成要素

 Androidの構造を知るために、ソフトウエアのレイヤーを順に見ていきます。Androidは次のようなレイヤーにわかれています。
(1) Linuxカーネル
(2) ライブラリ
(3) Dalvik仮想マシン
(4) アプリケーションフレームワーク
(5) アプリケーション

(1)Linuxカーネル
 カーネルは2.6.25が使われています。Androidのソースコードリポジトリにはcupcakeという名前の開発ブランチがあり、そちらでは2.6.27が使われています。

 Androidのカーネルには、いくつかのデバイスドライバーの追加と、電源管理やメモリ管理に変更が加えられています。特徴的なデバイスドライバーはbinderというプロセス間通信(IPC)ドライバーです。このドライバーはAndroidのシステムで広範囲に使われていて、Javaアプリケーション間のメッセージングから、画面の描画にいたるまで、binderによるIPCで実装されています。

(2)ライブラリ
 WebブラウザーのレンダリングエンジンであるWebKitや、MP3やH.264といった音声や動画のコーデックであるOpenCoreが採用されています。また、bionicという名前の独自libcが含まれます。bionicは組み込み用にコンパクトなlibcとして開発され、BSDライセンスで公開されています。

 もう1つ面白いライブラリがあります。SQLite(http://www.sqlite.org/)です。SQLiteは軽量のSQLデータベースエンジンです。1つのファイルに複数のテーブルを持つことができ、ほとんどのSQLコマンドをサポートしています。

 Androidでは、例えば着信音のボリュームなどのシステムプロパティをSQLiteのデータベースファイルに保存しています。また、Java APIも用意されているので、アプリケーションのデータ保存や検索にも利用できます。

(3) Dalvik仮想マシン
 Androidを特徴づけるのは、このDalvik仮想マシンでしょう。組み込み用にパフォーマンスの向上と使用メモリを削減するため、スタック型ではなく、レジスタ型の仮想マシンとして実装されています。バイトコードも独自のものです。

 しかし、J2SE環境を提供していて、ソースコードは通常のJavaと同じように記述できます。また、J2SE 5でサポートされているAPIも一部を除いてそのまま利用できます。Androidに含まれていないライブラリには、Android用に最適化されているもの(例えばユーザーインターフェースを構築するためのjava.awt)や、そもそもAndroidでは意味を持たないもの(例えば、印刷のためのjavax.print)などです。

 DalvikはJavaネーティブインターフェース(JNI)もサポートしています。独自ライブラリやハードウエアの拡張なども可能です。

(4) アプリケーションフレームワーク
 ユーザーインターフェースを作るためのUI Toolkitや、各種のマネジャーがJavaで実装されています。例えば、アプリケーションでWebページを表示したいときに、簡単に埋め込めるWebViewなどのAPIがあります。

(5) アプリケーション
 電話の発着信、電話帳といった携帯電話に必要なアプリケーションが含まれます。もちろんWebKitベースのフルブラウザーも含まれます。

 面白いのはホーム画面を表示するのも、1つのアプリケーションにすぎないことです。見た目のまったく異なるホームアプリケーションを作成すれば、完全にカスタマイズすることができます。

ソースコードライセンス

 Androidはソースコードライセンスが1つ1つのプロジェクトごとに明確に記述されています。LinuxカーネルはもちろんGPLです。それ以外はほぼApache 2.0ライセンスで、ごく一部がBSDライセンスで提供されています。

日本Androidの会
日本Androidの会組み込みWG。最初のAndroid SDKがGoogleから発表されたとき、早速ダウンロードして「Hello, World」を書いて、ひょとしてZaurusで動いたら面白いんじゃないかな?と思ってしまったのがきっかけでした。日本Androidの会では定期的に勉強会を開いています。ご興味があれば、ぜひ。
http://android-group.jp

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