ツールを活用したアジャイルの事例
オープンソース開発を実現するITツール
アジャイル開発では、開発者同士のコミュニケーションを重視しており、ITツールをもっとも重要なものとは位置づけていません。しかしその一方で、SKIPの開発はオープンソースとしての開発であるため、その様子はなるべくコミュニティーに対して公開していきたいという思いがあり、それはアナログな情報共有だけでは無理があります。そこで、アジャイルの本質を押さえつつも、ITツールを有効に使うことで、インターネット越しに情報を開示していくことにしました。
SKIPのオープンソース開発の中で活用しているITツールを、下記にまとめました。
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【SKIPで活用中のITツール】
・GitHub(git):分散型バージョン管理ツールである「git」を簡単に利用できるサービス。
・http://github.com/
・http://github.com/openskip/skip/tree (SKIPのURL)
・SKIPaaS(SKIP):オープンソース社内SNSである「SKIP」をSaaSで利用できるサービス。
・http://www.skipaas.jp/
・http://user.openskip.org/ (SKIPユーザコミュニティ)
・Google SpreadSheets:Googleの提供するブラウザで利用できる表計算アプリケーションのサービス。
・http://docs.google.com/
・http://spreadsheets.google.com/pub?key=pkOK5a4512t-dADN2cLsbEg (SKIPのTODO)
・Redmine:オープンソースの課題管理システムであり、自前で構築したサーバで運用。
・http://www.redmine.org/
・http://dev.openskip.org/redmine/ (SKIPのURL)
・Radiant:オープンソースのCMSアプリケーションであり、自前で構築したサーバで運用。
・http://radiantcms.org/
・http://www.openskip.org/ (SKIP公式サイト)
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このうち、SKIPとRedmineは前回の連載で説明しましたので、それ以外について簡単に紹介します。
GitHubは、分散型のバージョン管理ツール「Git」をWebから簡単に利用できるサービスです。Linuxを支えるだけあって、巨大なプロジェクトであっても高速に処理できることや、分散型ということで、ローカル環境で開発を行った内容はバージョン管理もローカル環境だけでできるなどの特徴があります。
SKIPでは、オープンソースにした当初は自前で用意したSubversinのリポジトリでソースコードの管理を行っていたのですが、オフラインでも開発ができることや、ブランチやマージといった、必ずしも統制のとれないオープンソースの開発をするには向いた機能が豊富に付いていたことから、GitHubへの移行を行いました。Subversionからの移行もできるようになっており、特に混乱もなく移行できました。GitHub上で管理することで誰でもアクセスできるようになりますし、誰でも派生したSKIPを開発できますので、オープンソース開発には非常に向いていました。
Google SpreadSheetsは、Googleの提供するGoogle Appsという情報共有ツールの一部です。いわゆるエクセルのような表計算ツールをWebブラウザー上で扱えるようなサービスです。複数のユーザーがネットワーク上で同じ表を同時に操作することができ、いろいろと応用が利くサービスになっています。
SKIPの開発チームでは、純粋な表として使うのではなく、プログラマー同士のTODOリストの共有に使っています。TODOリストというのは、Redmineで登録するタスク(チケット)よりも、より粒度の細かい、5分~2、3時間程度のするべき作業(=TODO)を管理するリストのことで、プログラマーはよく、そういったリストを手元のテキストファイルで管理していたりします。SKIP開発チームでは、そのレベルの細かいTODOでさえもGoogle SpreadSheetsを使い、プログラマー同士で共有することにしていました。そして、それもGoogle SpreadSheetsの機能を使い、オープンソースコミュニティーに公開することにしています。
Radiantは、Ruby on Railsで作られたオープンソースのCMS(コンテンツ管理システム)です。Rubyの公式サイトでも使われており、SKIPでもユーザーの方への情報提供とダウンロードできるようにするための公式サイトとして利用しています。
アジャイル開発の流れにおけるツールの使い方
アジャイル開発では、繰り返し型の開発フローを採用しています。SKIPの開発では、オープンソースのリリースは約3ヶ月に1度の周期で行い、内部での開発は、基本的に1週間単位でイテレーション(開発を繰り返す単位)を繰り返しています。オープンソースなので、エンドユーザーからの要望や不具合報告を受けて、そのフィードバックをもとに、毎週の実施するべきタスクを決めて開発を行うという流れになっています。詳しい流れは図2のようになっています。